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400字で分かる落語「うどん屋」

「う」の54:うどん屋(うどんや)
【粗筋】 うどん屋が売り歩くが、最初の客は酔っていて、火を起こせと要求されて言う通りにするが、同じ話をぐるぐる繰り返した末、体が温まると帰ろうとする。うどんを勧めると「俺はうどんは嫌いだ」……これがケチの付き始めか、女房が「子供が寝たから静かにしておくれ」と言われたり、うまくいかない。大店の物が主人に内緒で食べ、売り切れたという話をもあるが、と嘆いていると、大きな店から小声で呼んでいる。気を利かせてこちらも小声で返事をし、この男が味見をして旨ければみんなで食べるのだろうと、腕を振るう。食べ終えた男が代金を払うと、「うどん屋さん」「へえ」「お前さんも風邪をひいたのかい」
【成立】 1773(安永2)年『近目貫』の「小声」は、娘が内緒で松茸を飼うのだろうと小声になる。松茸は男のモノを連想しただけ。体を温める饂飩の方が上に感じる。上方の「風うどん」を柳家小さん(3)が東京に移植し、五代目が得意としていた。枕で売り声を並べ、そのまま噺に入って行く演出が見事。
【蘊蓄】 江戸では蕎麦が人気だったが、明治維新で薩長により江戸っ子皆殺し令が出ると、饂飩に取って変わられる。明治14年の『読売新聞』には饂飩屋が863人、蕎麦屋は11人に減ったとある。12月26日付の記事を『明治大正風俗辞典』が引用しているのを『千字寄席』が引用しているのを引用した。

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