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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ③

(3)巡礼のスタート

 SJP駅から町への道を辿るに従って、「カミーノ」の風景の中に自分も入って行った。ここは中世の街並みを彷彿とさせる「別世界」で、心が高まるのを感じた。そして、城門を潜った時、いよいよ巡礼の旅が始まると、誰もがそう思ったのではないだろうか。
 それにしても、「コロナ」といい、距離といい、何とここまでのアプローチが遠かったことか。やっとスタート地点に立つことができたのだ。

 最初の仕事は、まず巡礼事務所で登録する事であった。店の人に尋ねたら、場所を教えてくれて、巡礼の列に並んだ。4−5人の人が担当していたが、「どこから来たのか」と聞かれたので、「日本」と答えたが、日本語担当の人などいないので、英語で最低限の用を果たした。

巡礼事務所で手続き

 パスポートを提示し、クレデンシャル(巡礼手帳)に最初のスタンプを押してもらった。私のそれは熊野古道のスタンプが押されたものと表裏になっており、担当者も初めて見たようであった。そして、いくつかの書類をもらって、ザックにつける帆立貝を手に入れた。これは巡礼であることの印である。
 最後に、今晩泊まるアルベルゲAlbergueを紹介してもらった。これで、今日から私も巡礼の仲間入りをしたのだ。

中世風のSJPの街並み

 当然、アルベルゲでの宿泊も初体験で、一体どんなところなのだろうかと不安がよぎる。そこは、一般のホテルとも民家とも違う独特な雰囲気であった。案内されて2階に上がると、いくつかの小部屋に分かれ、2段ベッドbunkbedが並んでいる。与えられた不織布のシーツを取り付けると、狭いが、そこが自分の居住空間になる。寝具は日本から持参したシュラフ(寝袋)で、夏用の小さなものである。山小屋やテント泊を日常的に経験している私には、これで十分である。食事はついていないので、食材を買ってきて自炊するか、外食になる。

  荷物を宿に置き、街の中を散策する。十数年前に妻と娘と3人で旅行したイタリアのアッシジに似ている。道は石畳で、すっかり擦り切れており、雨で濡れているので余計に滑りやすい。石造りの小さな家が隙間なく軒を並べ、カトリック教会が中央にある。こういう構造の町は日本にはないので飽きることがない。

 急峻な地形を利用した城塞の跡が残っており、坂を登っていくと汗をかいた。防御の構造などは、日本の城郭にも似ている。眼下に広がる町には、白壁に赤い屋根の家々が広がり、まるで童話の世界である。

丘の上から見たSJP

   レストランで夕食を取ろうとしたら19時からだと言われた。観光客にはそれでもいいかも知れないが、明朝第1日目の行程を歩く巡礼には、ちょっと遅すぎる。そこで、最寄りの店でパンとりんご、コーラを買い宿で食べた。前祝にしては質素な夕食となった。

   隣の2段ベッドにいた米国ジョージアGeorgia州からきた兄弟と自己紹介をしあった。私の拙い英語を一生懸命に理解しようと努めてくれた。またその過程で相手の人柄も、何となく理解出来るようになる。始めは通じなくても、互いに努力することで、理解の幅が増えてくる。構文や文法などはどこかに吹き飛んで、単語を並べていた。相手は私がどのような英語を話すかにではなく、何を語るかに興味があるのだ。要は、語るべき何かを持つことであり、臆することなく相手に向かう意思と姿勢が大事であることを教えられた。

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