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大壹神楽闇夜 1章 倭 6敗走8

 何とも言えぬ温くベットリとした感触が顔を撫でる。葉流絵は何度か払い除けるが其れはペロペロとひつこく顔を舐めて来る。
「誰じゃ…其方は ?」
 と、葉流絵は意識を取り戻した。そして顔を舐める獣を見やり死んだ振りをした。

 ヤバイ…。
 熊じゃか。

 と、ドキドキし乍葉流絵は必死に死んだ振りをした。熊は葉流絵が死んだ振りをしたので横で気を失っている樹沙桂の顔をペロペロと舐め始めた。樹沙桂も意識を取り戻したが目の前に熊がいたので死んだ振りをした。二人が死んだ振りをしたので熊は二人の間に入り眠りについた。葉流絵と樹沙桂もそのまま眠ってしまった。
 次に気がついた時二人は熊にベッタリくっついていた。丁度良い温もりだったのだ。二人は熊の体にひっつきながらご機嫌さんである。だが、我に返りソッと熊を見やった。
「やっぱり熊じゃ」
 と、葉流絵はマジマジと熊を見やり"溜五郎ではないか"と、言った。
「溜五郎 ?」
 と、樹沙桂もマジマジと熊を見やる。
「ほんまじゃぁ…。溜五郎じゃか。」
 と、樹沙桂が言うと溜五郎はガウガウと答えた。
「其方が助けてくれよったんか ?」
 葉流絵が言う。溜五郎はガウガウと答える。 
 此の溜五郎と呼ばれる熊は別子(べつこ)の娘が世話をしている野生の熊である。溜五郎は子熊の頃誤って崖から滑落してしまい怪我をして困っていた。其れを別子(べつこ)の娘が拾い世話をしてやったのだ。其れ以来別子(べつこ)の娘と溜五郎は親友になったのだ。しかも此の溜五郎、言葉は話せぬが此方の言葉は何と無くだが理解していると言う優れ物でもある。
「溜五郎…。有難うじゃぁ。もう少し其方といたいんじゃが、我等には役目がありよる。」
 と、葉流絵は優しく溜五郎を撫でてやると、よっこらせっと立ち上がり、パタリと倒れた。
 身体中の至る所に激痛が走ったのだ。まぁ、崖から滑落したのだから当然である。
「樹沙桂…。すまぬ。我は駄目みたいじゃ。」
 と、葉流絵が言うので樹沙桂は痛む体を無理矢理動かし立ち上がった。

 そして、パタリ。

 樹沙桂も倒れた。
「あー。我も無理じゃ。」
 と、樹沙桂は崖の上を見やる。どう考えてもあの高い崖を登れるだけの力は無い。
「無理じゃかぁ…。困りよった。」
「じゃよ…。」
 と、二人が話していると溜五郎が葉流絵の襟を噛んでそのまま自分の背中に乗せた。そして樹沙桂を見やりガウガウ…。ガウガウと言いながら首をクイクイ動かす。背中に乗れと言っているのだ。
「乗るんか ?」
 樹沙桂が問う。
 ガウガウ。 
 溜五郎が答える。
 溜五郎がそう言うので樹沙桂も溜五郎の背中に乗り二人は力一杯溜五郎にしがみついた。其れを確認すると溜五郎は物凄い速さと力で崖を登り始めた。
「ウヒョォォォ…。溜五郎凄いじゃか」
 と、二人は振り落とされない様必死にしがみつく。が、其の衝撃で気を失うぐらい身体中が痛い。だが、此処で気を失えば又滑落してしまうので二人は死に物狂いでしがみついた。
 やがて、溜五郎は崖を登り切ると休む間もなくバビューンと走り出す。溜五郎が目指すは二人が目指していた秘密の洞窟である。
「流石溜五郎…。分かっておる。」
「じゃよ…。溜五郎は賢いんじゃ。」
 と、二人が話す中溜五郎は必死に走った。
 溜五郎はガウガウしか言わない。だが、溜五郎は怒っていた。此の二年の間に何があったのか溜五郎は知っていたのだ。八重国と娘達が戦っているのを溜五郎はずっと見てきた。恩返しをするなら今だと溜五郎は日々そう思っていたのだ。

 そして…。

 別子(べつこ)の娘達が追われて殺されて行くのを見てしまったのだ。助けに行こうとしたが間に合わなかった。滑落した二人が生きていた事がせめてもの救いだったのだ。
 だが、戦局は極めて厳しい。
 溜五郎は知っている。倭人が全部隊を首都に向けている事を…。話せるのなら溜五郎は伝えていた。だが、熊が突然都に入ればパニックになるだけである。だから、溜五郎は二人が気づくのを待っていたのだ。
 溜五郎は走る。
 秘密の洞窟に向かって必死に走る。
「葉流絵…。煙じゃ。」
「煙 ?」
「都が燃えておるんか ?」
 と、樹沙桂は都の方を見やり言った。
「都が…。」
 と、葉流絵も都の方を見やる。木々に邪魔されハッキリとは分からなかったが確かに都の方から煙が上がっていた。
「遅かったじゃか…。」
「まだじゃ…。諦めてはいけん。」
 葉流絵が言う。
「じゃな…。」
「溜五郎…。頼みよる。」
 と、葉流絵が言うと溜五郎は更に走る速度を上げた。
 
