所有権?著作権?聞いたことあるけど…
みなさん、こんにちは〜!
弁護士法人えそらの弁護士の鹿野です。
法律の第3かじり目は所有権と著作権です!
突然ですが、私たちって結構いろんな権利で守られているって知っていました?
たとえば、吉岡里帆さんのドラマでおなじみ「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利である生存権、教育を受ける権利、表現の自由、職業選択の自由、…憲法にはたくさんの権利が定められています。
ちなみに名称は「自由」ですが、これらはしっかりとした「権利」です。
他に権利といえば、そう!!
所有権!!
(ちょっと導入に無理があるw)
でも、所有権の対象って何かわかりますか?考えてみると結構難しいんです。
例えば…と言いたいところですが、ここで
最高裁昭和59年1月20日第二小法廷判決)
【ストーリー】(すべて実際の判例を元にした仮名・フィクションです)
一般財団法人書道を大切にしようの会(通称「書道の会」)は、今は亡き博士が収集してきた書道の資料をたくさん所蔵している団体です。その書道の会が所蔵している作品の中でも、中国の随時代の有名な書道家である青上雲(せいじょううん)が自筆した作品「青上雲自書告身帖」はとても貴重なもので、所有していることの誇りをもっていましたし、とても大切に所蔵していました。
ある日、真緑出版が書道作品を掲載する本を出版しました。書道の会としては、どんな作品が掲載されているのか気になるところです。早速、購入して中を見てみると…なんと、「青上雲自書告身帖」を写真撮影したものが掲載されているではありませんか!!
えーーーーーーーーーー!?!?
書道の会は、自分たちが「青上雲自書告身帖」を所有しているのだからそれを使用収益する権利も自分たちにある!真緑出版の出版は所有権侵害だ!出版物の差し止めと廃棄を求ム!! と怒り心頭
一方の真緑出版は
いやいやいやいや、博士が生前、神野くんに「青上雲自書告身帖」の写真乾板の作成とそのコピーを作ること・頒布することを許してたじゃん?うちは、神野くんからこの写真乾板を譲り受けて、この写真乾板を使ってこの本を作ってるの!だから書道の会さんにとやかく言われる筋合いはない!!
※写真乾板とは、フィルムではなくガラス板に写っている写真みたいなイメージです
(ストーリー終わり)
さ、ここで今日の本題所有権って何を守ってるんだ?って話しです。
このお話をする前提としては、まず著作権という権利について知っておかねばなりません。
著作権とは
自分の考えや気持ちを作品として表現したものを「著作物」
著作物を作った人を「著作権者」
著作者に対して与えられる権利が「著作権」 です。
著作権って何かを考えるには著作権法って何でできたのかを考えるとわかりやすいかもしれません。
著作権法の願い…それは「さらなる文化の発展」なのです✨✨
…??って感じでしょうけど、もう少しお付き合いを。。
今、私たちは日常生活で本や雑誌、小説を読んだり、テレビを見たり、音楽を聴いたり、美術品を鑑賞したり…してますよね。
例えば、音楽!
最近だとメイキング映像とかも見れるようになったり、アーティストさん自身のSNSで創作活動を見たりすることができるようになりましたが、アーティストさんが1曲を作るにはかなりの努力をしていらっしゃいますよね。そのおかげでわれわれは音楽を楽しんでいるので、感謝ですし、全力で応援します(ちなみに私はBUMP OF CHICKENとCreepy Nutsが好きです♡)!
ここで著作権のない世界を考えてみましょう。
小話ターーーイム!!
