最小の物語は「王が死んだ」で表せる。これを創作として発展させるのは「自分の言葉で語る」こと。

 進捗どうですか?
 2歩進んで3下がるような日々を過ごしております。

 僕はいま編集者として書籍編集に関わりつつ、これもまた書籍編集の一環として「すごい創作術ラジオ」という企画をやっています。

 これは「創作術の本を100冊読んで、極意を1冊にまとめてみた」という主旨の本を作るための一環なのです。
 大量の創作術本を読みながら、これまで自分が触れてきた「物語」や「ストーリー創作」「プロット構成」などに、改めて向き合っています。

 向き合ってみて、いろいろな創作に関するテクニックを見てきて、ひとつ痛感したことがあります。

 それは、「自分の言葉で語ること」の重要性。

 創作術の本を読んでいると、中には「世の中には創作術の本がこんなに多くあるのに、なぜこれを書いているのか」という疑問を呈しつつも、それでも書く意味があると記されているものがあります。

 なぜ、こんなにも多くの創作に関する本が出ているかといえば、それぞれの著者が「自分の言葉で創作を語っているから」なのだと感じました。

「ハリウッド脚本術」と呼ばれる技法にしても、元ある理論をその著者が咀嚼して、自分のやり方として成立させています。読み進めてみると、創作術の本もまた、創作物としてのオリジナリティやテーマ、コンセプトを持ち合わせています。

「自分の言葉で語る」からこそ、この世界には星の数ほどの物語が生まれているのです。

『物語論 基礎を応用』(橋本陽介/講談社)で、「最小の物語」として挙げられているのがこちら。

  王が死んだ。

「物語」の定義(のひとつの解釈として)は「時間的な展開がある出来事を言葉で語ったもの」としており、「状況が変化すること」を「語る」という行為で表したものであると言っています。

 この最小の物語をもう少し展開させます。
 E.M.フォースターの定義では「王が死んだ。それから王妃も死んだ」と表記すると「ストーリー」になります。読んだ通りに、語りによって時間的な展開と出来事が表現されていますね。

 それが「王が死んだ。その悲しみのあまり王妃も死んだ」となると「プロット」になるのです。プロットで重要なのは「因果関係」が説明されていること。ストーリーでは意図的に展開の間にある因果関係が隠されることもありますね。

 ストーリー
「王が死んだ。それから王妃も死んだ」

プロット
「王が死んだ。その悲しみのあまり王妃も死んだ」

 ここにある「王が死んだ。その悲しみのあまり王妃も死んだ」を、自分だったらどんな言葉を用いて展開させていくだろう、と考えること。それがストーリー創作なのです。

 じゃあ「自分の言葉」ってどう会得したらいいの?

『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』(古賀史健/ダイヤモンド社)では、インタビュー取材をしたあとに、内容に関する資料を追加でチェックしていく「後取材」の中で、語る内容を自分の言葉に落とし込んでいく、と書いています。

 つまり、情報の咀嚼をして自分の読み込んだことをアウトプットできるまで理解することが必要だと言っているのです。

 これが「創作では自分の知っていることを書け」と言われることに繋がってくるのです。「自分の知っていること」というのは、実際に体験したことなのではなくて、「しっかりと情報を咀嚼してアウトプットできる状態にあるもの」ということなのですね。

 それが「自分の言葉で書く」、なんです。

 自分の言葉で書いていくことで、文章を書くときの語彙選択が洗練され、文章のリズムや雰囲気が生まれていきます。それが「文体」として作者の個性になっていくのです。

 その文体を生み出す方法は『工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素』(ラリー・ブルックス、シカ・マッケンジー/フィルムアート社)によると、

「書く。とにかく書く」

 なのだそうです。
 おい、“工学的”はどこにいった。

 ……ということを書きながら、様々な創作術の本を読む中で見つけてきた数々の「極意」を、自分の言葉として落とし込んでいく作業をしています。

 少々更新が遅れてしまっていますが、「すごい創作術ラジオ」で喋ることがアウトプットになっていますし、カクヨムで連載している「“すごい創作術”を駆使したら、新人賞は取れるのか!?」では、実践的に自分の編集者としての視点をアウトプットしていっています。

 
「創作術の本を100冊読んで、極意を1冊にまとめてみた」の書籍では、数多ある創作術の教えから、自分の創作スタイルにあったものにアクセスできるような、創作ガイドの役割を強くしたいと思っています。
 お悩み解決として役に立つようなものにしたい……それがいまの目標です。

 


 
 


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