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ジョージア各地方のワイナリーオススメ2024年度版(主観と忖度アリ!)
2024年の暮れには変わったことは何一つせず過ごしていて、年末が近づいていることを日付を見てようやく気づきました。つい先週まで住んでいたブクナリのマラニから12/29に出ていけと言われたため増々それどころではなかったということもあったのですが、無事引っ越しも住んで平和に暮らしております。
とはいえ、年末らしく何か自分の中でまとめや振り返り的なことをしたいと思い、僕のオススメワイナリー紹介をまだしていなかったのでこの機会に書いてみようと思った次第です。年末から書き始めたものの中々筆が進まず、とても時間がかかってしまいました。
多様性に富んだジョージアでは、ワインも各地方で異なってきます。ジョージアの各地方のワインの特徴なども簡単に紹介できればと思います。よろしくお願いします。
はじめに。ワイナリーのチョイスは主観と忖度100%
最初にお断りしていきたいのですが、ここに書くワイナリーを選んだ理由は客観的なものでは全くなく、むしろ主観と忖度に溢れたものであります。というのも、僕が実際に訪問して生産者と話をし、ワイナリーの雰囲気を感じてきたものからピックアップしているので自分の感性と好き嫌いが入ってしまうからです。
ワインの味のみを気にするのであれば、別にワイナリーへ行かなくとも、ワインショップで買ったワインを何人かでテイスティングして意見を交わしながら味に関するある程度客観的な評価はできるのかもしれません。しかし、ワイナリーの環境や生産者の人となり、ワイン造りの歴史や物語、自分で見たり感じたことがないと、本当の意味で「味のある」ご紹介ができないと思います。
そもそも嗜好品かつ五感を使って「感じる」ものであるワインを本当の意味で客観的に評価できる人がいるのかとも思いますが、まあそれはおいといて。
① カヘティ地方
カヘティ地方はジョージア東部の地方です。乾燥した大陸性気候且つ、カヘティ地方中・北部を流れるアラザニ川やコーカサス山脈をはじめとした山がちな地形がブドウの生育に適した環境を形成しているとされます。ジョージアで最大のワイン生産地方です。恵まれた環境の中でブドウはしっかりと成熟し、ワインも濃厚で力強くなります。
Kardanakhi Estate(カルダナヒエステート)
カヘティ地方の中でも東部、愛の町として知られるシグナギの近くのアナガ村にあります。オーナーのカハは元々違う職に就いていましたが、カヘティ地方の、特にこのワイナリーがあるカルデナヒ地域の古くからのワイン造りを復興させたいとの思いでワイナリーを設立しました。
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ワインはもちろんカヘティ地方の伝統的な製法で造られます。クヴェヴリ醸造で、一部は樽熟成されます。味の話をすれば、カヘティ地方の濃くて芳醇なワインの特徴がありつつも上品で飲み疲れしない良さがあると思います。
カハはエネルギッシュな人で、ワイナリーでの仕事はもちろんトビリシにワインショップをオープンしたり、ワインの輸出にも積極的で動き回っている印象があります。しかし実際に会うとせかせかしている訳ではなく落ち着いた感じでコミュニケーションを取ってくれます。
ワイナリーには宿泊できる部屋もあって国内外からボランティアを受け入れたりもしています。僕も何度かお世話になったことがありとてもホスピタリティに溢れた方だと思っています。また、ジョージアの伝統を守るのはもちろん、一方で若い感性も持っていて、エチケットのデザインなどにそれを見ることができます。
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Shumi Winery(シュミワイナリー)
カヘティ地方中部の都市テラヴィの近郊、ツィナンダリ村にあるワイナリーです。ワイナリーガイドやレストランなど観光客の受け入れ体制が充実しており、ジョージア国内外の様々なブドウ品種が植わったブドウ畑を中心とした敷地内の景観も美しく、ツィナンダリ村のランドマークの一つとなっているのではないかと思います。
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カヘティ地方各地にブドウ畑を有し、クヴェヴリとステンレスタンクを数多く備え、ジョージアンスタイルとヨーロッパスタイルの両方で様々なワインを生産している近代的なワイナリーです。
