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【青森県八戸市】全国朝市サミット2024の館鼻岸壁朝市はいつもに増してカオスだった

 青森県八戸はちのへ市にて、毎週日曜日の早朝に行われている館鼻たてはな岸壁朝市は、日本最大規模の朝市と言われている。
 毎週行われていることもあり、天候がすぐれない日はすぐに店じまいする店や出店しない店舗も珍しくないことからその日の天候次第で客足は大きく変わるが、八戸市の人口が約22万人なのに対して毎週2万人程度の来場者があるという。
 全長約800mの区間におよそ300店が軒を連ねるこの朝市では八戸市やその周辺地域はもちろんのこと、青森県各地や隣県の岩手県から様々な農水産物やその加工品はもちろん、服やアクセサリーなどの服飾品や刃物類やミシン ( ! )などなど、およそ一般的に朝市では売られていないようなものまで実に幅広いジャンルのものが集まる。
 そして売られている商品のバラエティの豊かさと活気はもちろんのこと、独特のビジュアルのゆるキャライカドンファミリーが事実上のマスコットを務めていたり、地元のご当地アイドルpacchiぱっち「日本一朝早く会えるアイドル」としてライブを行なっていたり、会場アナウンスがなんとも独特であったりとその混沌とした様相はカオスと表現されることが多い。

なおイカドンファミリーは
元は八戸市「黙認」ゆるキャラとのことであったが
最近は八戸駅の新幹線乗り降り口に写真が掲載されていたり
(下段、右から三番目にいるのがイカドンママ)
八戸市の公式イベントにも度々登場したりしている
牛すじ鍋やホルモン鍋のほか、八戸市名物のせんべい汁や
三沢市名物のパイカ (豚バラ先の軟骨部分。
肉がたっぷりついているほか煮込むと軟骨がとろけて美味)
を使ったパイカ鍋や五戸町名物の馬肉鍋など
様々な鍋料理が売られている新鍋亭。
奥に座るスペースがありゆっくり食べられる上に
非常に具沢山で味も美味しいお店。
大抵混雑しているがおすすめの屋台の1つだ
こちらは十和田市の焼き小籠包。
十和田ガーリックポークや十和田産米粉、
そして五戸町特産の青森シャモロックなど
近隣地域の食材をふんだんに使っている。
その味はもちろんのこと、食べ歩きにちょうどいいサイズから
館鼻岸壁朝市では常に行列ができている。
因みに冷凍のものは十和田市の各地で売られているほか
最近は十和田市内で焼き立てを食べられる店もできている

 なお声を大にして強調したいこととして、サイトには夜明けから午前9時までと案内があるが、実際のところほとんどの店舗は午前5時には開いている。その後は6時ごろにピークを迎え、7時には一部商品の売り切れや店じまいの準備をしている店舗も目立ち始めるというのが現状だ。
 八戸市でも市街地からはやや離れた工業地帯にあり、普段は物静かな漁港であることもあり実際に来てみないと信じられないとは思うが、特に初めて訪れるという方は5時ごろには会場に到着していることをオススメする

 しかしこの日は2024年10月20日。
 前日から八戸市では今回で25回目を数える全国朝市サミット2024が行われており、この日の朝市には北海道から函館朝市、岩手県から盛岡神子田みこだ朝市、秋田県から五城目ごじょうめ町朝市、宮城県からゆりあげ港朝市、千葉県から勝浦かつうら朝市、神奈川県から三崎みさき朝市、長崎県から佐世保させぼ朝市、熊本県から牛深うしぶかまるごと朝市、そして石川県から輪島わじま朝市と、全国各地9の朝市からの出展があった。
 以前から八戸市周辺地域などでは新聞広告やポスターなどが貼られており、普段であれば5時に着けば会場近くの駐車場に停められるのだが、近隣の駐車場はとっくに満車であった
 とはいえ幸い混雑は予想されており、誘導の人員も多数配置されていた為に少し離れた第4駐車場に停めることができた。
 もちろんレンタカーや県外ナンバーの車 (普段から東北はもちろん関東ナンバーの車もそれなりに見かけるが、この時は九州ナンバーの車もちらほらと目についた)も見られたが、想像していた以上に八戸のナンバープレートをつけた車の割合も多い。どうやら今回の広告を見て、八戸市周辺地域の普段朝市に来ない人々も一斉に足を運んでいるようだ。

