【本のあるところ ajiro】『カリブ海序説』刊行記念 中村隆之さんトークイベント「グリッサン思想(グリッサン的思考)への招待」(2/1)
『カリブ海序説』(インスクリプト)刊行記念
中村隆之さんトークイベント「グリッサン思想(グリッサン的思考)への招待」
現在、これまでに不可視化されたり、ほとんど論じられることのなかった領域に関心が寄せられている。あらためて脚光を浴びつつあるカリブ海は長らく周縁化されてきた典型的な地域だ。そうした「小さな邦々」が輩出したこの地域を代表する思想家が、『カリブ海序説』の著者エドゥアール・グリッサンである。
『カリブ海序説』は、博士論文に基づく、1981年に原著が刊行されたグリッサンの主著である。しかし、大胆な構成と多様なテーマからなるその本は、あたかも読み解かれるのを待つ古代文字の碑文のように、外界から孤立したまま何十年もただずんできた。
1997年に最初の翻訳刊行が予告されてから四半世紀以上、2007年から現在の翻訳班によって取り組む方針を決めてから17年──長い歳月をかけてようやく日本語で届けることができた『カリブ海序説』とはいったいどんな本なのか。そこにはどんなことが書かれているのか。この本の汲み尽くせない可能性は、いまこそ、この作業に与する〈私たち〉によって読み解かれるときだ。
中村隆之さん全面協力のもと、「エドゥアール・グリッサンと『カリブ海序説』」展&刊行記念選書フェアを1月23日(木)より開催しています。トークと合わせて、ぜひご覧になってみてください。
日時:2025年2月1日(土)18:00~19:30(開場:17:30)
出演:中村隆之さん(早稲田大学教授、『カリブ海序説』訳者)
場所:本のあるところ ajiro(福岡市中央区天神3-6-8-1B)
参加方法:会場参加/ライブ配信/学割チケット
チケット:会場1650円(学割1100円)、オンライン1100円
配信方法:YouTube(1か月アーカイブ付)
お問い合わせ:ajirobooks@gmail.com(担当:藤枝)
【出演者プロフィール】
中村隆之(なかむら・たかゆき)
早稲田大学法学学術院教授。フランス語を主言語とする環大西洋文学、広域アフリカ文化研究、批評、翻訳。著書に、『エドゥアール・グリッサン─〈全─世界〉のヴィジョン』(岩波書店)、『環大西洋政治詩学─二〇世紀ブラック・カルチャーの水脈』『カリブ─世界論─植民地主義に抗う複数の場所と歴史』(いずれも人文書院)、『第二世界のカルトグラフィ』(共和国)、『野蛮の言説─差別と排除の精神史』(春陽堂書店)、『魂の形式 コレット・マニー論』(カンパニー社)他。訳書に、エドゥアール・グリッサン『マニフェスト─政治の詩学』(パトリック・シャモワゾーとの共著、以文社)、『痕跡』(水声社)、『フォークナー、ミシシッピ』(インスクリプト)、アラン・マバンク『アフリカ文学講義─植民地文学から世界─文学へ 』(共訳、みすず書房)、ルイ・サラ=モランス『黒人法典─フランス黒人奴隷制の法的虚無』(共訳、明石書店)、『ダヴィッド・ジョップ詩集』(編訳,夜光社)他。
エドゥアール・グリッサン『カリブ海序説』
星埜守之・塚本昌則・中村隆之訳
定価:本体6,200円+税 ISBN978-4-86784-004-7
四六判丸背上製 768頁
カリブ海のフランス海外県・マルチニックにあって、その歴史・社会構造・言語・人々の心性のありようを、アンティル(カリブ海諸国)、とくにマルチニックに関わる厖大な言説を収集・分析しつつ明らかにし、フランスへの依存を逃れ、主体的な民衆による自立を訴求する。全篇を覆う危機意識、はるかに展望される独立への眼差し。世界各地で民衆の抵抗が無化されつつある現在をも問いに付す、時代を超えたアクチュアリティを具えた大著であり、多様なジャンルで著述活動を行なってきたグリッサンの結節点をなす、最大にして最重要作。