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SNSに蝟集する"ナチ流"プロパガンディスト~「Dr.ナイフ」や「エリックC」を炙り出したコミュニティーノート~

はじめに

小論は、日本のSNSに集まっている「自称リベラル」が、ヒトラーと似た宣伝手法を用いていることを指摘するものです。保守系と自認する方は読んでも得ることはありません。また表現の自由への反対を表明するものでもありません。なお、小論は2023年8月2日現在に閲覧可能なツイートに基づいています。(8月6日、20日、23日、24日、11月6日に追加更新)


コミュニティーノートに暴かれた人たち

ツイッター(Xに名前が変わりましたが、小論ではツイッターとします)に「コミュニティーノート」という機能がついたのは、2023年夏のことです。「コミュニティーノート」のスタートを知らせるニュースは7月6日付けで配信されています。

7月7日には、「役に立つコミュニティノート」の日本語アカウントが初めてツイートしています。下のツイートです。

このコミュニティーノートによって、不正確なツイートには指摘が入るようになりました。

その中でも特に頻繁に指摘が入る常連がいます。「Dr.ナイフ」(@knife900)「エリックC」(@x__ok)です。

後述しますが、高名なジャーナリストにも常連はいます。それでも実名のため、一定の抑止力が働くのでしょう、この2つのアカウントに比べたら、回数は少ないです。逆に言えば、この2つのアカウントは、匿名を隠れ蓑に、根拠薄弱な情報を垂れ流していると"邪推"したくなります。

ツイッターの公式ホームページによると、コミュニティーノートとは、

誤解を招く可能性があるツイートに、Twitterユーザーが協力して役に立つノートを追加できるようにすることで、より正確な情報を入手できるようにすることを目指しています。

ツイッターのガイド(https://communitynotes.twitter.com/guide/ja)

コミュニティーノートを書くことができるのは、「協力者」といわれる人たちで、「ノートの作成と評価を志願してコミュニティノートに登録した、通常のTwitterユーザー」です。

そして、

人々が多様な視点から「役に立つ」と評価したノートだけがツイートに表示されます
コミュニティノートは多数決に基づきません。幅広いユーザーにとって役に立つノートを特定するため、過去の評価において、評価が相違することのあった協力者の間で「役に立つ」という評価が一致することがノートには求められます。これにより評価の偏りを防止できます。

ツイッターのガイド(https://communitynotes.twitter.com/guide/ja)

この仕組みのもと、いわばユーザーの「集合知」によって認定された折り紙付きの不正確なツイートだけが指摘付きで表示されることになります。指摘されるツイートは、右派、左派、反ワクチン派、与野党支持者やノンポリの人、怪しげなお金配りアカウントなどが入り交じり、ツイッターユーザーの「縮図」の様相を示しています。

