1時間並んだ喫茶店を出てきた話

カウンセリングの帰り道。
まだ元気があったし、せっかく都内に出てきたので、友人から聞いた近くの美味しいケーキ屋に行ってみることにした。
店の近くに行くと、遠目にも分かる人の列。30人弱くらいか。

喫茶と、持ち帰りで列が分かれている。
どうせ後の予定もなし、喫茶に入ってみようと、待つことにする。

都心の有名老舗ケーキ屋。
小一時間、喫茶待ちの椅子に座ってぼんやりと客を眺める。

ストライプのスーツに、先の尖った革靴を履いた男性。40代くらい。近くの広告代理店マンか。
レジ前でモタモタしていると思ったら「現金使えないなんておもわなくってねー」と大声で笑っている。
「普通使えますもんね」と微笑んでくれる初老の店員さん。

黒いスウェット生地の服にショルダーバッグを掛けた男性。30歳くらいか。
「お持ち帰りのお時間は?」
「時間によって何変ります?」
「保冷剤が、2時間分まで無料になります。」
「じゃ、2時間分で」

40代くらいの女性4人組。レジ前で注文するのを譲り合っている。
どうぞ、
いえいえ、
お先にどうぞ、
いえいえ、
どうぞどうぞ。

「急いでるんだけど、入れてくださる?」
せかせかと入ってくる50代くらい女性。黒髪にかっちりパーマ、大きな体にぴったりとしたスーツ。秘書さんとかだろうか。
アニメ声の女の子を真似したような甘ったるい声。
「焼き菓子ないんだけど」
「5000円未満の箱を2つつくりたいのですけど」
「ちなみに、これでいまいくらになります?」
「これだといくらくらい?見せてください」
「お客さんお待たせして急いでるの、これ自宅用、先にレジお願いできる?」
焼き菓子をむんずと掴んで箱に並べる。
自分で喋って自分で笑っている。

眺めているだけですっかり疲弊してしまった。
もうケーキは良いので家に帰りたくなってきた。が、ここで喫茶店の席が空いたらしい。喫茶の2階席に案内される。

こじんまりとした店内。
4、50代女性の4人グループが2組。それぞれきゃあきゃあと盛り上がっている。

隣のテーブルには、若い男女。
男の子は、顔が小さくて、整っている。韓国アイドルっぽいカット。ベージュトーンでコーディネートされた服装。
そのトレンドイケメンが女性グループの声にも負けず大声でドヤつきながら話している。
「彼の方と、彼女のほうがインターンに参加したんだけど、彼女のほうがインターンうかっちゃったわけ。」


もう、ダメだった。
ここでケーキなど食べられない。
お店の方に謝り注文したケーキは持ち帰り用に包んでもらい店を出た。


いろいろな種類の見栄。自分の嫌いな要素が、それぞれ抽出されて、押し固められて人間になって、あの列に並べられているようだった。

東京のなかでも、あの街は特に嫌だなあ、と思いながらヘトヘトになって帰路に着いている。

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