ワイン自体も高い評価を受けていて様々な国へ輸出もしており、味も非常に美味しいです。特にTsinandali (ツィナンダリ)というブランドワインは、ヨーロッパスタイルなのですが、フレッシュな酸味とまろやかさがマッチしてとても飲みやすい白ワインです。イチオシです。
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僕がこのワイナリーをチョイスしたのは、インターンで2ヶ月ほどここで働かせてもらったことがあるからです。スタッフさんが右も左も分からない僕にも丁寧に仕事を教えてくれました。ワインの味もさることながらそういった思い出も込みで、挙げさせてもらいました。
② カルトリ地方
首都トビリシが属するジョージア中部の地方です。西ジョージアのワインと東ジョージアのワインの2つに大別されることが多いと思うのですが、両方の良さを兼ね備えたワインが造られている印象です。つまり、芳醇でコクがありながらスッキリした酸味も感じられるワインが多いと思います。
Merebashvili's Marani(メレバシュヴィリス マラニ)
カスピという町に構える家族経営マラニです。
元々狩猟を営んでおられる家族で、テイスティングルームの内装が狩猟の武器や獲物の毛皮などになっていて独特の雰囲気があります。
ワインラベルにはジョージア種のキジが描かれています。この地域に生息していた種だということで、猟師としての生物へのリスペクトが感じられます。
ワイン自体のクオリティはとても高いと思います。クオリティが高いのは雑味がないことだと思うのですが、特にアンバーワインは非常にクリアで美味しいです。
カルトリ地方のブドウ品種を使ってクヴェヴリ醸造されています。ジョージア式製法で造られた、特にカルトリ地方のワインに興味がある方には、ここのワインは特徴をよく捉えられると思うのでオススメです。
Brother's Cellar(ブラザーズセラー)
ボルニシという町の家族経営マラニです。ボルニシでは農協的な組合が上手く機能していて町のワイナリーが協力し合って上手く発展している感じがします。Brother's Cellarはそれらのリーダー的な存在で様々なイベントで目にします。初めてマラニを訪問したときに、ワインの味はもちろんマラニの雰囲気やオーナーの快活な人柄が気に入ってその後も度々訪問させてもらっています。
クヴェヴリ醸造でカルトリ地方の品種を中心としたワインを造られています。ボルニシにはかつてドイツ人が住んでいたことがあり、ドイツ風の建造物が残されたりしているんですが、Brother's Cellarではドイツのブドウ品種も取り入れています。ドイツ品種とジョージア品種をブレンドしたワインなど面白い取り組みもされています。
③ イメレティ地方
カルトリ地方の西隣の地方です。2つの地方の間には山道があって以前はこれを抜けるのに時間がかかっていたのですが、中国政府の投資によって高速道路やトンネルが開設されより短時間で移動できるようになりました。ジョージアの鉄道会社も中国資本のウエイトが大きく、交通機関やインフラを整備して一帯一路を実現させていく様子が見えます。まあそれはおいといて。
イメレティ地方はカヘティ地方に次ぐワイン産地で、製法もイメレティスタイルと呼ばれカヘティの製法(カヘティスタイル)と対比されることが多いです。カヘティスタイルでは、白ブドウの皮や種など固形分を100%6ヶ月間ワインに漬け込むため濃い色調で濃厚なアンバーワインが造られます。
一方イメレティスタイルでは、漬け込まれる固形分の量が0か非常に少なく、期間も2週間程度と短いです。そのためカヘティのワインと比較すると薄い色調でスッキリしたワインが造られています。
夏の暑い時期はスッキリのイメレティワイン、冬は濃厚なカヘティワインをよく飲む、という方もおられます。
Nanua Winery (ナヌアワイナリー)
イメレティ地方はテルジョラという村の家族経営マラニです。ジョージアはかつていくつかの王国・公国に分かれており、現在のイメレティ地方にはイメレティ王国という国がありました。イメレティ王国には王室専用のマラニがあって、そこで働いていたワイン醸造家を祖先に持つご家族です。
2024年1月に訪問させてもらいました。現ご当主のギアさんが迎えてくれました。実際のワイン生産に用いるブドウの畑は少し離れた村にあるとのことですが、マラニの庭にはジョージア国内外の様々なブドウ品種が保存用・観賞用に植えられています。