時間は午前5時。
写真では明るく見えるが
実際はまだ空が若干白ずんでいる程度であり
太陽は登っておらず満月が雲の切れ目から覗いていた

 久々の館鼻岸壁朝市でとはいえ、お盆シーズンなどと比較しても明らかに混雑している。体感であるが普段の3倍以上は人が来ていた気がする
 気象庁の発表によるとこの日の八戸市の最低気温は8.3℃。しかも海風の吹き付ける岸壁ということもあり本来ならばさらに体感気温は下がるはずであるが、会場は多数の来場者の熱気によりそれほどの寒さを感じないほどであった。

 そしてもちろん、多くの来場者のお目当ては全国の朝市からの出店だ。ただでさえ普段よりはるかに混雑している朝市の中心部は、凄まじい数の人でごった返していた。

身動きが取れないほどに混み合う
朝市サミット特設屋台。
何が売られているのか見るのも一苦労だった
どこの屋台も凄まじい人だかりだ
五城目朝市からはナメコのほか
イトマン元気村からイトマンせんべえなどが売られていた。
パッケージには伊藤萬治郎さんの姿が
勝浦朝市からは名物タンタンメンの関連商品が。
勝浦の名物がタンタンメンであることを今回初めて知った。
こういったローカルな文化を知ることができるのが楽しい
中でも特に人だかりができていたのは
輪島朝市から出店している珍味だった

 大盛況の全国の朝市の屋台を見た後は、他の店舗も覗いてみる。この季節ならではの秋の味覚が多数店頭に並ぶ朝市は、普段から活気に満ちているもののこの日はいつもに増して多くの人が訪れて混雑していた。
 特にここで朝食を食べる人が多いらしく、しおてばで有名な大安食堂や前述した焼き小籠包の店のような食べ歩きができる店や、或いは飲食スペースのある屋台の混雑が目立つ。

朝市の本部ではpacciグッズも販売。
ちなみに自分も最近知ったのだが
pacciファンクラブの会長は
こちらも館鼻岸壁朝市場内名物の
独特のアナウンスを行なっている上村昭子さんその人らしい
プリプリの新鮮な生キクラゲ。
キクラゲといえば乾燥ものが一般的だが
生キクラゲは特に炒め物などにすると食感良さが段違いだ。
1皿が約100gで100円と非常に手頃な値段で売られており
複数皿分をまとめて買い求める人も多い
岩手県洋野町から来ている畳工房いたばしでは
畳を製作する際の端材で作った畳バッグやコースターを販売。
見た目が面白いだけではなく作りはかなり頑丈だ
天然物の新鮮なキノコを売っていた屋台。
この屋台は他の時期は時期によっては山菜なども売っている
南部地方ではメジャーなスナックである串もちは
館鼻岸壁朝市でも複数箇所で売られている
チョコレートテリーヌやブルーチーズなどを売る店舗。
食べ歩きに便利なサイズも販売している。
串もちのように昔ながらのスナックもあれば
このように小洒落たケーキを売る店もある。
この多彩さが館鼻岸壁朝市の魅力だ。
他にもこだわりの自家製キムチをはじめとした韓国料理の店や
本場アメリカ仕込みのシナモンロールを売っている店など
国際色豊かな屋台の姿も数多い
館鼻岸壁朝市の外国の味といえば
八戸市はもちろんのこと、岩手県盛岡市にも店舗がある
ベトナム料理店ロブ・フォートンズの
様々なフォーとバインミーも外せない。
朝市では値段と量と具材の種類を抑えた
朝市仕様のフォーを販売している。
スープや麺の旨さはそのままに控えめな量が食べ歩きに最適。
このシンプルさがまた本場っぽくて良いのだが
この日は混雑していて諦めた
こちらは別の日に注文したチキンフォー。
+100円でパクチーをトッピングしてもらっている。
その旨さはもはや見ればわかるので言うまでもなく
早朝の海風を浴びながら食べるフォーは
それ自体にえも言われぬ喜びがある
この時期ということで食用菊も至る所で売られていた。
霜が降りると変色して売り物にならなくなってしまうらしく
生のものが手頃な値段で手に入るのはこの時期だけだ
刃物店も複数店舗が出品している。
この店では研ぎもお願いできる
人気屋台の1つ、岩手県久慈市からやってきている揚げ物店。
久慈の新鮮な魚の唐揚げはもちろんのこと
わさびコロッケやメンチカツなど
コロッケも品揃えも実に多彩でどれも美味い
港町八戸の朝市ということもあり
新鮮ピカピカな魚も勿論たくさん売られている。
手前のアブラメ (アイナメ)は
その辺で母親に抱かれている人間の赤ちゃんよりも大きい。
奥の1尾100円で売られているドンコ (チゴダラ)やカジカは
相対的に小さく見えるがこちらも30センチ程度はありそうだ。
ちなみにドンコもカジカも鍋にすると非常に美味しい魚だ
もちろん魚の加工品も充実。
こちらはヒラメやアブラガレイというカレイの刺身や
しめ鯖などを売っている店舗。
特にヒラメのえんがわの刺身はトレイに山盛り入って500円。
この日の夜はこのえんがわに醤油とワサビを纏わせた
えんがわ丼で最高の夕食を楽しめた。
北の港町だからこその贅沢だ
その場で焼いている熱々の炭火焼きを売っている店舗も多い。
香ばしい香りに早朝だというのにお腹が空く
実に恐ろしいトラップである
同じく館鼻岸壁朝市に多く出店している人気店がコーヒー店。
それも地元の喫茶店が提供する
1杯ずつその場でドリップするタイプの本格コーヒーだ。
早朝の港で朝日を見ながら飲めるコーヒーということもあり
どのコーヒー店も大人気だ
おいらせ町のハーブ農場CONSE farmの店舗では
こちらも朝に嬉しいハーブをたっぷり使ったドリンクを販売。
その爽やかさがこちらもまた朝に嬉しい。
写真には写せていないが
アイスハーブティーなど冷たいドリンクも販売している
車での来場者が多いので持ち帰りでの販売だが
日本酒をはじめとした地元の酒を中心にした店もある。
朝市で買った肴をつまみに今夜はこれで一杯……
いやでも今日は日曜なんだから明るいうちから……
想像するだけで‪顔が綻ぶ
秋の味覚の代表、りんごやプラムなどの果物の姿も多い。
ちなみにレクラークと書かれた洋梨は
この地域ではよく見かけるゼネラル・レクラークという品種。
収穫直後はお世辞にも美味しいとはいえないのだが
追熟させることで甘くなり、そしてとろける食感となる
館鼻岸壁朝市でちらほらと売られている魚網。
「港町とはいえなぜ?」と思う方も多いだろうが
朝風呂文化が根強く早朝から営業する銭湯も多い八戸市では
実はあかすりとしての需要が一定数存在している
こちらは若鶏の卵や田子町のブランド卵「緑の一番星」など
様々な新鮮な卵を販売しているお店……なのだが
なぜか一画で多肉植物の寄せ植えも売っている。
実に館鼻岸壁朝市らしいお店である

