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【液体小説 のほほんとコパカバーナ】

PART5 サヨナラの手紙 2

Dear 耀ニ
もしこの手紙が着く頃、いつも通り私が耀二の隣で笑っていたらすぐに破って捨ててね。でも多分そんなことはないと思うから、あなたは最後の最後までこんな私の独り言につき合うはめになるのね・・
ところで元気だった?
しばらく逢ってなかったし、若くて可愛い恋人のことで耀二も忙しそうだから私の事なんかとっくに忘れちゃってたでしょ。
私はほとんど一人だった。
耀二に嘘ついて新しい恋を探そうとしたけど結局何にも見つからなかったし、仕事は結構順調にいってたけど、だから何?って言う感じかしら。
毎日ダラダラ起きてお風呂に入り、シャンプーして乾かし、お化粧してたらすぐ夜で、口紅が終わればまた買いに行く、そんな繰り返しばっかり。もういい加減うんざりしちゃったわ。
今だから言うわけじゃないけど耀二といた頃はとても楽しかった。ホントよ。
いつも私のこと「綺麗だね」って言ってくれたし、出来ることなら初めて耀二と待ちあわせしたあの場所からもう一度やり直したいってずっと思ってた。
でもみんな夢のまた夢・・
それに耀二は私の事、ホントは好きじゃなかったでしょ、そんな気がずっとしてたわ。
だからいつも淋しくって・・
まっ、いっか!今更だよね、こんなこと。
でもね、やっぱり私は私。
耀二を大好きでまたやり直したいって思うのも、私の一日のほんの何十分かの一。残りの大半は別のこと考えてるし、私には私以外、何がすべてって、そんなもの何一つないの。
あぁ~私、何ワケの解からない事書いてるのかしら。すこし酔ったみたい。
実はさっきからブランデー飲んでるの。
すっごく美味しいよ、
耀二にも飲ませてあげたかった・・

さよなら 冴子

 徐々に陽が傾き、カーテンの隙間からこぼれる冬の光が缶ビールの影を長く伸ばしていた。静まり返った夕暮れ時。。。僕は着実に独りぼっちで、冴子はもうどこにもいない。

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