「フィンランド式教育」 なぜレベルが高いのか 小学校:前編
みなさん、こんにちは。
今回は「フィンランドの教育レベルはなぜ高いのか」というテーマで実際にフィンランドの学校で生活してみて導いた自分の考えを、今回は小学校に焦点をおいて学習環境・授業スタイル・教科書・英語教育の4つの項目に分けて述べていきたいと思います。
※これから述べることはあくまでも私の意見であり、学校によっても違いが生じることを理解して読んでください。
長い記事になっていますが最後まで読んでいただけると嬉しいです。
■フィンランドの学校について
最初にフィンランドの学校システムについて大まかな説明をしておきたいと思います。私がインターンシップしていた学校(以下Hepola小中学校)は、フィンランドのケミというヘルシンキから2時間の小さな町にある生徒500人、教師50人規模の公立の小中一貫校です。
フィンランドでは1998年以降、小学校6年間と中学校3年間を一貫して教育を行うという法律改正により、現在は小中一貫校が増えており、この9年間を義務教育課程として位置づけています。また、フィンランドにはごくまれに私立学校が存在しますが99%は公立学校です。
多くの生徒は義務教育過程を終了後、高等学校(進学率は約6割)、もしくは職業学校(進学率は約3割~4割)に進学します。その後、高等学校へ進学した生徒は大学、もしくはポリテニックへの入学資格を取得するために国家試験を受けます。その後の試験の方式は学校によって異なりますが、大学やポリテニックへの進学は安易なものではなく、毎年入学希望者のうち入学許可を得られるのは約3割の生徒だけです。職業学校へ進学した生徒は高等職業専門学校へ進学し、職業生活で要求される高レベルの専門能力を身につけます。
日本の生徒の高校進学はほぼ必然的に決まります。そのため日本では高校進学よりも大学、専門学校への進学、もしくは就職。多くの生徒にとって進学に関する初めての大きな選択はこの時期になるのではないでしょうか。
一方でフィンランドでは、高校進学、もしくは職業学校への進学が初めての大きな選択になるため、日本よりも早い段階で自分の将来について考える必要があります。実際、私がお世話になったHepla小中学校の先生は「高等学校へ進学するのか、もしくは職業学校へ進学するのか。この選択は生徒にとってとても重要になります。だからフィンランドでは小学校から選択科目があり、自分の興味のある分野を専門的にはやい段階から学ぶ必要があります。」と言っていました。
これらの情報を踏まえて、なぜフィンランドの教育レベルが高いのか、その理由について私の考えを述べていこうと思います。(小学校編)
■学習環境
まずは学習環境についてです。
一概には言えませんが、Hepola小中学校をはじめとするフィンランドの学校は各教室の質が高く、生徒1人1人が快適な環境で授業を受けられる工夫がなされているように感じました。それでは、1つずつ詳しく説明していきます。
・設備が充実
インターンシップ1日目に9年生の生徒に学校を案内してもらったのですが、その時に思ったのは、設備が充実しているということ。
この写真は小学4年生の教室です。全ての教室にプロジェクターとスクリーンが設置してあります。その後ろには黒板がありますが、多くの先生はスクリーンだけを使って授業を行います。
この写真は技術室です。
技術室の中にも4つの部屋があり、立ち作業や色塗りなど作業内容によって教室を使い分けています。道具も授業に必要な物が一式がそろっています。(前に写っている生徒が耳に当てているものは、木を彫るときに生じる大きな音を小さくするためのもので、これも技術室に置いてあります。)
写真のクラスの授業内容は小物入れ作りで、木をのこぎりで切り、それをノミと呼ばれる道具を使って溝を彫り、最後に色を塗るという工程です。写真の生徒たちは小学3年生ですが、私が中学校で受けていた技術の授業と変わらないレベルの授業が展開されていました。生徒約10人のクラスに教師が2人体制で生徒に対応しています。
この他にも家庭科室、科学室、音楽室、裁縫用の教室(写真参照)などがありますが、どの教室も日本の公立小中学校と比べて設備が充実しており、このような設備は一部の新しい学校だけでなく、全てのフィンランドの学校で同レベルの整備がなされています。実際に、Hepola小中学校があるケミもヘルシンキから2時間の小さな町ですが、写真のように充実した設備が整っていました。
・生徒1人1人に合わせた学習環境を提供している
日本では生徒は自分の決まった席に座り、静かに授業を聞くのがルールですが、フィンランドの学校では少し違います。
クラスには静かに授業を受けたい生徒、友だちと話しながら勉強したい生徒、静かにするのが苦手な生徒など様々な生徒がおり、それは学年が下がるとより顕著に現れます。フィンランドではそのような状況ともしっかり向き合い、それぞれの生徒に適した学習環境を創り出しています。
例えば友達と話しながら授業を受けたい生徒は廊下にある大きな机で友達と協力して問題を解きます。これでは勉強しないのでは?と思っていましたが、与えられた課題を授業中にこなさないと宿題になるので生徒は話しながらも問題はこなしていきます。
