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「パワポをさわる前にWordを作れ」と言われて10年無視し続けてきた昔の私へ
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パワポ作成の「鉄則」はわかっているはずなのに…
プレゼン資料や報告書を作成する際、多くの人が経験するのは、いきなりパワポ(PowerPoint)を開いてしまうことです。「まずはWordやメモ帳で文章を作成してからスライドを作るべきだ」と言われたことは、少なくとも一度は耳にしたことがあるでしょう。実際、私も長年このアドバイスを受けてきました。しかし、それでも多くの人が「ついつい」パワポから手をつけてしまうのはなぜでしょうか?
料理に例えると、、、?
ここで、パワポ作成を「料理」に例えてみます。例えば、料理を作るとき、まずはレシピを見て材料や手順を確認しますよね?それにもかかわらず、私たちは資料作成においては、レシピ(文章の構成やストーリー)を確認せず、いきなり調理(パワポ作成)を始めてしまうのです。このアプローチは、あたかもレシピを確認せずに料理を作り始めてしまうようなものです。結果として、味がバラバラで食べにくい料理(質の低い資料)ができあがってしまいます。
なぜこのような問題が起きるのか?
1. 「まずい料理」を作った自覚がない
一番の問題は、質の低い資料を作ってしまったとしても、その自覚がないことです。料理の場合、味見をすればすぐに失敗がわかります。しかし、パワポの場合は、作り手自身が完成後にすぐには問題に気づきません。なぜなら、見た目が整っているように感じるからです。文字や画像をスライドに配置することで、あたかも完成度が高いかのように見えることが多いため、自分の資料の質が低いことに気づかないのです。
2. 「悲しきモンスター量産体制」
多くの組織では、効率を重視するあまり、量をこなすことが優先されがちです。そのため、スピード感を持って資料を作成しようとすると、ついついパワポを先に開いてしまいます。特に大企業や忙しいビジネスパーソンの間では、量産体制が整っているため、1つのスライドに対して深く考える余裕がなくなり、結果として「形だけのスライド」が量産されることになります。
3. 「なんとかなる」という誤解
多くの人は、「とりあえず作り始めてしまえば、なんとかなる」と考えてしまいます。確かに、スライドをどんどん追加していけば、ある程度の形にはなります。しかし、こうした作り方では、メッセージが一貫せず、ストーリーが崩れてしまい、聞き手に伝わりにくい資料になってしまいます。つまり、見た目はそれなりでも、内容はスカスカな「形無し」の資料になりがちです。
解決策:レシピ(文章)が重要である理由
パワポ作成において、まず文章を考えることは、料理のレシピを作ることと同じです。レシピがあることで、以下のようなメリットがあります。
全体像がブレない
文章を先に考えることで、スライド全体のストーリーラインが明確になります。最終的にどんなメッセージを伝えたいのかがクリアになるため、不要な情報やスライドの追加を避けることができます。
手順を守れば良い作品が作れる
レシピに従って調理を進めると、基本的には美味しい料理ができるように、文章に従ってスライドを作成することで、質の高い資料ができあがります。この方法では、手戻りが少なく、効率的に作業が進みます。
正論は現実の前に無力
とはいえ、多くの人は「文章を先に書くべきだ」という正論を理解しつつも、実際には時間の制約やプレッシャーから逃れられず、ついパワポを開いてしまいます。この現実を打破するには、意識的にアプローチを変える努力が必要です。
まずは文章から、パワポはその後
結局のところ、パワポを先に作り始める癖を直すには、「文章を作ることがいかに大切か」を実感する必要があります。例えば、プロの料理人がレシピを見ずに美味しい料理を作ることはできません。同じように、プロフェッショナルなプレゼン資料も、しっかりとした構成と文章があってこそ作成できるのです。
まずは「いきなりパワポを開かない」ことを心がけて、文章から作成をスタートする癖をつけてみましょう。最初は時間がかかるかもしれませんが、このプロセスを守ることで、効率的で質の高い資料作成ができるようになります。
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パワポには「正解」がない。でも本当にどう作ってもOKなのか?