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ちなみにジョージアで最大の保存用ブドウ畑は、首都トビリシ近郊のムツヘタという町の近くのジガウラ村にあって、政府の農業研究所が運営しているのですが、その畑にない品種もここにはあるとのことでした。アブハジア原産のブドウも植わっていました。
マラニにはクヴェヴリとステンレスタンクが整然と並んでいて、無駄なものがない空間の余裕さを感じました。クヴェヴリは地下に埋められているものと少し高さをつけて埋められたものの二段に分かれていて、上から下へとワインを重力で移動させることができるようになっています。重力で移動させることでワインにストレスをかからないようにできるとのことです。
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畑とマラニを見学した後は、イメレティ製法で造られたワインを数種類頂きました。数種類というかかなりの種類頂きまして後半は正直どんな感じだったかあまり覚えていないのですが、ワインを飲みながらギアさんが自分に話してくれた、ワイン醸造家としての考え方というか矜持が心に残っています。
彼はブドウ栽培からワイン醸造までを全部自分で行って初めて、ワイン醸造家と名乗れると言っていました。現在はワイン生産のあり方は多様化しておりブドウ栽培からワイン醸造、ボトリングまで全て手掛けるワイナリーもあれば、ブドウ栽培は農家さんに委託して、そのブドウは購入して自社ではワイン醸造からのプロセスを手掛けるワイン会社もあります。ギアさんに言わせると後者はワイン造りでなくビジネスであり、その言葉から全てのプロセスを自分で責任を持って行うという職人気質を感じました。
以前どこかの記事で書いたと思うのですが、知り合ってすぐにビジネスの話に持っていこうとする人が最近とても多い気がします。作り手と売り手に分けるならば売り手側にそういうマインドの人が多い気がします。売り手側としても、まず作り手の人格や製品の品質などを確かめて気に入った上でビジネスの話を始めないと、売り始めてから怖いと思います。作り手側としても、製品に関する知識やものづくりに対しての考え方を理解されないまま薄っぺらい宣伝や売り方をされても不本意だと思います。自分はまだ職人業を始めてはいないですが、始める前にこういう考え方に至ったのは良かったと思っています。
さて自分の話に脱線してしまいましたがギアさんの職人としての考え方に深く共感しました。これ以外にも興味深い話をしてくれたのですが、更に長くなる上にジョージア語に関わってくる話なのでここでは説明が難しいです。もし興味ある方いらっしゃれば是非SNSなどで聞いて下さい。
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Davit Lominadze Winery (ダヴィット・ロミナゼ ワイナリー)
イメレティ地方の比較的南部、ペレタという村にある家族経営マラニです。先述のNanua Wineryを訪問した翌日にここを訪れました。
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このマラニのことはインターネット上でとある記事を読んで知りました。イメレティには数多くのマラニがありますがここに興味を持った理由は、イメレティ地方の伝統的な形式で造られたマラニだからです。イメレティ形式のマラニのクヴェヴリは、屋内でなく野外に設置されます。
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イメレティ地方は湿度が高いため、風通しを良くする目的で屋外にクヴェヴリを埋めていた歴史があるみたいです。この風景を見るためにマラニを訪問したといっても過言ではないです。ジョージアの多様性はマラニの設計にも見ることができます。
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ペレタ村は山間の小さな村で、庭から見える山々の景色がとても美しかったです。庭にブドウ畑があるのも仕事がしやすくて良いと思いました。訪問時にはスプラを開いて頂いてワインをご馳走になりました。アンバーワインは芳醇ながらイメレティのワインらしく酸味が活きたフレッシュな飲みごたえでした。もう一度訪問したいと思って昨年末に連絡してみたのですが、積雪がひどくて道がふさがっているとのことでまたの機会になりました。
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④ ラチャ・レチュフミ地方