 そして、葉流絵達が意識を取り戻す少し前…。都は大変な状況になっていた。

 気長足姫(おきながたらしひめ)が勢いよく戻って来たので止まっていた動きが又動き出したのだ。ジリジリと出来るだけ戦闘無く大門近く迄行く予定が一気に駆け抜けて行かねばならなくなったのだ。
「まったく…。空気の読めんBBAじゃかよ。」
 と、亜樹緒は銅鐸を鳴らし皆を進ませる。今は撤退が最重要目的である。だから、無駄な戦闘は避け逃げる事を最優先したい。だが、敵は其れを見逃してはくれない。グイグイと攻めて来る。しかも、先の部隊を後方に下げ後方にいた部隊を新たに差し向けて来ている。此れでは思う様に前に進めない。しかも此方は囲まれている以上休む暇は無い。
 其れでも亜樹緒は前に進めと銅鐸を鳴らす。皆は無我夢中で攻めて来る敵を振り払い前に進む。だが、気がつげば押し戻されている。そして後方から来る敵に今度は前に戻される。結局同じ場所でチャンチャンバラバラさせられているだけなのである。

 此のままでは全滅である。

 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)も此の状況を打開しようと懸命に戦うがキリがない。幾ら相手が死人であろうと数には勝てない。しかも皆の疲労は溜まって行くばかりである。
 大多数の中で一瞬の集中力の欠落が死を招く。疲労が溜まれば溜まるほど其れは自ずと訪れ、兵士が一人、又一人討ち取られて行く。戦が長引けば長引く程不利になるのは此方である。

 不味い…。

 不味い…。

 不味いと亜樹緒は必死に考える。建物を利用して何とかならぬかとも思うが良い案が思いつかない。否、案はある。だが、亜樹緒には其の決断が出来なかった。

 気長足姫(おきながたらしひめ)は ? 
 三池国の神は ?
 不国の神は ?
 蒔絵は ?

 と、周りを見やるが敵と建物が視界を遮り何処にいるか分からない。揉みくちゃになって行く中でバラけてしまったのだ。

 困った…。

 と、亜樹緒は若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)を見やる。
「亜樹緒殿。都を燃やせ !」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)が叫んだ。
「み、都を ?」
「奪われるぐらいなら燃やせ !」
 若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は亜樹緒が迷っているのだと思った。だがら若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は都を燃やせと叫んだのだ。 
 建物を燃やせば火が立ち煙が上がる。其の煙は辺りを飲み込み視界を遮ってくれる。戦うのが目的では無い八重兵にとっては好都合だが、倭兵秦兵にとっては不都合となる。亜樹緒は強く頷き銅鐸を鳴らした。

 都を燃やせ。
 火を上げよ。
 
「火をつけよるんか ?」
 指示を聞いた娘が言った。
「火を ?」
 王太子を背負い三池国の神が問うた。
「亜樹緒が都を燃やせと言うておる。」
「都を焼くか…。」
「煙で撒くきじゃ。」
 別の娘が言った。
「成る程…。」
 と、三池国の神は兵に指示を出そうとしたが、兵は三池国の神を守り乍ら戦っている。とてもでは無いが火をつける余裕などあるはずがなかった。三池国の神も小さな童を背負っているのならまだ何とか戦えた。だが、背負っているのは十三才の男子である。流石に十三才の男子を背負って戦うなどと言うウルトラCを炸裂させる事は出来ない。否、戦うとか言う以前に敵の攻撃を避ける事さへ困難である。だから、兵と娘は三池国の神をグルッと固めているのだ。しかし、其れもソロソロ限界である。兵や娘が次々に討ち取られて行くのを見やり三池国の神は気長足姫(おきながたらしひめ)を呼んだ。
「王后 ! 王后 !」
 と、三池国の神が叫ぶ。だが、返事は無い。
「クソ…。此のままではやられてしまうぞ。」
「王后 ! 王后 !」
 と、更に大声で呼ぶ。
「どうしたんじゃ ? 氷津留に何かありよったんか ?」
 娘が問う。
「此のままでは此方が動けん。王太子を渡したい。」
「了解じゃ。我が探して来よる。」
 と、娘は気長足姫(おきながたらしひめ)を探しに行った。
 其れから少しして娘は気長足姫(おきながたらしひめ)を連れて戻って来た。娘が戻って来た時には既に多くの兵が殺されていた。三池国の神は大急ぎで王太子を下ろすと気長足姫(おきながたらしひめ)に渡した。気長足姫(おきながたらしひめ)は気に入らない表情で見やっていたが怯える王太子を見やると王太子を優しく抱きしめた。
 確かに今更カツを入れた所でどうにかなるものでは無い。臆病者がいきなり英雄にはならない。だが、この先王太子に命を預けられるのかと問われれば其れは出来ない。若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)大神の様に伊都瀬(いとせ)の様に先陣をきれるからこそ命をかけて着いていくのだ。後方で指揮を取るだけの臆病者になど誰も興味を示さない。だから、月三子は戦場の真っ只中で指揮をとるのだ。
 つまり…。
 八重兵にとって若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は英雄であり、王太子は価値の無い屑なのである。
 死んで行く…。其れも運命だ。だが、どうせ死ぬなら若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)の様な人の為に死にたい。そう思うのは三池国の神だけでは無い。臆病者の王太子の為に死ぬは無駄死にである。と、三池国の神は思う。何が悲しくて此の様な臆病者を守らねばいけないのか ? その為に何故兵士が命を落とさねばいけないのか…。其の様な状況の中でどうして気長足姫(おきながたらしひめ)は王太子を抱きしめる事が出来るのか…。