パワポ資料を作る際に、よく耳にするのが「パワポには正解がないから、自由に作ればいい」という言葉です。確かに、パワポには決まったフォーマットや絶対的なルールは存在しません。しかし、この「正解がない」という言葉に惑わされて、自由に作った結果、質の低い資料が生まれてしまうケースが非常に多いのです。
「自由」と「形無し」の違い
スライドでは、「型を知らずに邪道をいくのは、型破りではなく『形無し』」と指摘しています。つまり、型(基本的な構成やデザインのルール)を知らずに自由に作ることは、決して「型破り」ではなく、単に「形が定まらない」だけの状態です。これは、建築で例えるなら、基礎の設計図もないままに家を建てるようなものです。一見自由な設計に見えるかもしれませんが、実際には構造が不安定で、完成した時には見た目も機能も中途半端になってしまいます。
何を作るかによって、ベターな作り方は存在する
確かにパワポには「絶対的な正解」はありませんが、どのような目的の資料を作るかによって、ベターな作り方は存在します。たとえば、以下のようなケースが考えられます。
営業用のプレゼン資料
営業資料では、相手に伝えたいメッセージが一貫していることが重要です。具体的な数値やデータ、成功事例などを効果的に配置し、説得力を持たせることが求められます。
社内報告資料
社内の報告資料では、効率的かつ簡潔に情報を伝えることが求められます。この場合、過剰な装飾や長すぎる説明は不要で、要点を抑えた簡潔なスライド構成が理想です。
アイデア提案資料
アイデア提案のスライドは、斬新さや独自性が求められます。そのため、デザインや表現において、ある程度の自由さやクリエイティブな要素が必要になります。しかし、ストーリーラインが崩れてしまうと伝わりにくくなるため、自由な発想の中にも一定の型が存在することが大切です。
ベターな作り方の第一歩:「型」を知る
パワポ作成の初心者が陥りがちなミスは、最初からスライドに手をつけてしまうことです。これは、料理で例えるなら、食材の下準備をせずにいきなりフライパンに食材を放り込むようなものです。これでは、美味しい料理ができるわけがありません。
型を知るためのアプローチ
文章からスタートする
パワポに手をつける前に、まずは文章で構成を考えることが基本です。タイトル、キーメッセージ、各スライドのポイントを書き出しておくことで、スライド全体のストーリーが明確になります。
型に従ってスライドを作成する
型を知ることで、どんなスライドにすべきかが見えてきます。例えば、イントロダクション、課題提起、解決策、結論という4つの基本的な流れは、どの資料でも応用が可能です。この型に沿ってスライドを作成すると、自然と論理的な構成になります。
自分の「カタチ」を作っていく
型を知った後は、次に自分自身のスタイルを見つけることが重要です。何度もスライド作成を繰り返す中で、自分が一番作りやすく、伝わりやすい方法が自然と身についてきます。これは、料理のプロが自分の得意料理を持っているのと同じです。型に従いつつも、自分の個性や得意な部分を盛り込むことで、オリジナリティのある資料が作れるようになります。
自分のカタチを見つけるためのヒント
他の人のスライドを参考にする
自分のカタチを見つけるためには、まず他の人がどのようなスライドを作っているかを見ることが役立ちます。良いスライドはなぜ良いのか、わかりにくいスライドはなぜわかりにくいのかを分析してみましょう。
参考になる神サイト:https://www.slideland.tech/
PDCAサイクルを回す
資料作成もPDCAサイクル(Plan, Do, Check, Act)を意識すると効果的です。作成した資料を振り返り、どこを改善すべきかを考えることで、次回以降の資料作成のクオリティが向上します。
まとめ:型破りと形無しの違いを理解する
「自由に作る」という言葉に甘んじて、型を知らずに作成を進めてしまうと、形無しのスライドができてしまいます。一方で、型を理解した上で、あえてそれを崩すことで、型破りな斬新な資料を作ることも可能です。この違いを理解することが、パワポ作成のスキル向上の第一歩です。
次のスライドでは、「形無し」パワポがなぜ増殖してしまうのか、その原因と対策について詳しく解説していきます。
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「形無し」パワポが蔓延する3つの誤解
多くの企業や組織で、質の低い「形無し」パワポが氾濫している現状があります。これは一体なぜなのでしょうか?その原因は、以下の3つの誤解にあると考えられます。
誤解1:パワポで語る内容をWordで書ききらないといけない
まず、よく見られる誤解の一つが、「パワポで表現する内容は、まずWordなどのテキストにすべて書き起こしてからでなければならない」という考え方です。この誤解が生まれる背景には、文章を書いてからスライドを作るというアプローチの重要性が強調されすぎていることが挙げられます。しかし、実際には最低限タイトルとキーメッセージだけでもよいのです。
パワポ資料で最も重要なのは、タイトルとキーメッセージです。資料の目的やメッセージが明確であれば、詳細な文章は必要ありません。むしろ、細かい文章にこだわることで、スライドが冗長になり、メッセージが埋もれてしまう可能性があります。