イメレティ地方の北端と接する山の地方です。北側には大コーカサス山脈が聳え美しい景色を望むことができます。山岳部なので気候は冷涼で、レイトハーベスト気味に収穫されたブドウから造られるセミスイートワインがこの地方では有名です。僕は昨年11月にラチャ地方のアンブロラウリを土地探しに視察していました。
山の生活に憧れておりワイン造りもできそうだという考えがありましたが、それは一旦白紙に戻りました。そもそもワイン造りのアイデア自体もどうしようか悩んでいるのがここ最近の悩みなのですが、まあそれはここではおいといて。ここではラチャ・レチュフミ地方の中でも、レチュフミのワイナリーを一軒紹介しようと思います。
V&D Usakhelouri Winery
レチュフミ地方はズビ村の家族経営ワイナリーです。レチュフミを始めて訪れたのが2020年なのですがその時に偶然ご家族と知り合ってお家に泊めさせて頂いてそこから付き合いをさせてもらっています。ズビ村はザ田舎な村で周りに商店など何もないのですが、山の中で自然に気持ちが洗われる生活を味わえました。
オーナーのダトは村に生きる無骨な男という感じなのですが、すごくフレンドリーで何度も家に招待してもらったりワインをご馳走になったりしてきました。
昨年はここのブドウ収穫に招待してもらって参加してきました。収穫作業と仕事の後の全員でのスプラはもちろんのこと、最も印象に残ったのが畑と周囲の山々が造る景色でした。収穫作業を淡々とこなすだけなら文字通りの「作業」で終わるところですが、秋晴れの中作業の合間にふと見上げると目に入る景色が作業以上の意味を与えてくれた気がします。この美しい景色の中、家族親戚友人で協力して行うからこその、「収穫祭」なのかなと思いました。
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この日収穫したブドウはウサヘロウリという赤ブドウ品種です。ウサヘロウリは殆どがレチュフミ地方で栽培される希少品種です。セミスイートワインに仕上げられたPDOワイン「ウサヘロウリ」はジョージアで最も高価で販売されるワインの一つです。
PDOセミスイートワインはジョージアに割と多種類あってジョージア人・外国人のどちらにも人気なジャンルかと思いますが、もちろんそれぞれで味わいが異なってきます。僕は元々甘いものが苦手で、甘いワインも飲んできませんでした。甘さが強調される感じがしてどれも同じもののように思っていたからです。しかしジョージアでセミスイートワインを試飲し始めるとその奥深さに気付きました。同じセミスイートワインでも甘さの主張の度合いだったり甘みの後の余韻や後味がはっきり分かるほど異なっているので面白いなと思いました。「ウサヘロウリ」は辛口ワインで感じるような渋味や苦みが甘みとピッタリ調和している気がします。セミスイートですが甘みが最も強調されるわけでもなく苦みや渋味がしっかり主張されていることがエレガントさを出しているように感じます。
ワイナリーの方は初めて訪問した2020年から改築工事が段々と進められていて出来上がりがどうなるかが楽しみです。建物の1階にはワイナリー、2階には宿やカフェを作りたいとのことでレチュフミ地方のワインツーリズム活性化も期待できそうです。
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⑤ サメグレロ地方
ジョージア北西部の地方で西は黒海に面し北は山岳部になっています。亜熱帯で湿度が高いジョージア西部の特徴はここにも当てはまり、低地は高湿度でブドウ栽培には向きません。余談ですが、サメグレロ地方には辛い料理が多いです。かつてサメグレロ地方には高温多湿が原因で伝染病が流行し、その対策として辛い料理がたくさん食べられるようになったと言われています。
ワインを造り実際に販売しているワイナリーは、現在サメグレロ地方に数えるほどしかありません。標高が比較的高くて湿度が低い北部にワイナリーは集中しています。ジョージア西部で広く栽培されているツォリコウリやオジャレシなどのブドウがサメグレロ地方でも多く見られますが、サメグレロ地方にも地場品種はあって現在それらを復興させようとする取り組みがされています。
余談ですが僕は2022年にサメグレロ地方の町セナキに住んでいたことがあります。サメグレロ地方は気候や食事、文化や言語が独特で、実際に住むことでそれらに触れてみたいと思ったことが理由です。
Targameuli Winery (タルガメウリ ワイナリー)