 考えただけで腹が立ってくる…。

「皆よ…! 火だ。火を点けよ !」
 怒りを声に乗せる様に三池国の神は大声で叫んだ。叫びながらも其れが如何に困難な事かは理解している。既に多くの兵が殺され四方八方から敵が襲い掛かって来ている。其れに今どれだけの兵士が残っているのかも分からない。周りにいるのは其の殆どが敵の様に思える。だとしたら此れは非常に不味い。此の逼迫した中で火を点けるは不可能に近いと言えた。其れでも火を点けねば助かる道はない。
「火だ ! 火を点けよ !」
 三池国の神は叫ぶ。兵と娘は隙を見つけ何とか火を点けようと心見る。どうせ燃やすなら建物が密集している場所。其処なら一つに火を点ければ飛び火で全てが燃える。皆は何とか火を点けようとお互いがお互いを守り乍ら動いた。
 やがて、誰かが家屋に火を放った。倭兵に串刺しにされながらも火を点けたのだ。皆は命を捨てて火を点けた。命を庇いながらでは無理だと悟ったからだ。その火はアッと言う間に家屋を飲み込み連なる建物や家屋を飲み込んでいった。
 火が立ち煙が上がる。煙は周囲の視界を奪って行く。煙が充満して行く中更に皆は火を放った。煙が視界を奪えば奪う程倭兵秦兵の動きが鈍くなる。そうなると火をつけやすくなる。だから、更に火を放つ。

 やがて、視界がホワイトアウトした。

「お姉様…。何故火を放ったのです ? 」
 第四宗女の蘭玖卯掄(らんくうりん) が問うた。蘭樹師維  (らんうーしぃ)、蘭蒼呵(らんそうか)、蘭玖卯掄(らんくうりん) は大門前で中の様子を見やっていた。
「妾は知らぬ。」
 蘭蒼呵(らんそうか)が答えた。
「さて、妾も其の様な指示は出しておらぬぞ。」
 蘭樹師維  (らんうーしぃ)が言う。
「なら、何故都が燃えてるのです ? 都は燃やさぬはず。」
 蘭玖卯掄(らんくうりん) が言う。
「勝手に燃えたのであろう。」
 蘭蒼呵(らんそうか)が答える。
「勝手に燃えた ? 其れにしては燃えすぎでありましょう。」
 と、蘭蒼呵(らんそうか)は中を指差し言った。
「確かに…。勝手に燃えたにしては大火事になっておる。八重が燃やしたか…。」
 蘭樹師維  (らんうーしぃ)が言った。
「真逆…。此方が火を放つならまだしも、自ら火を点けるはバカのする事…。此れでは自分で自分の首を絞めるのと同じ。」
「フン…。何か策があるのではないか。煙で視界を遮り其の隙に逃げるとかのぅ…。」
 と、蘭樹師維  (らんうーしぃ)はジッと中を見やった。
 そう、亜樹緒達は蘭樹師維  (らんうーしぃ)の言う通り煙で視界を遮り其の隙に大門を抜ける予定だった。だが、実際は都を飲み込む煙が予想を遥かに上回る量で発生したため亜樹緒達も身動きが取れなくなってしまっていた。前は見えず煙の所為で目が痛い。息もしづらく息苦しい。兎に角皆は身を屈め口を押さえた。
「しまいよった…。此れでは動けんじゃか。」
 と、亜樹緒は何とかならぬかと考える。否、此のお陰で倭兵秦兵も動けない。此れで少し休む事が出来る…。
 