他には椅子に座っていると落ち着かない生徒はバランスボールを椅子の代わりとして利用したり(この対策は中学校でもとられています)、静かに取り組みたい生徒は廊下で音読をしたりなど、ルールに縛られすぎずに、生徒が効率的に学習できる環境を作り出すためのサポートを教師は行います。
また、少人数制を採用しながらも低学年には教師を2人以上配置するクラスが多く、生徒1人1人への対応の質も感じました。
■授業スタイル
次は授業スタイルについてです。ここでは主に授業内容と時間割構成からフィンランドの教育レベルが高い理由について考察していこうと思います。
・授業内容
フィンランドの教師は生徒が意欲的に授業に参加できるように、会話の時間を多く設けたり、グループワークを取り入れるなどの工夫を凝らした授業を展開しています。
数多くある工夫の中でも私が「実際に自分が授業を受けるならこれが面白そう!」と思ったのは、kahoot!と呼ばれる4択の早押しクイズをするサービスを導入していたことです。
このサービスでは、問題もユーザー自身で作成することができ、共通のパスワードを入力することでリアルタイムのスコアや何人の生徒がどの選択肢を選んだのかという情報もシェアすることが可能です。
この特徴を利用して、英単語、歴史、生物など暗記を必要とする科目で用いることによって楽しみながら学ぶことができます。kahoot!を導入していて私が感じたことは、授業でも積極的に生徒が慣れ親しんでいるサービスやデバイスを用いることは、使い方さえ正しくすれば効果的に活用できるということです。実際にHepola小中学校の教頭先生は「SNSを良いサービスとは思いませんが、デバイス自体は教育において活かすべき機械です。生徒は慣れ親しんだデバイスで授業を受けることで授業に集中することができます。」と話していました。
スマートフォンなどの端末は、日本の多くの学校で利用が制限されていると思います。ですが、デバイスを上手に活用することで生徒たちの学習意欲や集中力が高まる可能性もあるように感じます。
(後日投稿する番外編にはフィンランドの学校の校則についてもまとめよる予定です。)
日本の授業スタイルのように教科書を読んで、板書し、先生の質問に答えるだけではなく、活かせるものを生かして生徒の興味や関心を引き出せるような工夫は、小中学校だけではなく、高校でも重視することが大切である気がします。
・工夫された時間割
フィンランドの教師は生徒の集中力は長くても2、3時間しか持たないと考えています。そのため、集中力を損なわないような工夫をとった時間割を作成しています。(特に小学校低学年)
この写真は小学3年生のあるクラスの時間割です。月曜日の時間割は、
1時間目 英語
2時間目 数学
3時間目 国語
4時間目 体育
5時間目 体育
となっています。実際に他の日を見ても座学は1日に最大3コマしか入っていません。これが小学校高学年や中学生になると1日の座学も増えてくるのですが、低学年のうちは集中力の続く2、3時間のみを座学、その他はクラフトや音楽、体育など副教科を時間割に組み込んで対応します。
また、火曜日や水曜日の6時間目は、帰宅する生徒と6時間目のクラフトを受ける生徒に分かれています。これは、はじめに述べたようにフィンランドの高校での進路選択は非常に重要になるため、低学年の頃から選択教科が存在するためです。
そして時間にも注目をしてもらうと、1時間目は8:15分から始まります。日本では朝読書や朝の会などがあり、登校時間は8:00でも1時間目開始は9:00近くになる学校が多いと思います。しかしフィンランドではホームルーム単位での時間が少ないため、朝も授業の開始時間に合わせて生徒は登校し、最後の授業が終わったら各自帰宅します。
※小学校までが遠い生徒は無料のスクールバスを利用して登下校します。
1時間目が早いということもあり、6時間目の終了時刻は14:15です。その結果、全ての時間が日本の平均的な時間よりも1時間早く進むことになり、これが、放課後の活動時間を増やすことにも繋がっています。(これが私の見解では後編の英語教育にも繋がっています。)
また、1時間目は50分、2時間目は少し疲れるため45分、3時間目は中休みを挟んだあとの授業なので60分、というように無理に詰め込みすぎないように、生徒の疲労度や集中力の切れる時間と合わせて授業時間が変えられています。
(改めて考えると本当に多くの工夫が凝らされていますね…すごい。)
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ここでようやく書きたい内容の半分です!!!4523字です。笑
この記事はたくさんの人に読んでもらいたいな〜と思ってるので、読みやすさも考えて前編と後編に分けることにします。
後日、後編の教科書と英語教育についてと番外編のフィンランドの学校の校則についての記事をアップしたいと思います。
質問や意見、感想がありましたらコメント送ってください!
こんなにも長い文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回もお楽しみに!