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永遠のループ説
僕の連れが死んだ。
染まりゆく薄紫の朝焼けの中、路上で死んだ。
それを知った時刻は夜7時。電話が鳴り、見覚えのない電話番号に躊躇しながら出るとそれは連れの母親からの知らせだった。
北海道の冬は凍死できるほど寒い。アルコールを浴びるように飲んで雪の中、酒の瓶を手にしたまま彼は冷たくなっていた。それを始発電車に乗ろうとした出勤途中の若い女性が発見したそうだ。
僕の幼なじみだった岸間裕也君という青年は25年の歴史を閉じて忽然と魂を肉体から離脱させて羽ばたいて行った。
何処へ?わからない。
彼は生前に日記を書いていて、僕にだけ見せてくれていた。「あなたにあげるわ。裕也もきっと貰って欲しいって思っているから。」そう言いながら真っ赤に充血させた目の端を白いハンカチでおばさんは押さえた。ほとんど寝ていないのだろう。
顔色は真っ青で目の下にくっきりと隈が出来ていた。
僕は黙ってそっと日記を受け取って汚れないように優しく風呂敷で包んで両手で抱きしめた。
岸間君はなぜ死んだのだろう。ずっと同じ疑問が呪文のように僕の頭の中をループしていた。真冬の雪の降る中、酔っ払って路上で寝てしまうなど彼に限ってあり得ない。何故なら彼はアルコールが苦手だったからだ。そうすると自ら死のうとしたとしか思えなかった。昔から賢くて成績優秀で有名だったが、天才すぎてたまに不可解なことを言ったり何か不用意に理不尽なことを言おうものなら即座に論理的かつ軽快に論破して、周りの大人を辟易とさせていた。幼なじみなのに僕が岸間君と畏まって呼ぶ理由は論破されまくって悔しくて少し捻くれてしばらくの間「岸間先生」と呼んでいた名残があるからだ。
通夜と葬儀が終わってから、家に帰る途中に雨が降り出した。その夜寝床について寝入ってから真夜中にふと目覚めると気配を感じた。彼が枕元に座っている。ああ、まだいたんだ。手を伸ばしたら彼はそれを制止して机の上を指差しながらスッと消えてしまった。まるで答えのヒントがそこにあると啓示するかのように感じた僕は、そこに置いたままにしていた日記の風呂敷包みを開け、静かに丁寧に読み始める。
その一部を抜粋する。
以下日記より。
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