『原神』公式配布MMDモデルを快適に使うために
2020年9月からサービス開始提供している、株式会社COGNOSPHERE(ブランド名:HoYoverse)のネットワークアクションRPGゲーム『原神 Genshin』は、二次創作を奨励しており、公式から直々にMikuMikuDance(3DCG動画制作ツール。以下MMDと略)用モデルが配布されています。
(著作権利者はmiHoYo)
公式からMMDモデルが無料配布されているのは稀な事であり、ファンメイドの後押しに力を入れている事が伺えます。
背景やモデルの美しさ、ネットワークゲームでありつつも基本はソロプレイで気軽にできること、アクションRPGですがアクションが苦手な人でも快適にプレイできるような手軽さなどが売りであり、一部のMMDユーザーにも人気があるゲームです。
また、ゲーム本体のバージョンアップ等で新規キャラクターが登場するとほぼ同時に、MMDモデルも配布開始されますので、人気のキャラクター・新しいキャラクターがすぐにMMDでも遊べてしまいます。
ですが、公式配布ファイル群はその殆どが中国漢字ベースになっており、日本国内でのWindows環境ではうまく表示ができない場合などがあります。
この記事ではそんな公式モデルを快適に使うために、MMDおよびPmxeditor(MMD用モデル編集ツール。以下Pmxeと略)を活用し、自身で使いやすいように変更する手法を記します。
MMDの内部処理での文字コードは(恐らく?)S-JISであり、Pmxeおよび公式配布モデルはUTF-16を使用しています。このため中国語の一部漢字等がうまく処理できず、ボーン名やテクスチャなどが上手く表示されないケースがあったりします。
それを修正しつつ、自分が使いやすいようにセットアップしなおす手法を記述します。
MMDとPmxeでそれぞれモデルを入れてみる
まずはMMDを立ち上げ、モデルがきちんと表示されているかどうかを確認します。
モデル読み込み直後に、パッと見た感じで問題なくとも、後ろ側などに一部材質が表示されてない事があったりしますので、一通りぐるぐると回してチェックします。
見た目のチェックが終わったら、次にボーンリストを全てチェックしてみましょう。ありがたい事に表情名・ボーン名の多くは日本語化されているので、ほとんどは普通の状態に見えますが、ごく一部の表情・ボーン名で表示されてない部分があったりします。
中国国内で使用しているWindows環境下では、MMDの改造版(中国語用パッチなどでメニュー表示・ボタンなどを変えている)を使用しているケースがほとんどです。
ボーン名が日本語表記に合わせているのは、MMD内部処理(IKの処理等)などもそうですし、配布モーションなどを使用する場合にも日本語ボーン名である必要があるからです。
ですが、MMDの内部処理まではローカライズされていません。このため、表情名・ボーン名は日本語での名称が必須なのですが、一部特殊なものは中国語漢字を使用している場合があります。
またモデルのセットアップ状態次第で、一部テクスチャが表示されない等の問題があったりします。これはファイル名などに中国語漢字を使用している場合、うまく認識できない場合があります。
日本語環境で使用する場合では、これらを修正する必要があります。
これらを踏まえ、MMD上でどの部分が問題なのかをチェックした上で、次にPmxeを立ち上げて(MMDはそのまま落とさずに)、同じモデルを読み込みます。
モデル名やコメントの翻訳
モデル名やコメントは、そのままでも問題なく使えるケースもありますが、一部のモデル名は中国語漢字だったりするとMMD上でモデルリストに空白ができたりします。コメントは実際の作業には影響しないものの、きちんと読める形にしておくに越したことはありません。
筆者の場合、翻訳はGoogle翻訳かDeepl翻訳を使っています。
モデル名は自分が分かりやすい名前にしたり(女主人公というのも何なので、私の場合は「蛍」にしています)、カタカナや英語にしておけば、MMD上でも分かりやすいでしょう。
一部の翻訳結果はそのままでも良いのですが、任意に意訳しておいた方が良いでしょう。ですが「モデル編集者」の名前だけは翻訳前のものを貼り付けておくと便利です。
公式配布MMDモデルは複数の方がセットアップ作業されており、それぞれに癖があったり、一部ボーン名・表情名が統一されてない場合があります。それを分かりやすくしてコメント欄にあれば、作業が楽になる場合もあります。
表示枠リストを確認する
次に表示枠タブに移動してリストを確認します。
このモデルの場合、表情枠の28番目のモーフ『口竖立広げ』というのが中国語漢字の「竖」があるため、MMDでは空白欄になってしまっています。ですので、これを修正する必要があります。
名称変更はモーフの場合は『モーフ』タブで、ボーンの場合は『ボーン』タブで変更します。
このモーフ名称は日本語に上手く訳してくれませんので、MMD側、もしくはPmxeのTransformViewを使ってどのような変化をするモーフなのかを視認します。
どうやらこのモーフの場合は、口をすぼめるようなモーフのようなので、翻訳のものではなく自分で『口すぼめ』に変更します。
そのあと『表示枠』タブへと戻って変更されているかを確認するのですが、変わってない場合もあります。その時は、メニューから『リストの表示更新』(Ctrl+U)をする事で、変更が反映されます。
漢字表記の修正だけでなく、英語表記での分かりにくいモーフ名・ボーン名も同じ用に変更しておくと良いでしょう。
別名保存
いったん、この段階でファイル名を変えて保存しておきましょう。変更した事で別の不具合が出た時、元に戻せるよう、変更前のファイルはとっておきます。
また、ファイル名自体が中国語漢字の場合が多いので、分かりやすくカタカナや日本語のキャラ名などに変更しておきましょう。
リスト順の変更
