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「ユーコンを流れる」2019 ユーコン川344km、8日間一人旅⑦

6)4日目(8/31) 「ユーコン川に合流した」

 
昨夜、オーロラを見たことで、気持ちにも変化が生まれた。川はゆっくりと右に左に蛇行を繰返しながら流れている。そのため、川は川底と両岸を侵食して、両岸は侵食で剥き出しになった崖が白く続いている。日本はまだ真夏だというのに、ここでは木々は既に色づき始め、初秋の風景が広がっている。しかし、日本のような赤の落葉樹や緑の常緑樹がなく、黄色だけで単調である。これを見て、日本の紅葉の美しさを再認識した。

 このあたりから、山火事の跡が目に付くようになった。地図にはBURNと記載されている。野田氏の本によると、山火事は森林に新陳代謝を促し、動物が寄って来る効用があるという。最近は、敢えて消火しないとも何かで読んだ。自然に任せているのだろう。

 川岸では、米国の国鳥である白頭鷲が丁度子育て中で、母鳥がヒナに寄り添って世話をしている微笑ましい風景に何度も遭遇した。

 また、途中で上陸できそうな場所があり、森の中を散策すると、金鉱堀りの廃屋が数軒残っていた。小径沿いの木には紅い実がなっており、ベリーの1種なのだろうか、食べてみると、それなりに美味しかった。この廃屋の主もきっと摘んで食べたのではないだろうかなどと想像した。

ゴールドラッシュの廃屋

 川は所々で白波が立った瀬が現れ緊張するが、大して揺れることもなく通過できた。ただカヤックの底が瀬に乗り上げて動かなくなって、降りて引っ張る場面もあった。今年は水が少ないのかも知れない。

 分岐点で流れの勢いに押されてしまい、本流から離れてしまうことが何度かあった。流されまいと頑張って漕いでみたが、無駄であった。どこに連れて行かれるのか分からず不安があったが、最終的には本流に合流する。ただし、その分遠回りとなる。ただ、山の場合とは違って、道に迷うような心配はない。

 岸辺にビーバーの巣がある。澱(よど)みになっているところで、2度ほど水面下から何か突き出ているものがあった。それが「土左衛門」が水中から手を突き出している様に見えて、気持ちが悪かった。私がテリトリーに近づいたので、ビーバーが尻尾を突き出して威嚇したのだ。

 午後、フータリンクHootalinquaでユーコン川の本流に合流すると、一挙に川幅が広がった。行程は、ここで丁度半分である。水量も増えて、流れが早くなった。また、他のカヌーに会うことも増え、手を振って互いに挨拶を交わす。彼らは皆団体で、単独行は私だけのようだ。

 午後になると眠くなる。疲れも溜まってきているのだろう。この日は、地図にGOOD CAMPと表示された場所が数カ所あったが、流されてうまく接岸できなかった。ここが一人の辛さである。遅くなってようやく川沿いに夜営地を見つけた。中洲ではないので、クマ除けの焚き火には大きな薪をくべた。後で、薪を探しに周囲を歩くと、同じような焚き火の跡を見つけて少し安堵する。

「ユーコンで 熊に負けじと マーキング」

 持って来た5リットルの水がなくなり、あと半分になった。1日中ほとんど歩かず、座位の姿勢なので、歩こうとすると腰が痛い。オーロラを見た。

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