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小説投稿サイト『カクヨム』での生存戦略の考察

 どうも、AIとの会話を重ねるにつれ、人間同士の会話では行間や空気を読んでくれますが、AIは何度も同じ前提を話さなければいけない、という事に気付き、やはり人間は高性能なのだなと、沸々と考えているJCです。

 まずは最初に諸注意を。
 この文献は筆者の主観と直感に依る所が大きく、学術的資料としては成り立ちません。他文献を参照したりと、より科学的に検証をした上でご利用ください。あくまでも参考程度の話です。


前書

 数ある小説投稿サイトの中でも、カクヨムは比較的若いサイトではあります。独立系であり、数多く書籍化・アニメ化がされている『小説家になろう』を始め、出版社系が運営している『アルファポリス』などもあり、それぞれに特色があります。
 カクヨムの場合は、角川系列とはてなブログのシステムを使用した投稿サイトであり、UIや縦書きの美しさに定評があるサイトです。

 昨今のヒットした書籍、およびアニメ作品は、こうしたサイトから生まれでたものが多く、商業展開へ向けての登竜門となっています。
 特にカクヨムは、連載投稿している間でも広告収入を得られるシステムがあり、作品発表にも(些細ではありますが)まったくの無駄となる行為とはなりません。もちろん、広告収入なので誰かが小説・エピソードを見ない限り意味がありませんので、いかに読者を増やすかがポイントとなります。

 動画クリエイターなら再生数やいいね数、マイリスト・ブックマーク数などは気にしないわけにはいかない数字であり、文章系クリエイターなら閲覧数やいいね数、ブックマークは同様のものでしょう。
 数字は結果の一つであるので、当然ではありますが、気にしすぎると迷走したり、メンタルケアに影響が出たりします。このあたりが、クリエイターに綱渡り状態を強いる要因ですね。

 程よく気にする、というのは難しい事ですが、それなりに気にしつつ、対策を練り、実行することで緩和されたり、気持ちに余裕ができたりします。そうやって意欲を維持しないと、クリエイティブ活動を維持するのは、なかなか難しいでしょう。

 では、本題に入っていきます。

リサーチ1:人気ジャンル

 各種小説投稿サービスサイトでは、それぞれ人気ジャンルに偏りがある傾向が見られます。つまり、読者はどのジャンルを読むかによって、サイト自体を選択する傾向が見られます。
 カクヨムの週間ランキングと月間ランキングを参照にしつつ、筆者の観測によると、カクヨムでは以下のようなジャンルが人気であると、現時点で判断しています。

  1. 異世界ファンタジー

  2. 現代ファンタジー

  3. ラブコメ

  4. 恋愛

  5. SF(VRMMO)

 このように、運営会社である角川系列の色が強く反映されているように見えます。多くの出版・アニメ化といった実績と、自身も商業化を目指したい作家の方が多く集まっているのだと思われます。

 異世界ファンタジーの多くは転生・転移者が主人公である傾向が強くあります。これは商業科実績もあり、昨今でのアニメでもよく見る題材です。
 現代ファンタジーといっても、ダンジョン物だったりするので、本質的にはゲームをモチーフとしたジャンルです。
 ラブコメ、恋愛はそのままで、学園モノ、特に高校生活などが目立ちます。
 SFもありますが、こちらも現代ファンタジーとの区別が難しく、ジャンルとしてはSFですが、VRMMO(仮想現実大規模マルチプレイ)ゲームを題材としたものが多いです。

リサーチ2:スター数、PV等の数値化

 カクヨムではシステム上、『★』数(ここではスター数と記述)を前面に出した評価システムを採用しています。
 スター数は、一人の読者あたり、最大3つまで付ける事ができます。また、応援コメントを書いてもらう事で、スター数にも反映されます。
 このスター数によって、多くの読者を魅了していると見られるので、作品そのものの評価と同等と意味付けられているようです。
 一節によると、このスター数が1万前後で商業化の可能性が高くなる、と言われています。

 カクヨムには 『カクヨムNEXT』という、商業化された小説も読めるサービスが展開されています。これはカクヨムで実績のある作者と契約を交わし、NEXTでの掲載や書籍化がされている作品を閲覧する場所です。
 上記の一方、NEXT掲載作品でもスターの数が2~3桁のものも多くあるので、必ずしも作者の実力や人気を獲得できる数値というわけではないようです。

 一方、読者ユーザーからは不透明な数値として、PV(プレビュー数)というのがあります。
 これは作品投稿者側で見れる数値で、作品毎ではなくエピソード(話数)毎に加算される数値です。
 一人が1エピソードを読んで+1。一人が3エピソードを読んだら+3となります。
 これは投稿者側として、実質的な評価は得られずとも、ひとまず読んだ(アクセスして貰った)という実績となる数値です。

