昨年書いた記事が下書きにあった。
そのまま出していい気がしたので掲載してみる。
西陽の銀座
令和4年5月29日。
まだ5月だというのに、数時間外にいればこんがり肌が焼けそうな暑い日だった。
丸の内のFUJIFILM Imaging Plazaに、借りていたレンズを返却しに訪れたのが夕方の4時。少し時間ができたので、有楽町まで歩いた。
駅に着くとビルの間から強烈な西陽が照らす。この眩しさを感じた瞬間、僕は1年ぶりに本当に「写真を撮ろう」と思った。
強烈な光が生む、光と影のコントラスト。
線路の反対側に広がる銀座界隈に、このコントラストがマッチしているような空気を感じた。
川本源司郎と銀座
令和2年1月、こんなことがあったという。
銀座を数回歩いたことがあれば、知らずのうちに誰しもが目にしているはずだ。
「源」のマーク。
または縦看板の「MARUGEN」の文字。
クラブや画廊、いかにも「銀座」という感じの華やかな昭和時代を思わせるビルのいくつかに、この文字がついている。
僕は丸源15ビルの前でiPhoneを構えていた。
このビルの一階はずっと前から、西洋の貴族とか魔女みたいなイメージの古美術品がところ狭しと置いてある。「こんなもの、どこの誰が買うのだろうか」と思うのは、僕が銀座の人ではない証拠だろう。少なくとも川本氏が住んでいた豪邸にはこういったコテコテな美術品とやらがたくさん置いてあったようだ。
今やその豪邸も廃墟として扱われ、廃墟系Youtuberが侵入するネタになっている。
廃墟となった豪邸の別館のような佇まいで、今も賑わう銀座の一角に古美術品が取り残されていた。
大通りの方に向かって歩こうとすると、ぐにゃぐにゃと空間を捻じ曲げるように光を乱反射させる、奇妙なビルがそびえ立っていた。所狭しと律儀にひしめき合う銀座のビル群の中で、小さいころにSF系のアニメで見た「異次元への扉」のような、特異な存在として、強烈な夕日を自慢げに浴びているように見える。
川本氏が逮捕、実刑判決となった経緯は様々あるだろうとは思うが、実際彼が登っていた時代にそういうことはなかったわけで、「彼が力を及ぼさない銀座」というのが「現在の銀座」とも言えるだろう。
現在90歳。娑婆にでてきた頃の銀座は、彼の目にどのように映るのだろう。