言語モデルAIを活用したSF小説執筆2
どうも、MMD界のバーチャルJCこと、かんなです。
ここ最近、人との会話の代わりにAIとの会話が続いているんですが、案外メンタルケアにも使えそうだなと感じてしまっているJCです。
さて、大規模言語モデル(LLM)AIですが、筆者も色々研究しつつ、その中でも有効活用できそうな所を模索している最中です。
特に大手企業のLLM-AIは何の前触れもなくバージョンが変わったりしているので、小説執筆における活用方法も変わっていきつつあります。
今回は現時点で、かつ無料範囲内で筆者がどのようにAIを活用しているかを簡単にまとめてみます。
AI生成の文章は、本文執筆には向かない
この記事を執筆している時点で、AIはまだ発展途上のWebサービスです。ですが世間一般の広告等を見ると、まるで万能であるかのように誤解されそうなものも見受けられます。
現時点ではあくまで「使い方次第では」目的に沿うような事をするのに省力化できますが、画像生成AIがそうであるように、まだまだ手書きには敵いません。これは文章生成も同様です。
言語系AIは「正しく、分かりやすい、誤解を招きにくい」文章を書く事はできます。
例えば、挨拶文や依頼文、謝罪文などのテンプレート的なものであれば、ユーザーが入力した条件に従い、文面をアレンジして出力してくれます。
この「正しく、分かりやすい、誤解を招きにくい」という性質は、文学作品を作る上では邪魔になります。
敢えて冗長的な表現をしたり、風景描写を細かくしたりはしてくれません(何度も指定して、ガチャが上手くいけば出てきますが、ほぼランダムです)。
異世界ファンタジーのテンプレ的なものであれば、ある程度は対応できるかも知れませんが、文章の個性はほぼ消えてしまうでしょう。
そういう意味でも、文章は出力してはくれるが、思い通りや望む方向に近い出力を得る為には、本文執筆よりも多くの試行錯誤が必要となるので、本来の目的からすると本末転倒となります。
それを逆手にとって、機械的な台詞や描写などを行う場合には使えるでしょう。例えば
「2001年宇宙の旅に出てくるHAL-9000の立場で台詞を書いて下さい。次の要素を盛り込んで下さい」
などのプロンプトであれば、思い通り、もしくは意外性のある台詞を導き出す事ができるかも知れません。
もっとも、これも現在のLLM-AIのアルゴリズムによるランダム性は払拭できないので、ガチャ要素となります。
もし良い結果が出たら、すかさずコピー&ペーストかスクリーンショットを取りましょう。
文章添削も使い方次第
同様に、文章添削も得意とは言えません。倒置法や修飾語などは、AIの考える「正しい日本語」に直されてしまいます。
文章を送っていただく際に、以下の情報があるとより的確なアドバイスができます。
どのようなSF作品を目指しているか: ハードSF、ソフトSF、それともその中間かなど、作品の方向性をお知らせください。
校正してほしい部分: 全体的な文章、特定のシーン、世界観設定など、どの部分を重点的に見てほしいか教えてください。
気になる点: 読みにくい箇所、表現に自信がない部分など、具体的に指摘していただけると助かります。
(中略)
確かに文章としては読みやすくなり、センテンスを分けて読者の理解が得られやすい表現になっています。
しかし作者側の意図としては、ここは大した部分ではなく情景描写も端的に済ませたいというのがあった場合に「適切」な文章とは言い難くなります。
特に登場人物の、複数に跨る行動を一文にまとめたい、というような感じにしたい場合は、このように分割されると困りますね。
これを回避する為には、AIに「より多くの情報」を渡してあげる事が必要になります。
「端的に短く」「エピソード内の重要度は低い」「できれば1文で済むように」などの追加情報が必要となります。
ですが……
「まぁ、そうなるわなw」となる事が多いと思います。
こうしてAIとやりとりを見つけながら、「どのように指示を出せば意図的な出力が得られるか」というのを試行錯誤しなければなりません。