 会場をぐるりと回って戻ってくると、本部近くでは岩手県二戸にのへ市のキャラクター達や盛岡市の神子田朝市のマスコットであるあさいちくんなどがおり、多くの人々が写真を撮っていた。

二戸町のキャラクター。
左から浄法寺のねこ、アカダマちゃん、観音さま。
浄法寺のねこは先日30周年を迎え記念イベントも行われた。
観音さまが長男、ねこが次男、アカダマちゃんが妹らしい。
仏と猫とトマトの兄妹という関係に複雑な家庭環境が伺える

 そしてもう1つ、さらに大きな人だかりが見える。
 その中心にいたのはなんともいえない造形の着ぐるみ達。一度見たら忘れられない、なんなら夢に出てきそうなこのビジュアルは八戸市黙認ゆるキャラことイカドンファミリーである。
 朝市に行くとそこそこの確率で誰かしらがいるのだが、全員揃っている場面は結構珍しい。

左から時計回りにイカドンママ、イカドンパパ
イカドン娘、そして最近加わったイカドン孫。
10月ということでイカドン孫はハロウィン仕様だった。
イカドン孫は他のイカドンファミリーと比べると
かなり人間に近い姿をしているが
まだ見ぬイカドン義理の息子が完全に人間で父親似なのか
あるいはクトゥルフ神話の深きもののように
加齢によってイカに近づく生態をしているのか
そしてイカドン孫は何歳までイカドン孫をやってくれるのか
非常に謎に満ちた存在でもある
(そして余計なお世話かもしれないが
イカドン孫が将来人間として生きる際の障壁にならないよう
念の為に顔部分にはモザイクを入れさせてもらった)

 いつもに増して活気に満ち溢れた館鼻岸壁朝市。のどかな港町の早朝にだけ出現する祭りのような賑わいが今後も末長く続いてくれることを願うと共に、北東北のみならず全国津々浦々の朝市の姿もまた気になってくる。
 今後その機会があることを願うばかりだ。




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