なお、コミュニティーノートが誕生する前に「Dr.ナイフ」がどのような出鱈目をつぶやいていたのか、その狙いはどこにあるのかは、以下に2回にわけてまとめてあります。

「Dr.ナイフ」「エリックC」の不正確ツイートは2日に1度を超える

「エリック C」(@x__ok)のツイートに初めてコミュニティーノートの指摘がついたのは7月16日でした。

これ以降、8月1日までの間に、計9回もコミュニティーノートがついたツイートをしています。半月に9回ですから、2日に1度以上のハイペースです。

「Dr.ナイフ」に至っては、7月21日から8月2日の間に9回もノートがついていますから、1.5日に1度ものハイペースになります。

では中身を見てみましょう。8月6日以降は新しい順に、それ以前のツイートは「エリック C」「Dr.ナイフ」の順にならんでいます。

<2023年8月6日以降の不正確なツイート他>

Dr.ナイフ「立憲民主が欠席すれば憲法審査会は成立しないぞ」→ノート「過半数で成立だよ」

ナイフの特徴は、ちょっと調べればすぐわかることを調べずに書くことですが、これも本領発揮ですね。

Dr.ナイフ「処理水は安全だといえるのか!」→ノート「それ処理水じゃねえよ」

あまりにノートに叱られるので、2か月ほど慎重にツイートしていたナイフですが、そろそろ我慢ができなくなってきたようです(笑)。生まれつきの虚言癖なのでしょうか。

望月衣塑子「大野智はNHKプロフェッショナルにも登場した」→ノート「パロディ動画に騙された(笑)」

これほど簡単にパロディに引っかかっていいのでしょうか。ジャーナリストとしての資質が疑われます。

Dr.ナイフ「東京新聞や共産党が言っているからダメなのか」→ノート「言っていることが間違っているからダメなんです」

論調がわかりきったところからしか引用できないのが、この人の弱点ですね。

同じことを何度も繰り返すのは、後述しますがヒトラーの手口です。

Dr.ナイフ「反対派を叩きたいだけ」→ノート「理由書いてあるよ」

同じことを何度も繰り返すのは、後述しますがヒトラーの手口です。

Dr.ナイフ「本当に安全なら、慌てて海に放出する必要はない」→ノート「理由書いてあるよ」

同じことを何度も繰り返すのは、後述しますがヒトラーの手口です。

望月衣塑子「セシウム基準値超えてる」→ノート「場所が違っているから」

プロのジャーナリストでも、間違うときは間違います。間違いとわかっていてもツイートしているのかもしれません。

Dr.ナイフ「コミュニティーノートの廃止をお願いします」→イーロン・マスク「ブロック機能をやめてやる」

DR.ナイフ氏はコミュニティーノートが大嫌いになったようです。

Dr.ナイフ「電気代を下げるために原発必要ない」→ノート「訂正とお詫びがついている記事を真に受けるのか」

息をしていないのは、だれでしょうか。

<8月2日以前のツイート>

エリック C「福一の処理水は中韓より危険」→ノート「そんなデータはない」

根拠のない主張がバッサリと否定されています。

エリック C「東日本大震災当時の首相は自民党の安倍」→ノート「民主党の菅直人」

まさか知っていてこんな間違いは書かないでしょうから、少なくともこの件については、無知なのだと思います。

エリック C「放射能はどんなに弱くても有害」→ノート「一定以下なら有意差なし」

ラジウム温泉は健康にいいからこそ、湯治客が来るのですが。

エリック C「どんなに薄めても危険なものは危険」→ノート「醤油」

水だって大量摂取により中毒を起こします。水も薄めて飲んだら危険。

エリック C「薄めたら大丈夫というのが科学的なのか」→ノート「影響はほとんどない」

なんども同じことを繰り返すところが、後述しますが、ヒトラー流です。

エリック C「IAEAが甲状腺がんを無視した」→ノート「無視してない。世界中の科学者が合意している」

明らかな嘘ですが、ノートがついていなければ多くの人が鵜呑みにしたと思います。

エリック C「『汚染水』と呼ぶ人を目の敵にしている」→ノート「汚染水ではありません」

「国家とそのカルト信者」といいますが、カルトはどっちだという話のような気がします。

エリック C「福島県人をいじめるな」→ノート「あんたの方が風評被害の原因だ」

福島の人に寄り添うふりをして、自分の主張を通そうとするのは、言葉や論理では負けるとわかっているからでしょうか。

エリック C「情報操作で騙されている」→ノート「数字の読み方がわかっていない」

案の定、一番最初につけられたノートに、リテラシーのなさを指摘されていたのでした。

エリック C「国が信用できない」

以下のツイートはコミュニティノートがついたものではありません。

日本ファクトチェックセンターが、

処理水にトリチウム以外の核種も含まれているのは事実だが、国が安全と判断する基準以下に処理されている。拡散した言説は安全性に関する情報に触れておらずミスリードで不正確。

と配信したことに対するツイートです。事実を軽視し、主張を優先するのを、プロパガンダといいます。

全方位に不正確をまき散らす「DR.ナイフ」

次に「Dr.ナイフ」(@knife900)です。この人のツイートの信用のなさが、コミュニティーノートで可視化されました。

Dr.ナイフ「マイナ保険証、顔写真かぶったら使える」→ノート「起こりえない現象」

他人の写真をお面にして、頭からかぶったところ、機械が誤認証してしまったという実験結果を掲載した東京新聞の記事についてのツイートです。そもそもお面かぶって病院に現れたら、誰が見てもおかしいとわかるだろうと、無数の突っ込みが入った記事です。