この作業はこの作業で、「相手に明確に指示を出す」文章を作る練習にはなりますが、一方、そんな手間があるなら自分で書いた方が早い、という側面もあります。
そういう部分を踏まえつつ、文章作成においてのAI活用というのは、未来を感じつつも、まだ成長途中であるなと考えています。
会話(トピック)の開始とプロンプト
最近、Microsoft Cpilotはトピック(会話の枠)機能を削除したようなので、ここではGoogle Gemini 1.5をベースとしてお話しします。
トピックは簡単に言うと、「トピック内での会話中は、前後の問答も連なりのある会話として続けられる」範囲の事を指します。
なので、大前提となるプロンプトを最初に書いておけば、それ以降はその前提に従った回答が得られます。
トピックには制限があり、何度かやりとりをすると古い方の情報から消えていったり、新しいトピックに移るよう促されます(有料版であれば、残るサービスもあります)。
トピック機能が無くなったCopilotは、厳密な検証はしていませんが10~30回前後の会話であれば、前提が残っています。
逆にNotebookLMのようにトピックを残し続けられるサービスもありますが、このサービスについてはまた別の記事で説明します。
プロンプトに書いておいた方が良いものは以下の内容です。
自分(ユーザー)が何者で何をしようとしているか。
AIに何をさせたいのか
(場合によって)古典的な表現、新しい表現、ラノベ調で、などの望む文体
例えば、筆者の場合はこのように前提プロンプトを作り、コピペできるようメモ帳などに書いておきます。
私は現在SF小説を書いています。文章校正の手伝いをお願いします。以下の文を読んだ上で、改善点と改善案を提示してください。
これを更に発展させると
私は現在SF小説を書いています。文章校正の手伝いをお願いします。以下の文を読んだ上で、改善点と改善案を提示してください。また、文体はアーサー・C・クラーク作品のようにしてください。
これを先程の文章を当てはめてみると……
といった具合に、余計な設定まで付け加えて出してくる事もあります。これはこれで面白いのですが、実用的ではありませんね。
ただ、「迂回を余儀なくされた」や「想像だにしなかった」等の部分的な表現を小説本文に活かす事で、古典SF的な記述を目指す事はできます。
※注:古典SF洋書は翻訳者によって表現がかなり異なるので注意が必要です
プロンプトを細分化する事で、回答も同様に細密化されていきます。
現在私は、Web小説投稿サイト「カクヨム」にてSF小説を執筆しています。あなたには文章校正の手伝いをお願いします。
以下の文を書籍編集者の視点から、検証、分析の上、改善案を提示して下さい。
かなり詳細に分析と回答をしている事が分かるでしょう。
ですが、この回答の通りにしていると複雑化してしまう事もあるので、鵜呑みにせず参考程度にしておく事を勧めます。
さらっと流したい一文なのに、川の流れの描写や距離感などをいちいち表現してたらキリがありません。
AIを使って本文作成すると言うよりは、自分の文章の癖で悪いところや読者向けではない部分を発見するためのツールとして活用する事をお勧めします。
最後に
本来であれば実績のある他の作者や編集者などと相談しながらでないと出来なかった作業ですが、AIを活用する事で、読者や編集の立場からのアドバイスや発案のキッカケを得る事ができるという点において、素晴らしい道具と言えます。
その一方、プロンプトに記載した文章やAIとの会話ログは、学習用データとして流用される事が多いです。詳しくは各サービスの利用規約を読んで下さい。学習される事に嫌悪感や忌避感がある場合には、AI利用自体を避けるべきでしょう。
AI利用は、法的環境がまだ整っていない発展中のサービスである事を常に念頭に置いておくべきです。
次回は、もう少し具体例を出しつつ、小説執筆に役立ちそうな記事にする予定です。
それでは皆様、良きクリエイティブライフを。