サメグレロ地方中北部マルトヴィリ地域のタルガメウリ村にある家族経営マラニです。サメグレロ地方を縦断するテフリ川沿いにタルガメウリ村はあって穏やかな景観が美しいです。ちなみに、この村から川沿いに下っていくと天然の硫黄温泉が湧出するノカラケヴィ村があって有名な観光スポットになっています。
マルトヴィリには他にも、川下りやハイキングが楽しめるマルトヴィリ渓谷があって特に夏場は多くの人が訪れるサメグレロ地方でも有数の観光スポットです。それと同時に、サメグレロ地方のワイナリーの過半数がマルトヴィリ地域に分布しています。
タルガメウリワイナリーには3度訪問したことがあり、ワインフェスティバル等にもよく出展しているのですが、醸造家のニカがいつもフレンドリーに案内してくれます。マラニを見学させてもらったときに思ったのが、畑がすぐ近くにあるのでいつでもブドウの世話ができるのがメリットだなということです。マラニは家の敷地内にあり、畑も家の近くにあるので生活を営みながらワインの仕事ができるので理想的だなと思いました。
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ツォリコウリやオジャレシといった、西ジョージアの主要なブドウ品種が主に栽培されていますが、ニカが掲げる目標の一つにサメグレロ地方の地場品種の復興というのがあります。栽培量も少しずつ増えているようで、その希少品種から醸されたワインも既に生産されています。
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マラニには大きなクヴェヴリが2基あるのですが、少し特殊な設置をされています。地下水位が高く、地下に埋めるとクヴェヴリが水に触れて劣化してしまうため、土で盛り上げて高さを付けた場所に埋められていました。
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畑とマラニの見学後は、併設された試飲スペースでワインの試飲をさせて頂けます。畑がマラニからかなり離れた場所にあるワイナリーは割と多いです。畑・マラニ・試飲の3つとも体験できる希少なワイナリーだと思います。さらに、サメグレロ地方の風土や文化に触れてみたい方には是非訪問をオススメしたいと思います。
⑥ グリア地方
サメグレロ地方の南端及び黒海と接する西ジョージアの地方です。サメグレロ地方と同じく気候は亜熱帯で、観光スポットとしては標高2,000mに位置する山のリゾート地バフマロが有名です。サメグレロ地方と同様に湿度の悪影響を受けることと、ソ連時代にグリア地方では茶の生産が推し進められた(現在もグリア地方の茶は有名です)ことからこの地方のワイン生産量はまだ少ないです。とはいっても、現在のジョージアワイン文化の高まりを受けてグリア地方でも新規ワイナリーが増えつつあるし、地場品種を復興させる動きも見られます。これもサメグレロ地方と似ていますね。
Nikolaishvilebi's Marani (ニコライシュビレビズ マラニ)
トビリシに住んでいたときにPoliphoniaというワインバーでバイトしていたことがあるのですが、その店でこのマラニのワインを扱っていました。当時はグリア地方のワインの流通があまり多くないこともあり、僕が知る数少ないグリアワインの一つでした。正直に言うと、当時の僕にとってグリアのワインはあまりぱっとしなくて地味だというイメージがあって、興味が湧かなかっただけかもしれません。だとすればもったいなかったなと思います。
Nikolaishvili's Marani の当主のイリアとはバイト中に知り合って、2023年の冬にご自宅に招待してくれました。ワイン造りをビジネスとして本格的に始めたのは最近のようです。自宅の倉庫をマラニとして改修されており、ブドウ畑も庭にあります。高湿度に対抗するために日本の棚栽培のような仕立て方がされているのが特徴です。
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グリア地方ではチュハベリという赤ブドウが主に栽培されていて、このマラニでもチュハベリのワインが造られています。スプラを開いて頂いたのですが、そこで頂いたチュハベリのペットナット(自然派微発泡ワイン)が衝撃的に美味かったです。ペットナットもスパークリングワインに分類されるワインだと思うのですが、それまで飲んできたスパークリングワインは伝え方が難しいですが、無機質な味わいのものが多く正直あまり好きなものがなかったです。このペットナットはものすごく旨味とコクがあってビックリしたのを覚えています。ジョージアではペットナット生産が増えてきていて一つの流行になっているとも思うのですが、チュハベリ品種のペットナットにはすごく可能性を感じました。
