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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ⑬

(13)「停滞」

 8/27(土) 第9日、晴れ
 足のマメの痛さを我慢してここまで歩いてきたが、それも限界に達し、疲れも溜まっているので停滞を決めた。1日休養をとることで、状態の改善が期待できると考えたのである。アルベルゲの滞在は基本的に1日だけであるが、その旨を説明して、延滞が了承された。私の歩く情けない姿を見て、それも止むを得ないと分かったのであろう。
 これまで山行ではマメの一つや二つできる事はあっても、こんな状態で足の裏に広がったのは初めての経験である。これからどうなるのであろうか、と不安がよぎる。
 昼ごろまでゆっくり過ごして階下に降りると、かなり状態が改善しているのがわかった。このまま経過してくれることを願った。

 昼食は初めてスパゲティのナポリタンを食べた。これにもパンがついており、皿をきれいに拭きながら食べた。

昼食のスパゲッティ

 因みにこちらではパンのことを「パンpan」と発音する。当たり前の話で、16世紀にポルトガル人が日本に持ってきたので、私たちがポルトガル語を発音しているのだ。中学の時に、英語でパンはブレッドbreadだと教えられて、なぜ「パン」ではないのかと疑問に思ったことを、今も覚えている。今や、日常語になったその言葉を、「パン」の祖国で耳にするのは不思議な響きである。
 午後から、大柄な若者が同部屋になり、私の「平和」は幕を閉じた。

 時間に空白ができると、それまで考えなかったことを考える余裕ができた。帰りの航空便の確認(私はマイレージ利用なので、チケットを持たない)や、巡礼が終わってからのマドリードやバルセロナへの移動の問題などである。距離を短縮したため、10日近くも余裕ができ、それの使い方が新たな課題として浮上した。巡礼中は、ただそのルートを間違わないように歩き、宿をどこにするかということに集中すれば良かったが、巡礼終了とともに、新たな問題が浮上することになった。嬉しい反面、何をしたらいいのか、相談する相手がいないのも困った問題である。
 また帰国の際の72時間以内のコロナ検査はどうやら廃止される見通しになったが、帰国した空港での検査の際に、”MySOS”というアプリをインストールしておく必要があり、それが何回試みてもうまくいかないのだ。悩ましい。

 韓国の学生二人(P君・I君)に会った。英語で語りかけたら何と日本語が帰ってきた。彼らは早稲田大学に留学している学生であった。日本語が堪能で話し相手ができて助かった。彼らとはこの後も前後して、たびたび遭遇することになる。

 夕食は、豆の煮物(これは3度目)、鶏肉にジャガイモ、デザートはチョコレートをかけたバナナを電子レンジで温めたもの(?)、そしてビールであった(昼食、宿泊費込みで46.5€)。

この豆は好きになれなかった
これは美味しかった
初めての味

 夕方、K先生からサンチャゴ・デ・コンポステーラに到着したとの連絡が入った。安堵感で声が弾んでいた。それに対して、自分の方は足が痛くて停滞しており、この先どうなるかわからないという状況である。うらやましい限りである。
 「巡礼」という言葉には、どこかロマンチックな響きがあるが、そんなものは「現実」の前に消し飛んでしまっていた。(0km、3,356歩)  

半砂漠の風景

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