ある絵描きさんが一生懸命黒猫の絵を描いていました。どう考えても素敵な絵なんだけど、どうやったらみんなに見てもらえるのかわからない…すると、通りすがりの男が、その絵を売ってくれないかと声をかけてきます。絵描きさんは、我が相棒のように描き続けてきた黒猫の絵がやっと人の目にとまったととても嬉しい気持ちになり、その男に絵を売りました。しかし、その数ヶ月後、ちまたでは空前の黒猫ブーム。クロネコパーカー、クロネコiPhoneケース、クロネコタンブラー…どっからどうみてもその黒猫は絵描きさんが描いた黒猫です。それらグッズが売れることで収入を得ているのは、あの日絵を買ったあの男。絵描きさんには1円たりともお金は入りません…
このままでは絵描きさんは収入が成り立たないから創作活動を続けられないですよね。。。頑張って描いたって横取りされて終わりなら、もうやだ。。。なんてことになるかもしれません。
だから、著作権者にもしっかりと権利を認めることで、横取りを防止して、さらなる文化の発展を実現したい!!というのが著作権法ができた根源なのです。
著作権がある世界では、上記のような場合、絵描きさんの許可がないとグッズ販売はできないし(勝手にやったら犯罪です!)、その許可をする際に、「売上げの何割はくださいね、じゃないと使用の許可はしません」と絵描きさんはいえるようになるわけです。
著作権の中には、著作人格権と著作財産権というものがあります。
著作物をとおして表現されている著作者の人格を守るのが著作人格権
著作物の利用方法を定めているのが著作財産権
ですね
著作権と所有権
さて、話しを戻しましょう。
今回のLet’s storyでは所有権侵害だー!!って怒ってましたね。
所有権なの?書道の作品って芸術だし著作権じゃないの?
って思いません?
実は…著作権って有効期限があるんです。
永久不滅に保護されるわけじゃなくて、著作権者が亡くなってから70年なんです。
今回は中国の随時代の有名な書道家である青上雲(せいじょううん)の作品が対象なので著作権はとうの昔になくなってるんです。
そのため書道の会さんは、所有権という権利主張をするしかありませんでした。(著作権の中にはいろんな権利が集約されているのですが、すべてではないにしても相続することも譲渡することもできます)
ここで、著作権と所有権ってそれぞれ何を守ってるんだ?
ということが問題となり、それを解決したのが昭和59年1月20日の最高裁判例なのです。
結論からいうと
・所有権が守っているのは有体物
・著作権が守っているのは無体物
です!
有体物っていうのは、目に見えて触れるもの
(土地、建物、机とか)
無体物っていうのは、触れないもの
(アイデア、音楽、データとか)
そうすると面白い現象が起きます。
・黒猫の絵を誰かに売れば、所有権が譲渡されるけど、著作権は移りません。
・黒猫の絵の著作権を譲渡すれば、著作権は移るけど、黒猫の絵の所有権は移りません(絵は手元に残ります)
・黒猫の絵を燃やせば、絵が消えて亡くなってしまうので所有権はなくなりますが、著作権は消えずに残ります。
・黒猫の絵を破れば、所有権を侵害したことになりますが、著作権は侵害されていません。黒猫の絵を使ってクロネコタンブラーを売れば、黒猫の絵の所有権は侵害されていませんが、著作権が侵害されています。
そして、判例の結論としては
裁判官「所有権って有体物を保護にしてるでしょ。無体物である美術品を排他的に支配する力は所有権にないよ。で、今回は、神野くんが博士からもらった写真乾板をもとに本を作ったなら、誰の所有権も侵害してないじゃん。真緑出版さんは。」
書道の会「でもでも。我々が一生懸命保管してきたものだし」
裁判官「仮に真緑出版さんが出版した本が書道の会さんの営業妨害になるとかなら、別問題だよ?それはそれで不法行為に基づく損害賠償請求をすればいいと思う。でもね、今回の程度じゃ、何も侵害されていないよ」
ということで書道の会さんの負けに終わりました。
ちなみに実際の裁判で裁判官がこんなに見解を教えてくれることはありませんw
まとめ
今回は、所有権と著作権についてでした〜
なんでもかんでも所有権で守られているわけじゃないんだね〜
著作権って深そう。。。
ということを感じ取ってもらえたら嬉しいです!
著作権についてはじっくりどこかで解説します〜
ほいじゃ!
今日もありがとうございました〜
弁護士法人えそら
代表弁護士鹿野舞