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生まれたてで仕上がりが楽しみなマラニにも、チュハベリのペットナットにも、今後面白くなりそうな可能性を感じました。グリア地方のワイン造りを代表するマラニの一つになると思います。
⑦ アチャラ地方
僕が現在住んでいるアチャラ地方ことアチャラ自治共和国に関しては過去の記事で書いたことがあるのでここでは省かせて頂きます。
アチャラ地方のオススメワイナリーはもちろん僕がつい最近まで住ませてもらっていたKhimshiashvili Wineryです。
7ヶ月程住んで、去年の暮れにかなり唐突なタイミングで出ていってくれと言われ、引っ越しました。そこに関しては色々と思うことはあるのですが、ワイン造りへの思いとジョージアの伝統的な製法を守っていこうとする姿勢はとても勉強になりました。日本人の知人友人が何人もマラニ訪問に来てくれて、ワインの味・マラニの環境共に気に入っていたと思います。今後僕がジョージア語↔日本語通訳でご一緒することはないと思いますが、見学は随時受け付けていると思うので、ジョージアに来られる方で興味があれば行ってみてください。InstagramのDMでは英語での対応しています。
番外編:トビリシ
ジョージア首都トビリシにも何軒かワイナリーがあります。そもそも自家醸造の伝統がある国なので、都会でも田舎でも各家庭で軒先のブドウを収穫してワインを作っておられます。最近は自家消費用でなく商売としてワインを生産するワイナリーがトビリシにも増えてきました。その中から一軒ご紹介したいと思います。
Temivino (テミヴィノ)
Temivinoはジョージアで近年流行りのペットナットを中心に造っているガレージワイナリーです。トビリシ市内の自宅の倉庫を改装してワイナリーにされています。何度か訪問したことがありますが、街中でもワインを造れることを目の当たりにして感動した記憶があります。
テムリとミシャの二人が立ち上げたガレージワイナリーで、彼らはトビリシ近郊の別のワイナリーでスパークリングワイン醸造に携わっている経験があるのでペットナットの味は素晴らしいです。ゴルリムツヴァネなど、カルトリ地方のブドウ品種を主に使っていて、ワインは溶けていくような喉越しの良さと旨味が余韻として残る感じが印象的でした。
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街中なのでブドウ畑もやることは中々厳しいとは思いますが、ブドウは他のブドウ農家さんから購入することもできるし、ワイナリーとして運営していくことは全然できると思いました。ワイン造りの方針やワイナリーの立地など、選択肢はたくさんあると気付かされました。
おわりに
ここまで長々とダラダラと書いてみましたが、途中でかなりダレてしまいました。長文を書くことに慣れていないのはもちろんなのですが、正直やる気があまり出ない内容だったと思います。自分がその時その瞬間に感じたことを言葉にしてみることは楽しいのですが、ワイナリーの紹介といった客観的な情報を記さざるを得ない内容は中々筆が進まなかったです。要所要所でかなり自分の主観的な思いを書いたりしてなんとか進められた感じです。理系出身としてはあるまじき態度なのですが、まあそれはおいといて。
とはいえ、自分が本当に美味しいと思ったり、ワイナリーを見学したり醸造家と話したりして総合的に良い経験ができたところをしっかりピックアップしたつもりです。ワインショップで買っただけのワインを選んでいるわけではありません。
ワインのブランド化が世界的に進みジョージアでもその波が押し寄せて来ていて、ラベルやインターネットで見られる程度の情報にワインの値段が左右される時代だと思います。ブランドやワインの品質ファーストの時代だと思うのですが、ジョージアに来てから自分の中での優先順位が変わりました。スプラの参加者が乾杯の音頭に合わせて一気にワインを飲み干したときに不思議な一体感が生まれるのを感じたことがあります。宴会の場を通して友情・愛情・親睦・団結を深めるのが一番の目的で、ワインを含めたお酒はその橋渡しをしてくれるものなのかなと今は考えています。
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