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Buen Camino 2022 あなたも巡礼に出かけてみませんか? ㉖

(26)「電動式車椅子に会う」   

 9/9(金)霧、晴れ
 昨晩の残り物のパンを食べ、自動販売機の操作を階下のベルギー人に教えてもらって、暖かいコーヒーを飲むことができた。機械に説明はあっても、スペイン語がわからなのので、こう言う場合は諦めることが多い。尋ねると誰もが親切に助けてくれるので、必要なのは勇気だ。
 6:45に宿を出発したが、暗い上に濃霧がひどくて道がよく見えない。視界は数メートルで、自分の位置がわからないので、度々、立ち止まって方向を確認しなければならない。
 町の出口に架かっている橋(昨日の橋とは別)を渡るとすぐに、分岐があってここでも左右に分かれている。どちらの道でもいいようだ。多くの人は距離が短い右に行ったが、私は敢えて左の道を選んだ。こちらの方が古い道のようで、昔の雰囲気が残っているのではないかと思ったからだ。数軒の家の脇を通過して登り坂に入る。先を行っていた若いカップルに完全に置いてけぼりになった。

 たった一人で、街灯などない真っ暗な森の中を、ヘッドランプの灯りだけを頼りに登っていった。一旦、先ほど別れた道に合流したが再び分かれ、この辺りで明るくなり、ここでも旧道を選んだ。この後、2カ所でも同様であった。足が痛いのに、そういうことをする自分に呆れたが、好奇心の方が強かった。歩いているのは私一人で、時々民家が現れるものの、のんびりとした林の中の田舎道であった。こちらの道沿いにもアルベルゲがあり、きっと静かでいい雰囲気なのではないだろうか。

霧が晴れ、雲海が見える
前方をゆく巡礼

 思った通り、霧が取れるに従って、風もなく穏やかないい天気になった。朝の霧は上天気の兆しなのだ。これはカナダでユーコン川下りをした時に経験したことだ。高度が上がり、遠くには雲海が見える。この辺り、綺麗な風景が続き、心が和む。教会があり、付属のお墓があった。珍しいのでいくつか写真を撮った。

教会の墓地

 しばらく行くと大勢の人が群がっていたので、何かと見れば、バッテリー付きの電動車椅子に乗った数名の重度身体障がい者が、付き添いの人たちと一緒に道に広がって歩いている光景に出会った。かつて、こういう風景に間近で接し、今も関わっている私としては、これは見逃せないチャンスであった。スペインで身体障がい者が置かれている状況がどのようなものか、その一端でも垣間見ることが出来るのではないかと思ったからだ。そこで、彼らに歩調を合わせて歩いた。

警備の警官

 途中、警官がいたので、敢えてこれは何かと聞いたら、他の車とトラブルが起こらないように警戒しているとの返事であった。私が聞きたかったのは、この集団行動の意味であったのだが・・・。私の語学力ではここまでが限界であった。

 町の中ではなく、景色がいい郊外でカメラ撮影をしていることや、警察との連携、その先の方に、彼らが乗る車が待機していたことなどを考え合わせると、ソフトな啓蒙的デモンストレーション行動の撮影のようであった。これがスペインの現状なのだろう(決めつけてはいけないが)。ただ、この後も、スペインでは町中で、身体障がい者を見ることはなかったような気がする。

 道を歩いていると、道路脇に家の形をした建物があるのに気がついた。これは「オレオ」(写真)という高床式倉庫で、ジャガイモやトウモロコシなどを保管する倉庫である。初めは屋根に十字架がついていたので、宗教的な意味合いがあるのかと思ったが、下のほうに鼠返しがついていたので、倉庫だとわかった。日本の弥生時代の高床倉庫と同じである。道路に面して建っているのは、その家の格式・経済力を誇示するためであろうか。

穀物倉庫

 今日宿をとるパラス・デ・レイPalas del Reyの町でも、町中を過ぎた場所あたりで宿を探した。今日の宿は民営で、私は二番目の客であったが、洗濯物を干して散歩から帰ってくると、ほぼ満員状態になっていた。男女同室であった。ベッドにはカーテンがつけられ、わずかなりともプライバシーが保たれている。

この日泊まったアルベルゲ

 本日の移動は、21.9km、46,147歩であった。昨日と同じ距離であったが、今日の方が4000歩ほど多い。これも私が旧道の方を歩いたからであろう。だから、移動距離も公式よりも3kmほど長い。

角質化して硬くなったマメ


夕食はマカロニとサラダ、プリンのデザートであった。美味しかった。

アルベルゲでの食事風景

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