 他投稿者のPV数は自主公開でしか知りえませんので、基本的にはスター数での競争となります。

リサーチ3:ランキングシステム

 カクヨムでのランキングはスター数ではなく、恐らくですがPV数による読者動員によってランク付けされているようです。上位に居てもスター数が3桁だったりしますし、ランクが低くてもスター数が多い場合も稀にあります。
 これは連載や新作において、リアルタイムで「どれが一番読まれているか」というものを表示しているのでしょう。
 ですので、日間、週間、月間、累計でそれぞれランキングの様相が、やや異なります。

 ランキングページは、デフォルトでは総合・週間ランキングが表示される設定であり、1ページに1~100位までを一挙に掲載しています。
 読者がアクションを起こす事で、各ジャンルのランキングが表示されます。
 投稿者としては、100位以内に入る事を中間目標とし、段階的に300位以内、200位以内と目指していくのが順当かもしれません。

 スター数がまったく無意味かと言うと、ランキングには直接反映されないようですが、エピソード投稿をした際に、既得のリピーター(継続読者)としての見込みが、予め感じ取れるでしょう。 予想数値を試算する根拠にもなり得ます。

リサーチ4:読者の獲得(導線)

 投稿者にとって、やはり一番魅力的なのはサイトトップページでしょう。

  1. 小説を探す

  2. 注目の作品

  3. 累計ランキング

  4. 最近読んだ作品

  5. 新着おすすめレビュー作品

  6. 新着小説

 この順で見られるようデザインされています(ブラウザ版の場合)。
 読者層によって異なるでしょうが、一番目立つのは「注目の作品」であり、この部分はページをスクロールせずとも視える位置にあります。
 この「注目の作品」がどのようなロジックで出力されているのかは分かりません。ある程度のランダム性があるようにも思えます。スター数でも無さそうです。2桁スター数も表示されます。
 恐らくですが、PV数と時間毎に読者が集中している作品を出しているように推測しています。

 投稿者側としては、累計総合ランキングで上位を取るというのは相当な努力と魅力、時間が掛かることなので、実質的には機能しないと見た方が良いでしょう。

「新着小説」は、8作品の掲示であり、分単位で流れてしまうので、競合が少ない時間帯に投稿する事が推奨されます。また、アクティブユーザーが居ない時間帯に投稿しても意味が無いので、比較的アクティブが多い時間、かつ新着から押し流されない時間と分を指定しての投稿となります。
 これは長い調査とデータマイニングが必要で、そんなリソースを割くくらいなら、自作品を書いた方が良いと判断する方も多いのではないでしょうか。

 そういう意味では「新着おすすめレビュー作品」が投稿者側もメリットが大きいブロックですが、これは読者サイドのアクション次第なので、投稿者側ではコントロールできません。
 また、スクロールしないと見えない場所なので、導線としては若干弱まります。

 こうなると、サイト内での導線は望み薄ではあります。運良くオススメに乗るか、タイミング良く新着から辿ってくれる読者をつかまえるかという事になります。

 確かにサイトトップに載れば大きいですが、結論としては自力で外部サイト(ブログや記事掲載サービス等)や短文SNS(X(Twitter)やBluesky等)を利用して、半定期的に、そして地道に広報活動を行うのが、一番確実であります。

考察

 どのサイトや文献でも言われていますが、良い作品だから読まれるという事ではなく、最初は必ず「存在を知る」ことから始まります。観測できないものは存在しないのと同義です。
 その「存在」を知らせるのは、おのずと投稿者自身のアクションに依ります。しかも、一度告知を出したからといって、自動的に広まる事もありません。むしろ、初回の告知で存在を伝える事ができたなら、かなりの幸運を掴んだという事です。つまりは再現性が無いと言えます。

 これらの情報を元に、広報(生存)戦略を組み立ててみましょう。

 まず、基本的な前提条件を2つほどパターンを組みます。カクヨムとX(Twitter)を新規アカウントを造って新人としてデビューする場合、カクヨムでは新規アカウント、既存の個人アカウントを利用する方法。この2つの他にも既にカクヨムで活動している方のパターンもありますが、ここでは上記2つのパターンを想定します。

 まず、作品投稿サイトもSNSも新規アカウントで運用する場合は、以下の段階を踏む事が想定されます。

  • まず、作品投稿サイトでは、1話のみではなく序盤部分が掴める複数話(2~3話)あたりを事前に投稿しておく。これは、1エピソードでは雰囲気は掴めるものの、作品がどの方向に向かっているのかを読者に読んでもらう為、また継続して読んでもらえるかどうかのチェックも行えます。

  • 次に、SNSにて告知をする前に、SNS内検索やWeb検索、キーワード・タグ検索などで、似たようなジャンルを創っている投稿者を探します。投稿予定サイトと別なサイトに掲載している人でも良いですが、割合として同サイトを使っている人をフォローしていきます。
    同時並行で、読者層と思われるアカウントもフォローしていきます。

