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【青森県八戸市】えんぶり展を見に行ってきた

 毎年2月17日から2月20日にかけて、青森県の八戸 (はちのへ)市内の各地ではえんぶりという伝統芸能が行われる。コロナ禍による中止や縮小を乗り越え、2024年は久々の通常開催となる予定だ。
 煌びやかに装飾された烏帽子を被り、えんぶりを
「摺 (す)る」姿は、青森県の南部地方を代表する芸能として紹介されることが多い。

仙台駅の新幹線ホーム内にある
東北地方の祭りを紹介するコーナー。
青森県の祭りとしてねぶた祭と並んで
えんぶりが紹介されている

 なお、えんぶりの存在は別に八戸市に限ったものではない。
 青森県内では南部町や階上町、岩手県内なら二戸町や久慈市など、八戸の周辺地域にもえんぶりは伝わっている。

 とはいえ、最もえんぶりに力を入れているのが八戸市なのは間違いないだろう。八戸えんぶりには30以上の団体が参加し、八戸市内では、えんぶり初日となる2月17日は市内の小中学校が休校になるという慣習もある。ただ、小中学生たちには残念ながら2024年のえんぶり初日は土曜日だった。

八戸市の中心街にある八戸ポータルミュージアムはっちでも
えんぶりについての展示がされていた
こちらははっちの常設展示の
えんぶりの様子を示した人形

 このえんぶりの時期に合わせ、八戸市博物館では2月4日から3月10日にかけて企画展「えんぶり展」「ひな人形展」が開催されている。
 今回はこのえんぶり展の展示の一部を紹介する。

八戸市博物館外観。
正面に立つのは根城 (ねじょう)を築いた
南部師行 (もろゆき)の像

 八戸市博物館が隣接する根城公園は、根城という城がかつてあった場所だ。
 南北朝時代に築かれて以降、17世紀に廃城になるまで300年もの間八戸の中心であった根城だが現在は本丸周辺が復元されており、日本の中世の城の様子を見ることができる。
 今回はえんぶりを中心にした記事であるが、根城公園や八戸市博物館の一般展示に関しても、またの機会に紹介したいと思う。

かなり前、暖かい時期に訪れた際の根城公園。
現在も緑豊かな市民の憩いの場だ
復元された根城の本丸があるのは公園の奥。
天守閣があるような戦国時代の城とはまた違った雰囲気だ
本丸内部の様子
本丸内では当時の行事などが再現されている

 そしてこの根城公園の本丸も、えんぶりの公演が行われる場所の1つだ。2024年は2月18日にどうさいえんぶり、2月19日にながえんぶりの公演がそれぞれ午前11時から行われる。

根城でのえんぶり公演を告知する貼り紙

 どうさいえんぶりはえんぶりの中でも比較的最近できた型であり、全体的に動きが早いのが特徴だ。太夫 (たゆう)と呼ばれる烏帽子を被った舞手は全員が同じ動きをし、烏帽子には全員に「前髪」と呼ばれるカラフルなリボンを束ねたような房が付いている。
 対してながえんぶりは古くからあるえんぶりの方であり、比較的ゆっくりとした動きが特徴だ。太夫たちの中でも先頭に立つ1人が藤九郎 (とうくろう)という主役を務める。
 藤九郎は単に先頭に立つだけではなく、他の太夫とは持ち物や動きが違う。また烏帽子も違い大きなボタンやウツギの花がついている。
 仙台駅にあったえんぶりのえぼしは、このながえんぶりの藤九郎のものである。

 この太夫の後ろで歌ったり楽器を演奏したり指揮をしたりするお囃子、そして組の代表である親方の20名から30名程度でえんぶり組が構成されている。

 また、えんぶりの中ではえんこえんこ松の舞恵比寿舞、そして大黒舞という祝福芸が踊られ、これらは子供が担当する。

先述したはっちに常設されている人形の別角度。
烏帽子を被って踊っている人たちが太夫。
 右手前にいる太夫が藤九郎。
1番奥にいるの紺色の服を着た人々がお囃子。
お囃子の前の子供達は祝福芸の舞手だ
現在私のプロフィール写真にも使っている
「メドツ」に関する看板のマグネットが売られていた。
このメドツ、遠野の河童とも縁深い (という説もある)
なかなかに面白い存在なので
これについてもそのうち紹介する記事を書きたい
えんぶり展入り口のパネル

 えんぶりは元々豊作を祈る踊りだ。
 その名前も「朳 (えぶり)」という農具から来ているらしく、えんぶりを行うことは「踊る」ではなく「摺る」と表現する。
 またえんぶりを摺る際に太夫が持っている棒状のものは「ジャンギ」と呼ばれるのだが、このジャンギの元になったものこそ農具の朳だという。

展示室入り口にあるえんぶりの口上や
参加の心得のパネル
太夫達のマネキン。
正面で来館者を迎えている太夫が藤九郎だ
えんぶりの日程。
八戸以外の地域のえんぶりも一部紹介されている
ながえんぶりとどうさいえんぶりの
烏帽子や道具の比較
烏帽子の側面に描かれているのは
縁起物や農作業の様子を描いたものだ。
独特の形状は馬の鬣を模したものであり
着用前には御神酒を備え礼拝するほど神聖なものだ。
この図柄の製作者の中には
八戸市出身の日本画家 七尾 英鳳 (ななお えいほう)もいる
えんぶりの最後に行うくろどめの口上。
畦が壊れて水が漏れ出さない為のものらしい。
現代から見れば非常にニッチな「呪文」だが
稲作がより身近だった時代の生活の様子が垣間見える
各えんぶり組の紋が描かれているてぬぐい。
やはり稲などをモチーフにしたものが複数ある
祝福芸に用いる道具。
現在は行われなくなったが、かつては
祝福芸として芝居を行うこともあったらしい
こちらは囃子が使う楽器の展示

 八戸の冬を彩るえんぶり。
 こちらを訪れる際は是非八戸市博物館の方にも足を運んでみてほしい。
 より深くえんぶりに触れることができる。

同時開催中のひな人形展も
様々な時代のひな人形などが見られる

八戸市博物館
住所 : 青森県八戸市大字根城字東構35-1
開館時間 : 9:00~17:00
休館日 :不定休 (公式サイト参照)
入館料 :一般 250円 大学生・高校生 150円
アクセス : 八戸駅からバスにて15分程度。最寄りバス停は「根城」
備考 :団体料金あり。隣接する根城公園のうち本丸は別料金 (共通券・割引あり)

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