執念深い猫はちょっとどうかしている

実家の執念深い猫は、執念深いくせをして、その執念ぶかさから本人も逃げまわる。

意味がわからない?

同意しかないです。

しかし、彼は逃げます。

下手な英会話のようだが、事実は事実だ。執念深い猫は、執念深くない猫が抱っこされて愛でられていれば、そのさまをジーっと見つめている。覚えている。次は、執念深い猫もどうにかしてナデナデして愛でるというミッションが発生するのである。

さもなければ彼は執念深くない猫の方を襲うのである。
次に、愛でていると、このイベントは発生しなくなった。執念深い猫は、執念深いのである。本人いや本猫にすらコントロール不可能なほど行動がちぐはぐ。

実際に次に抱っこしようとすると、逃げる、逃げる、逃げる。
どうにか捕まえて愛でるとこんどは悲鳴をあげる。にゃーう、なーお、甲高い声でウナウナ言う。しかし悲鳴は悲鳴ではあるが彼はこれで喜んでいるのだ。

なにせ、これをしないと、執念深くない方の猫が襲われるのだから……。

猫とはふしぎな生き物だ、そう思った時期が私にもありました。

だが違う。

これはこの執念深い猫の性格だ……。
めんどうくさい性格をしているだけだ……。

逃げまわる、そのくせ執念深く自分も愛でられたいと念じている、執念深い猫。一途であることは美徳と個人的には思う。それほど私を好いてくれて有難いとさいきんは思うことにした。

逃げ回る彼を追いかけるあいだ、とかく、私も脳内はヒマであるからだった。
執念深い猫に執着されていて、いやぁ有難いなぁ、かわいいなぁ、はよ抱かれなさい。素直になりたまえ……。

執念深い猫は、私に、複雑な心理構造の在り方を、実在を、教えてくれる、貴重な一匹の友人である。いやはや本当によくわからないんだもの。


END.

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