ミッキーマウスが優しい人を傷つける

私はいつもミッキーマウスの着ぐるみをきていて、他人が求める人間を演じることができる
この技術は幼少期から培われたもので、私の生きる術だった。
着ぐるみの下がどんな姿をしていて何を考えているかは、私も、この世の誰も知らない

表情、態度、相槌、返答、
何を言えば、どう聞けば、相手が気持ちよくなって、私を好いてくれるのか。
その人に合わせて即座に判断して実行する。無意識に。
初対面では老若男女問わず好感を持たれ、
就職面接は無敵だったし、グループディスカッションはいつも高評価だった。
明るくて、気遣いができて、よい人
これが私の「前半だけの」周りからの評価。

先日、ある社員が退職した
同性で、少しだけ年上で、子供がいて、女子の味方で、化粧がちょっとだけ濃くて、テキパキしてる。
すれ違うとよく話した。
どんなに死にたくても、話には興味を持ったし、色んな話題が出てきた。
表情も、声も、抜群に明るくした。

退職する数日前にランチの約束をしていたけど仮病を使って、彼女の最終出社日まですべて在宅勤務にした
最終日には私用の菓子折りを他の社員に託してくれていた
私と話して癒されたと、最後までとても良い人だった

私は今回も最後に逃げた
いつもみたく、いとも簡単に人との関係を断ったプライベートのLINEを交換しなくて済んだことにすごく安心した
それだけが気かがりだったから

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