 駄目じゃ…。今だからこそ動かねばいけん。

 亜樹緒は前に進めと銅鐸を鳴らす。此処は少しでも良い前に進まねばと銅鐸を鳴らし続けた。そして何ともな中皆が徐々に進もうとした時気長足姫(おきながたらしひめ)が叫んだ。
「駄目じゃ ! 動けぬ !」
 と、気長足姫(おきながたらしひめ)が叫んだが良く聞き取れなかった。だから、亜樹緒は銅鐸を鳴らし尋ねた。

 聞こえぬ
 何処にいる

「分からぬ ! 我は動けぬ !」
 と、更に叫ぶ。
 今度は何とか聞き取れたので、亜樹緒は銅鐸を鳴らし、動かぬ様に告げると若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)と共に声の方向に進んだ。
 敵に会わぬよう注意を払い乍ら亜樹緒と若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)はジリジリと進んで行く。煙は更にモクモクと広がり視界を奪い命を奪い始める。クラクラと頭が揺れ始め、此のままではいけないと倭兵秦兵は後退を余儀なくされた。兎に角煙が来ない場所迄後退する事にした。だが、亜樹緒達は未だ煙が包み込む中心にいる。出来るだけ早く抜けたい気持ちが色々な感情を焦らすが気長足姫(おきながたらしひめ)と合流せねば如何にもならない。

 だが…。

 大方の予想は出来ている。
 ジリジリと進み気長足姫(おきながたらしひめ)を見つけた亜樹緒は何があったのかを問う。
「王太子が歩けんのじゃ。」
 気長足姫(おきながたらしひめ)が言った。亜樹緒は矢張りそうかと思った。
「此の状況で馬鹿を言うでない。止まれば皆煙に殺されてしまいよるぞ。」
 亜樹緒が言った。
「分かっておる。じゃが王太子が怖がって進もうとせんのじゃ。」
 気長足姫(おきながたらしひめ)が言うと若倭根子日子毘々(わかやまとねこひこおおびび)は最早此処までと王太子を殺そうとした。
「大神…。」
 慌てて亜樹緒が其れを止めた。気長足姫(おきながたらしひめ)は驚いた表情で大神を見やる。
「離せ…。」
「駄目じゃ…。」
 と、亜樹緒は言うが如何したら良いのか分からなかった。例え無理矢理大門迄進ませても其の後どうなるのか…。王太子を連れてではどの道逃げきれない。

 そう…。

 逃げきれないのだ。
 
 せめて…。王太子と氷津留だけでも別の道でと思う。其れなら氷津留が背負って進んだとしても何とかなる…。

 だが、其の様な道は無い。

 此処まで来て詰んでしまいよったか…。

「大神…。な、何をなさる。」
 気長足姫(おきながたらしひめ)が言った。
「此れ以上、皆を危険に晒す訳にはいかぬ。」
「…。じゃな。なら、其れは我の務め。」
 と、気長足姫(おきながたらしひめ)は王太子を自分の胸に引き寄せると我が子諸共突き刺そうとした。
「ま、待て。」
「なんじゃ…。」
「何故其方迄。」
「我が王太子の母じゃからじゃ。」
 と、二人がイチャイチャしている間も煙はモクモクと兵と娘の命を奪って行く。亜樹緒は如何するべきかを必死に考えようとするが煙の所為で考える力が失せて行く。
「亜樹緒…。遅くなりよった。」
 其処に秘密の洞口を通り、秘密の通路を通って葉流絵と樹沙桂が戻って来た。
「は、葉流絵…。樹沙桂。…。其方ら生きておったじゃか…。我はてっきり…。」
「何とかじゃ。」
「他の皆は ?」
「殺されてしまいよった。」
「じゃかぁ…。」
 と、亜樹緒は二人を見やり首を傾げ問うた。
「所で其方らはどうやって入って来よったんじゃ ?」
「秘密の通路を通ってじゃ。」
 と、葉流絵が言う。
「秘密の…。其れは何処じゃ ?」
「この先の大岩の下じゃ。」
 樹沙桂が言う。
「皆を連れて逃げれよるか ?」
「皆を ? 兵と娘全員じゃか ?」
「そうじゃ。」
「うーん。其れは無理かもじゃ。秘密の通路は中は広いんじゃが入り口は狭いんじゃ。抜けよる間にバレてしまいよる。」
 と、葉流絵が言うと"なら、冰津留と王太子の二人じゃったら ?"と問う。
「其れなら大丈夫じゃ。じゃが周りは敵だらけじゃぞ。」
「娘を護衛に付けよる。」
「其れなら安心じゃ。」
 と、樹沙桂が言うと亜樹緒は大神と気長足姫(おきながたらしひめ)を見やり"其れで良いか ?"と言った。大神と気長足姫(おきながたらしひめ)は強く頷いた。
 

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