  • SNS等で告知をした場合、おおよそ何かしらの反応(見る・いいね・リプライ)の事をエンゲージメントと言います。閲覧しただけのことをインプレッションと呼ぶ事が多いです。インプレッションに対し、エンゲージメントはおおよそ0.5%~1.5%の数値が平均的なものです。
    つまり、100人が見た時に、ようやく一人がリンク先を見てくれると見込まれる人数となります。

  • それを踏まえ、10人程度の読者を確保しようとした場合、最低でもフォロアーの必要数が1,000以上という計算になります。フォローバック率はまちまちですが、多く見積もって1割とした場合、さらに多くのフォロー行動をしなければなりませんが、これは現実的ではありません。

  • X(Twitter)を始めとしたSNSでは、フォロー数>フォロアー数の比率が極端になると、アカウントの評価自体が下がり、何かを告知してもタイムライン上に表示される割合が減ってしまいます。ですので、段階的にバランスを取りつつ、中間目標として1,000フォロアーを目指す、という事になります。

  • 現状では、1,000フォロアーというのは壁が高く、遠目のゴールではありますが、告知行動以外にもフォロアーを地道に増やす方法としては、日々検索を掛け、フォローバックの高そうなアカウントを選別しつつ、1日に数アカウントずつフォローをしていく、という形で積み上げて行きます。

  • X(Twitter)では、そういったユーザー行動を記録しており、傾向を反映させたタイムラインを表示するようになっているので、ある程度フォロー数が重なっていくと、検索せずとも「おすすめ」タイムラインに候補となるアカウントの発言が見れるようになります。

  • こうして地道にフォロアー数を確保した後、ようやく作品の告知をし始めます。なので、作品投稿直後の告知は一旦控え、拡散の確率を増やしてから、告知行動を行います。

  • カクヨムでは、作品だけでなく「近況ノート」というブログ掲載機能もあるので、活用します。少なくとも掲載時に同時並行して、近況ノートも更新した方が良いでしょう。こうする事で、このアカウントはアクティブである、という認識を読者層へ与える事ができます。

  • 作品掲載は、毎日行えば効果はそれなりに求めますが、無理して毎日更新する必要はありません。労力・時間との兼ね合いを考えながら行ってください。週一程度のエピソード更新でも、それなりに効果はでるでしょう。
    逆に無理して毎日更新しても、労力の割には効果が望めない場合も多々あります。この辺りは体感で学んでいくしかありません。

  • 作品(エピソード)はできるだけ多く、事前にストックしておく事を強く薦めます。できれば10~20エピソードほどを校正し終えてから、最初の話を掲載する感覚で居たほうが、リスクヘッジ(危機回避)を狙えます。

  • SNSでのフォローとフォロアー確保、作品の定期更新、ブログなどの活用などを経て、繰り返し、日々の積み重ねを行う事で、順次ランキング順位が、ほぼ確実に上がって行きます。これはジャンルによって異なりますが、読者を1人確保できる確率が、繰り返す度に微増していきます。

  • それでも読者が着かない場合は、作品(エピソード)を見直します。恐らく可読性が低い、独りよがり、説明不足など、内容自体に問題があると認識し、改訂を行います。できれば友人などに読んでもらう、AIに相談するなどで、作品自体の改善を目指します。

  • 以降、繰り返しの作業となります。

 そして、既存のSNSアカウントを運用する場合でもほぼ同じ流れになります。既に獲得済みのフォロアーが居るというのはメリットではありますが、小説読者層かどうかで話は変わります。
 元々読者層で繋がっているアカウントであれば、スタートダッシュが図れますが、そうでない場合は、上記同様、フォロアー数ゼロというところからのスタートと同義になります。

 こうして段階と手段を確立する事で、望む形かどうかは分かりませんが、着実にファンを増やす事は可能かと思われます。

まとめ

 筆者は現在、カクヨムにおいて比較的マイナーなジャンルであるSF小説を連載しており、VRMMO系の流行ったものではなく古典SF風といった、比較的高年齢層を狙ったものです。なので数字自体の実績は薄いものの、それなりに戦略立てて地道に活動しています。

  • カクヨムではトップページからの誘導は、あまり望めない(期待しない)

  • 投稿時間の厳選も一つの戦術ではあるが、体感で学ぶしかない

  • 基本的には日々の活動と累積が結果を導く

  • 話数(エピソード)は事前にストックしてから活動開始

  • 明確な数値目標を、無理のない現実的な数値を算出する

 これらを行う事で、地道ではありますが、苦労して生み出した作品を活かす事、そしてモチベーションとメンタルケアに繋がる可能性も維持できます。
 作品投稿サイトによって特色が異なり、方針も修正する必要はありますが、基本的な流れとしては、これまで述べてきたような事になるかと考えています。

 以上です。この記事の読者の方への糧となる事を祈りつつ……。

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かんな@バーチャルJC
どこにでも居るバーチャルJC MMDユーザーの一人。 MMDアニメーター、動画制作・編集、VTuber関連制作などを行っているただのJC。