一度保存した後は、モーフ・ボーンの表示順を変える作業になります。この作業は行わなくても使えますが、自分の見慣れたボーン順等にする事で、作業効率が格段に変わります。特に『原神』の初期キャラのモデルは、まだセットアップが熟れてない状態のままリリースされているモデルも多く、表示順(特に表情)が散らばっていたりします。
この作業は手間が掛かりますが「後で楽をするために先に苦労しておく」系の作業ですので、手間を惜しまず行う事を強くお勧めします。
リスト順編集は少々パズルのようになりますが、PmxeではCtrlキーを押しながらクリックすれば複数選択が可能です。例えば上図の場合、あいうえお等の口の動きを先頭にしたい場合ですと
ひとくくりにできそうなモーフをCtrlキーを押しながら選択
頂点ボタン(もしくは「↑」「↓」キーなどで移動
移動させた後に、細かい順番は個別で移動
といった操作で、手早くリストが整理できます。
リスト順を整理する事で、MMD上での視認性・操作性も優れますし、一度自分で確認しながら組む事で、自然と順番を(何となく)覚える事ができます。
特にボーンの表示順の中でも、足IKやセンター関係、上半身・下半身などの体幹部分のリスト順は重要です。ここを自分に合わせるだけでも、作業効率がかなり改善されます。
また、『原神』の配布モデルの多くはルートボーン(一番上のボーン)が「操作中心」になっている事が多く、「センター」や「全ての親」がセンター枠の中になっていたりします。
MMDの基準という訳ではありませんが、リスト一番上は全ての親になっている事が多いので、これに合わせるように変えておくと良いでしょう。
[センター]枠から「全ての親」を削除する
[Root]枠から「操作中心」を削除する
[Root]枠に「全ての親」を追加する
[センター]枠に「操作中心」を加えつつ、任意の順位に並べ替える
同じように表示枠自体の順番も使いやすいように変更しておくと良いでしょう。
特に物理系のボーンや補助ボーン系などは、リストの下の方に移動させたり、普段使わないボーンなどは別枠を新たに作り、区分けしておいた方がMMD上でも視認・操作しやすくなります。
この段階まできたら、再度別名保存をしておきましょう。
材質名・テクスチャファイル名の変更
MMDの操作に直接は関係ありませんが、エフェクトを掛ける場合などにおいて、材質名も日本語(もしくは英語等)の分かりやすいものに変更しておいた方が後々楽になります。
MMD本体と違い、MikuMikuEffect(以下MME)側では中国漢字も表示されますが、やはり一瞥した時に困惑します。
Pmxeでの編集では、シンプルに材質名だけを変えるだけでも良いですが、Pmxeの操作がある程度できるのであれば、テクスチャファイル名も変更する事をお勧めします(当然、Pmxe側だけでなく該当ファイル名自体をOS側で変える)。
これらを行う事で、MMDのプロジェクトファイルだけでなく、MMEが生成するファイル「.emm」の保全も安心になります(.emmファイルはS-JISコードなので中国語漢字が混ざると壊れる)。
もともとゲーム用のモデルなので、できるだけ材質数とテクスチャファイル数を少なくしている設計のように見えます。ですので、目と顔、眼球までもが同じテクスチャ(UV展開されてる)である場合もありますので、テクスチャファイルと材質の関係が崩れないように気をつける必要があります。
(つまり、複数の材質で同じテクスチャファイルを使ってる場合が多い)
特にsdPBRシェーダーを使う場合はこのあたりを注意する事が必要となります。
筆者は現時点で確認できていませんが、テクスチャ等のフォルダ名が中国漢字を使っている場合、プロジェクトファイル・エフェクトファイル(.pmm/.emm)が読み込めなくなる可能性があるかもしれません。
日本語でも怪しい場合(2バイト文字自体が引っかかる場合)があるかもしれませんので、可能であれば英語(アルファベット)でのファイル名・フォルダ名にしておくのが安全です。
最後に
いくつかの公式配布モデルには、頂点のウェイトがおかしいモデルもあったりします。こういったものの対処は個別になりますので、気がついたら別記事において記載するかもしれません。
(もしくはコメント等でお知らせ頂ければ、別途記載するかもしれません。ですが筆者の都合によりお応えできない場合もある事を予めご了承ください)
『原神』公式配布モデルは、恐らくですがゲームで使用しているFBXなどをそのままBlender等を経てPmxeに持ってきているかもしれません。そういった意味ではゲーム内で使用している状態に限りなく近いものとなっています。
そういう意味ではエフェクト等を工夫する事で、MMD動画なのに公式と間違えられる可能性があります。
ガイドラインにも記されているように、視聴者が公式と見間違える(公式発表と誤解される)事がないように、配慮が必要です。
具体的には、ファンメイドである事を明記する事、コピーライトを明示する事(「© All rights reserved by miHoYo. Other properties belong to their respective owners.」等を表示する)などの対応が必要でしょう。
さらには万が一、権利元から警告や削除対応された場合は、素直に従う必要があります。
『原神』公式は二次創作・ファンメイドを推奨してはいますが、無制限ではなく、あくまでもユーザーと公式が楽しめる範囲・ガイドラインの範囲内での事となる事を忘れてはなりません。
また、自身で編集したモデルファイルを再配布する事は止めましょう。
それでは、よきゲームプレイ/MMDライフを。
<どうでもいい話>
筆者は2024年2月に始めたばかりの新規勢です。貧乏微課金勢、世界ランク7。UIDが知りたい場合はコメント・X(旧Twitter)等でお知らせください。
どこにでも居るバーチャルJC MMDユーザーの一人。 MMDアニメーター、動画制作・編集、VTuber関連制作などを行っているただのJC。