スペアヘッド
1.乾いた音の正体
真夜中に電話が鳴った。友達がいない自分の電話の向こう側はだいたい把握している。我空だ。面倒だが出た。
「俺だよ。今何してんの。」
「何してんのじゃねーよ。何時だと思ってんだよ。」
半分眠りかけていたのもあってオレは少し語調を荒げた。その時何か引き摺る音に気がついた。
カラカラカラカラ
「我空?」
カラカラカラ…カラ…
「ああ、今1人やっつけてきたんだよ。」
金属バットを引き摺る音だと気がついた。
「相手生きてんだろうな?」
「さあ、どうかな。そんなの知らない。別にどっちだっていい。」
こういうときの我空の引き笑いが不気味だ。躁転しているときの奴はまるで別人だから。
「ああ、でも思い切りジャンプして頭かち割ったから動かなくなっちゃった。」
引き笑いから高笑いに変わる。ゾッとした。
「面倒なことにオレを巻き込むなよ。」
無線で盗聴でもされていたらどうするんだ。
「翔には迷惑をかけないようにするから大丈夫だって。そんなに心配なら電話帳から俺の番号を削除しておけ。警察から何か聞かれても知らないで通せるからさ。」
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