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【新説・魚食レポvol.8】酢締めコハダの冷やし中華

蒸し暑い日は魚を食べたい。

かつ同時に麺をズズッとすすりたい。
そして目の前には売れ残りのコハダ。
決まりましたね。
料理していきましょう。

【素材データ】
魚種:コノシロ(コハダ)
サイズ:約70g(体長10cm位)
産地:千葉県船橋港
漁法:巻き網
(某有名漁師Oさんがとったものです!)

東京湾でとれた、いわゆる「江戸前」のコノシロ。(もっと大きくなると関東ではナカズミ、コノシロと呼ばれます。)

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おやおや...
目が少し充血して頬がほんのりピンクになってます。
実はこの魚、

6/18水揚げ(日戻りの巻き網船にて)
6/19市場へ入荷
6/20私が売れ残りを購入

何を隠そう中間流通業者とお客さんのマッチングミスで、6/19、6/20と2日連続売れ残ってしまったもの。市場で時折見られる「トメもの」というやつです。
鮮度が落ちると経験上、コノシロやニシンはエラ蓋が赤くなりやすいです。
また、コハダなど小さい魚は腐敗の早い内臓比率が高いため、特に注意です。

さてさて身質はどうなっているでしょうか。

ドキドキな下処理の始まりです。
ここからはキッチンを汚さないよう、新聞紙やキッチンペーパーをひいて作業するのがオススメ。
ウロコを包丁で取り除き、頭を黒い斑点模様を目印に切り落とします。
腹も肛門を目安に大胆にカット。
内臓を捨て、血合を綺麗に水で流します。

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これをドンドコ大名卸にしていきます。
肝心の身はどうかというと...

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全然綺麗でした!
今回のコハダは漁師さんもキンキンに冷えた海水氷に入れてくれてあり、市場でもしっかり冷やして保管していたからでしょう。
多少腹は弱っているものの、やや深めに削ぎ落とせば全く問題なく酢締めに使える品質です。

両面に塩をふって30分おき、適当に配合したお酢に砂糖と昆布を入れて冷やしておいたものに40分ほど浸して酢締めにします。

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酢締めの効果はpHを下げることによる殺菌、味付けに加え、炭酸カルシウムを溶かす効果もあります。コハダは小骨が多いニシン科の魚なのでピッタリの下処理方法なんですよね。
(ちなみに細菌が育ちやすいpHが7付近に対して、お酢は2-3くらい)

余談ですが、酢締めのとき。
僕は腹骨を落とさないで酢締めにして、食べる前に削ぎ落とす派です。
酢締めにより締まった部分を少なくした方が食感が好きなんですよね。
という訳で酢締めにした後、水に通して水気をふきとり、皮目を下にしてペーパーを敷いたバットに置きしばらく寝かせておきます。

冷やし中華はこちらのレシピを参考に自家製のタレを作って準備しました。

トッピングは、錦糸卵、キュウリ、大葉、煮椎茸、自家製ガリをチョイス。
もろもろのトッピングを済ませたら、酢締めコハダの腹骨を削ぎ落とし最後の仕上げ。

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皮目を上にし、やや斜めに細切ります。

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これをデデンと冷やし中華にのせたら、いよいよ完成です!

酢締めコハダの冷やし中華

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手前味噌ながら...

カッコいい〜〜〜!!!

噛むと皮目の脂とほどよい塩気がジワッとしてたまりません。

脂が乗った大きめのコノシロは10月以降の冬場が旬で、通はこちらを好みますが、コハダは夏が旬で7月以降に入荷が増えてきます。
来月にでもなると、有明海での投げ網がスタートして多くとれはじめ、それが関東の市場に送られるのでよく見られるようになるでしょう。
(今年は新型ウイルスの影響で漁師さんがどれくらいとってくれるかは未知数ですが…)

関東にお住まいの皆様、もし魚屋さんで見かけたらハムの代わりに色々と試してみてはいかがでしょうか?


あ、
翌日、寿司も握りました。

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うめぇ~~~~!!

ぶっちゃけ寿司のが美味しかったです笑
ハデな味の魚ではないため、シンプルな料理の方が活きる気がします。
薬味も写真のようなガリを刻んだものや、大葉の細切りを少しのせるくらいが好きです。
お寿司はやっぱ最高ですね。
コハダが食べたくなった方は是非お寿司屋さんへ行きましょう!


かにへーの豆知識

【コノシロの資源量と水揚げ量について】
まずは全国の海区別の水揚げ量の推移を見てみましょう。

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2008年は7000トン以上あったのがジワジワと減り、ここ数年は5000トン前後で推移しているようです。
関東の市場で見かける「シンコ」「コハダ」サイズのコノシロは佐賀や熊本産の有明海(東シナ海区)での投げ網ものが多く、小さいものをとるが故に産卵数とともに資源自体が減少していかないかは心配です。
瀬戸内海区も減っています。アミエビやサッパも近年漁獲が少ないという話を聞くので、こちらも資源がどうなっているか心配です。

2018年における県別の漁獲量も見てみましょう。

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今回食べた千葉県産がNo.1!
冬季の「コノシロ」サイズの水揚げが多い印象があります。
その次に熊本、佐賀と有明海のある産地が続きます。
大阪は400トンですが、過去1990年後半には大阪湾で9000トンとられたことがあるそうです。当時はマイワシの代替とする飼料用として狙ってとられた結果らしいのですが、それだけでそんな変わるのか…振れ幅があまりに大きく何が起こっていたのか謎です…。

「小さいものほど価値がある」

小柄な僕としては自信を与えてくれる言葉ですが、現代の減りゆく水産資源にとってこんな怖いことはありません。コノシロは、シンコ>コハダ>ナカズミ>コノシロと小さいほど相場が高くつく魚です。(売れ残ると売り先が限られるが故に大暴落もするんですが...)そのため1歳魚未満であるコハダ以下ばかり狙いにいってないだろかと資源についての心配が多くなってしまいました。
コノシロはマイワシとニシン科の近縁種であり、似たような長期変動傾向を示すといわれています。気候変動に影響をうけて大きく資源量を変えるのです。
ただ中でもコノシロは「主に内海、内湾に生息している」魚です。人為的な影響が強いエリアにいる生物だからこそ、難しくも資源管理が重要な魚に思えます。

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ごちそうさまでした!

参考資料

漁獲量資料からみた日本近海産コノシロの長期変動(2002,黒田ら)
瀬戸内海における主要底魚類の漁獲量と資源量の推移
第三春美鮨さんの仕入覚書

サポート頂けたら勿論ありがたいのですが、出来たらそのお金でご自身で魚を買って捌いてみたり、居酒屋でプロが作る魚料理を食べてください~~!!