キーメッセージがしっかり伝わると、それだけで資料のインパクトが大きくなります。資料を見る人は、詳細よりも「何が言いたいのか」を最初に把握したいからです。
誤解2:パワポ作成には手間と時間がかかる
次に、「パワポを作成するには、かなりの手間と時間がかかる」という誤解があります。確かに、細かいデザインやレイアウトにこだわりすぎると、時間がかかることは否めません。しかし、ストーリーとデザインの分業で効率化してしまえば、思った以上に短時間で作成できることも事実です。
具体的には資料作成のプロセスを分解し、まずストーリー(文章や流れ)を設計し、その後にテンプレートを活用しつつパワポでのデザインに移るというアプローチを取ると、作業は効率化されます。
ストーリーが決まっていれば、スライド作成の時間は短縮できます。文章はコピーペーストで配置できるため、タイピングの手間も省けます。これにより、時間を節約しつつ、質の高い資料が作成可能です。
誤解3:自由な発想が出なくなってしまう
「文章から作り始めると、自由な発想が出なくなる」という誤解も多く聞かれます。これは、「文章が決まっているとデザインに制約が生じる」と感じるからです。しかし、実際にはストーリーをぶらさず、自由に遊べるという利点があります。
ストーリーがしっかり設計されていれば、スライド作成中にも自由な発想を取り入れることができます。具体的な構成が決まっていることで、創造性が制限されるどころか、むしろデザインや表現に集中できるのです。
また、スライドのデザインを何度も修正することができるため、オリジナリティを持たせた資料が作りやすくなります。例えば、背景デザインやフォント、アイコンなど、細部にこだわる余裕が生まれるのです。
まとめ:「形無し」を脱却し、質の高いパワポ作成を目指す
このスライドで説明したように、パワポ作成にはいくつかの誤解が存在します。しかし、それらの誤解を解消し、3つの真実に基づいて資料を作成すれば、「形無し」のスライドを量産することはなくなります。むしろ、伝わりやすく、一貫性のある資料が作れるようになるでしょう。
次のスライドでは、具体的にどうやって文章を書き、スライドに反映していくのかについて説明します。階層箇条書きや文章構成の技術を活用して、質の高い資料作成に一歩踏み出しましょう。
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文章作成がパワポ作成の鍵となる
スライド資料の質を高めるためには、まずはしっかりとした文章を作成することが必要不可欠です。しかし、多くの人が文章を適当に考えたままスライドを作り始めてしまい、結果として「形無し」のスライドが出来上がってしまうことが少なくありません。このスライドでは、具体的にどのような文章を書けばよいのか、そしてその書き方について詳しく解説します。
絶対に必要な文章要素:タイトルとキーメッセージ
パワポ資料を作成する上で、最も重要なのは 「タイトル」 と 「キーメッセージ」 です。この2つさえしっかりしていれば、資料の骨格ができあがり、スライド全体が一貫性を持つようになります。逆に言えば、この2つが曖昧なままだと、どれだけデザインに力を入れても、聞き手にとってわかりにくい資料となってしまいます。
タイトルの作成方法
シンプルかつ明確に
タイトルは、スライド全体のテーマを簡潔に示すべきです。例えば、「なぜ形無しパワポが増えるのか?」や「効率的なパワポ作成の方法」といった具合に、聞き手が一目で内容を理解できるようにすることが重要です。
興味を引く表現にする
タイトルには少し工夫を加えて、興味を引くような表現にすると効果的です。例えば、「絶対に避けたいパワポ作成の3つの誤解」といった具体性のあるタイトルにすることで、聞き手の注意を引きやすくなります。
キーメッセージの作成方法
一言で要約する
キーメッセージは、そのスライドで伝えたい一番重要なポイントです。一言で要約できるように考え、できる限り短く簡潔にすることが理想です。例えば、「形無しパワポの原因は3つの誤解にある」といった形です。
スライドの主旨を補強する
キーメッセージは、スライドのタイトルを補完し、より具体的な内容を伝える役割を持ちます。これにより、聞き手はタイトルとキーメッセージだけでスライドの内容を理解できるようになります。
中身の部分は階層箇条書きで書く
タイトルとキーメッセージが決まったら、次はスライドの中身を文章で構成します。ここでおすすめしたいのが 「階層箇条書き」 です。この技法は、文章を階層構造に整理して書くことで、内容が整理され、スライドの構成がわかりやすくなります。
結論:文章がしっかりしていれば、スライドは自然と形になる
文章がしっかりと整理されていれば、スライドのデザインは自然と形になっていきます。これは、料理でいうところのレシピがしっかりしていれば、料理が美味しくなるのと同じです。どれだけデザインに凝ったとしても、文章の構成が乱れていると、最終的な資料の質が低くなってしまいます。
次回の資料作成では、まず「文章を書いてからスライドを作る」アプローチを試してみてください。この手順を守ることで、質の高いパワポ資料が短時間で作成できるようになるでしょう。