拝火

 中学受験を控えた娘の志望校の文化祭に、家族で見学に行くことになった。
クイズ研究会のブースでは、早押しクイズに挑戦できるということだったので参加することにした。

 司会のクイズ研部員から
「拝火教ともいわれる世界最古の宗教は何教?」という問題が出て、
世界史が専攻だった僕は、勢いよくボタンを押し
「ゾロアスター教!」と答えた。正解した。

会場は「おおー」という空気になったんだけど、僕の回答席の後ろにたまっていたクイズ研の部員たちがヒソヒソと「中二病、、、」「中二病だよあの人」とささやいているのが聞こえてきた。

中高生たちが楽しんでいる学園祭で、調子に乗って答えているおじさんはまさに中二病だよ ということだ。
僕の回答も「ゾロアスター教」という中二病っぽい雰囲気のある単語だった。

 僕は少しでも場を盛り上げようとクイズに真剣に取り組んで真面目に回答したのにそんな言いぐさはあんまりじゃないか、と思ったんだけど、彼女たちが「中二病だ」ということになった経緯を想像してみた。

 学校の文化祭にはいろいろな父親が子供と一緒に来るだろうし、その中には、調子に乗った結果楽しい空気を壊すおじさんがたくさんいたのだろうと思った。 クイズ大会で無双して、悦に入るキモいおじさんたちが周りを怖がらせていたのだ。
思えば、僕たちの一巡前にクイズに参加していた男子高校生4人組にもその片鱗があった。
ボタンが壊れるから連打はしないでくれという注意を破り、4人で大騒ぎしながら回答して、惜しかった回答を正解にしてよ司会に詰め寄り、怖がられていた。彼らがそのまま大人になるのだろう。
 そこまで想像した僕は、ヒソヒソ話をする彼女たちではなく、いままでこの場で横暴にふるまってきた男性たちをまた恨んだのだった。


 その後完全に「委縮」してしまった僕は一問も回答することなく静かにして早押しクイズ体験を終えた。

 ブースをでて、その出来事を伝えると奥さんも娘もウケていた。
その後しばらく、僕が家で何か発言すると「中二病だ、、、」と言われるという嫌なノリになったが、これもおじさんのせいだろう。

サブウェイのアボカドベジー食べます