高貴なムラサキオカヤドカリ氏
猫のちゃまるのカリカリのお皿が
カチカチと音を立てていたので
何かと思えば
お皿の上にムラサキオカヤドカリ氏がいた。
ムラサキオカヤドカリ氏は
人間かカニかで言えば
カニの方に近い種類ではあるが
カニとはそれほど仲が良さそうではない。
位が違うのだろう。
ムラサキオカヤドカリ氏は
高貴な感じがする。
天然記念物という
すごそうな肩書きもあるし
色も高僧を思わせる紫だし
まっすぐ前を見て歩くし。
それぞれいろいろな形の家を背負って
オシャレを楽しんでいる。
堂々としているのだ。
一方で、
カニは庶民的だ。
庶民の中でも
マイノリティーだと思う。
いつも隅っこを横歩きし、
陽の当たるところにはでてこない。
居心地のいい穴を掘って
そこから空をのぞいている。
わたしも
カニと同じように
横歩きなので
ムラサキオカヤドカリ氏に会うと
すこし緊張する。
テレビでは
ここ最近
ムラサキオカヤドカリ嬢の
結婚報道が流れている。
いろんな人がそれをネタに
あーだこーだと言っている。
勝手にいろいろ決めつけられて
あーだこーだいわれるのはごめんだ。
わたしは、
高貴に生まれなくてよかったと思う。
そう思うと
ムラサキオカヤドカリ氏も
いろいろ大変なのかもしれない。
彼の背中が
少し疲れているようにも
みえてきた。
白いお皿に紫がはえる。
アフリカマイマイの殻も
上品で似合ってる。
だいじょうぶ。
あなたはとっても
スタイリッシュで
美しいですよ。
ただそれだけで
そのままで
それでいいんですよ。
みんな
生まれ持ったそれぞれのカタチで
それぞれの場所で
のびのびと生きていけばいい。
自然はそれをぜんぶ
包容する懐の深さがある。
だからわたしも
自然の中にいると
安心するのかもしれないなあ。
などと
考えた秋の夕暮れ。
あおきさとみ