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「結局、いま本当に体にいいことってなんですか?」 ベストセラー連続、注目のサイエンスライター 鈴木祐さんに聞きました 後編

“健康と長生き”--それは、人類最大のテーマと言っても過言ではないでしょう。そんな、誰もが知りたい正しい「健康メソッド」について集めたのが『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』です。現在までに解明されている最新の研究結果にもとづいたエビデンスのあるものだけを厳選し、わかりやすく解説した本書が発売1年を経た今amazonのPrime Readingで読める一冊に選ばれ、再び注目を集めています。
本書の著者である、新進気鋭のサイエンスジャーナリスト、鈴木 祐さんにお話を聞きました。
前編に続き、後編をお楽しみください。

――前編では、本書では掲載されていない最新情報、“お酒が体に与える影響”について伺いましたが、「どのようなアルコールを適量飲んだだけでも脳に悪影響がある」ということを初めて知りました。ひと昔前は「酒は百薬の長」などと言われ、適量のアルコールは体にいいと信じられていましたが、最新の研究にもとづくと、そうではないことがわかりますね。

そうですね。その他、私のブログで「アルコールの摂取は癌リスクが上がる」という内容の記事を紹介したこともあります。

また、『不老長寿メソッド』では美肌や肥満と「睡眠」の関係についても述べていますが、アルコールと睡眠についても面白い研究があります。

ニューヨーク大学の研究では、8,000以上のウェブサイトをチェックして、「世の中には睡眠に関するどのような噂が広まっているのか?」を調査。その結果、アルコールは眠りに落ちるのを助けるかもしれないが、そのぶんレム睡眠を阻害し、睡眠の質を劇的に下げることを指摘しています。

Rebecca Robbins. et al.(2019)Sleep myths: an expert-led study to identify false beliefs about sleep that impinge upon population sleep health practices.Sleep Health;5(4):409-417


――怖いですね。私もお酒が好きなので、完全にやめるのは難しいかもしれませんが、ほどほどにしたいと思います……。

お酒は美味しいですが、健康のことを考えればやめるのが最善だと言えるでしょうね。

もうひとつ、最近あらためて私が注目しているのが「感情のコントロール」です。

老化の予防には食事や運動も大事ですが、「感情のコントロール」も欠かせません。

「人間はストレスで老ける!」というのはよく知られた話で、近著『最高の体調』でも1章を使ってストレスのエイジング対策を解説しました。

先ほど、適度なストレスは人間に対して有益に働くと述べましたが、慢性的なストレスは生物学的な老化スピードを上げ、心臓や血管の病気とも関連しているので、良いことはなにもありません。

染色体の末端に保護キャップのような「テロメア」というものがあるのですが、歳を取るにつれてこの長さが短くなり、そのせいで細胞が老化していきます。ストレスは、このテロメア長の減少スピードを上げるのです。

さらに新しい研究では、「ストレスは遺伝子レベルで老化を推し進めるぞ!」という結論になっており、あらためてストレスはおそろしいと感じました。

この研究の概要をチェックすると、次のようになります。

1. 18~50歳の健康な成人444名(男性45%)が対象
2. みんなの心理的&生物学的なストレスを調べる
3. ついでにみんなのセルフコントロール能力や感情コントロールスキルも調べる
4. 血液検査も行ってみんなのエピジェネティック(後天的な遺伝子の変化)も調べる

すこし難しいことを言うと、ここではDNAメチル化という化学反応にもとづいて生物学的な年齢を評価していて、テロメアの長さのようににすでに確立されているバイオマーカーよりも正確な評価が可能かも?と言われています。通常は、内臓の機能などから身体の老化を推測することが多いですが、ここではDNAの状態にもとづくアルゴリズムから生物学的な年齢を推定してるわけですね。


――生物の老化という現象は、DNAレベルでの研究が進んでいるんですね。

そうなんです。で、その結果がどうだったかと言いますと、

・ストレスが溜まれば溜まるほど,DNAから判断される加齢のスピードは上がり、ストレスに関連した生理学的指標(インスリン抵抗性など)の悪化とも関連していた

・しかし、感情のコントロール能力が高ければストレスによる老化の悪影響はやわらぎ、逆に感情コントロールがヘタになるほどストレスで老化のスピードは上がる

・また、セルフコントロールの能力はストレスとインスリン抵抗性の悪化をやわらげ、セルフコントロール能力が改善するほどインスリン感受性も改善する傾向があった

という感じになっています。

もちろん、この研究は横断研究なので因果関係がわかるわけではないですし、長期的な影響も不明ではありますが、「感情コントロールとセルフコントロール能力で老化を予防できるかも?」というのは十分あり得る話かな、と思うわけです。

セルフコントロールの定義はいろいろありますが、 アメリカ心理学会によると、

・衝動的な反応を鎮めて、自分がやると決めたことにもどる能力
・長期的な目標を達成するために、短期的な誘惑に負けずに満足を遅らせる能力
・「ホット」な感情システムではなく、「クール」な感情システムを起動する能力

といったものです。とりあえず「目先の誘惑に負けない能力」と考えればいいでしょう。

――セルフコントロール能力は、 QOLを高めるだけでなく、直接的に健康と長寿に関わってくる可能性が高いのですね。私もつい、子どもに対して感情的に怒ってしまうこともあるのですが、セルフコントロールを意識したいと思います。本日はありがとうございました。

*本書は2/25からamazon prime reading対象タイトルに。プライム会員なら読み放題で本書をお楽しみいただけます。

*インタビュー:デジタル・プロモーション部Y


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