東京新聞の記事にもコミュニティーノートがついています。実験した医師がマイナカードに反対している共産党系の医師だということも判明しました。

なお、同内容のコミュニティーノートがもう一つありますが、同じなので割愛しました。

Dr.ナイフ「保険証の不正利用は無視できる件数」→ノート「身分証としての信頼を失うレベル」

知ったかぶりで失敗しています。

Dr.ナイフ「コミュニティーノートはどこのだれかも分からない」→ノート「協力者の評価で決まる」

ノートで不正確な情報を指摘されるのが我慢ならないのかもしれません。

Dr.ナイフ「保険証の不正利用多数はデマ」→ノート「本人確認の手段としての信用を失うレベル」

同じことを何度も繰り返すのは、後述しますがヒトラーの手口です。

Dr.ナイフ「コミュニティーノートを評価するのはネトウヨ」→ノート「根拠なし」

同じことを何度も繰り返すのは、後述しますがヒトラーの手口です。

Dr.ナイフ「医師や看護師に病歴や投薬歴を知りたくない人が多い」→ノート「それ知るの、医師の仕事やろ」

これ読んだときお腹がねじれるほど笑ってしまいました。

Dr.ナイフ「ALPSはちゃんと動いているのか」→ノート「動いている」

一般的に言って、専門知を信じない人は、陰謀論に流れます。

Dr.ナイフ「トラック100キロ以上で走っているぞ」→ノート「20年間どこ見てたんだ」

2003年からの制限を知らずに、印象だけでものを言っています。匿名の気軽さで、検索すれば3秒かからないようなことでも、調べもせずにつぶやいてしまうのですね。

その他大勢の実名の人たち

この2大巨頭に続いて、準常連の人たちがいます。このうち、実名のアカウントをいくつか紹介しておきます。全部は無理なので、各人一つづつです。

これらの人たちは、フリーや新聞社のジャーナリストであることを明かしてツイートしています。その分、責任を背負っていますから、匿名アカウントよりは評価できます。

そして、変なツイートをすれば、本人ばかりか、所属する組織にも迷惑をかけますから、コミュニティーノートが始まってからは、あまり無茶なツイートはしなくなってきたような気がします。そこが匿名アカウントと違うところです。

「真実でなくていい」 ヒトラーの手法

見てきたように、「Dr.ナイフ」(@knife900)も「エリックC」(@x__ok)も、同じテーマについて繰り返し同じ主張をし、その都度、コミュニティーノートから指摘されています。ノートの誕生によって、そうした繰り返しの手法が可視化されたわけですが、それ以前は多くの人が誤った認識へと導かれたことと思います。

ここで思い出さざるを得ないのが、ヒトラーです。彼の考えは以下のようなものでした。

効果的な宣伝を行うには、大衆の理解力をよく考えて、雑多で多様なことを言うのではなく、テーマを限定して繰り返し語ることだと言います。「大衆の受容能力は非常に限られており、理解力は小さいが、そのかわりに忘却力は大きい。この事実からすべて効果的な宣伝は、重点をうんと制限して、そしてこれをスローガンのように利用し、そのことばによって、目的としたものが最後の一人にまで思いうかべることができるように継続的に行わなければならない」とヒトラーは断言します。

『ヒトラーの正体』(舛添要一著)

さらに、ヒトラーは、繰り返す内容は真実でなくてもいいと考えていました。

ヒトラーは、真実ではなくても、自分だけを一方的に褒め、責任は敵に負わせることが宣伝の眼目だとして、宣伝は「真理を客観的に探求すべきではなく、絶えず自己に役立つものでなければならない」と説明しています。

同書

もちろん、「Dr.ナイフ」(@knife900)や「エリックC」(@x__ok)が、ヒトラーのような明確な意図をもって、不正確な情報を繰り返し発信しているのかどうかは不明です。筆者としては、ヒトラーのような悪意はなく、不正確だと何度も指摘されてもなお、心から正確だと信じて疑わず、むしろ善意から繰り返している可能性が高いと思いたいところです。

しかし、だからといって不正確な情報を垂れ流すことの免責にはなりません。ツイッターを見ている人たちが不正確な情報によって、認識をゆがめられたとしたら、それはツイートした人の責任です。

世界一知的ともいわれるドイツ国民が、嘘を含んだ独裁者の演説に導かれて、決して踏み入れてはならない道に迷い込んでいった歴史を考えると、こうした匿名ツイートの影響は軽視できません。それが自覚的かどうかは問いません。ファシズムが、「自称リベラル」の中から立ち上がってこないとは限らないのです。

我々は、気づかない間に言論空間に広がりつつあるリベラル・ファシズムにも警戒を強めなければならないのかもしれません。エコーチェンバーの中で不正確な情報が増幅して人々の情動を間違った方向に導きかねないというSNSの危うい構造をこそ、コミュニティーノートは可視化したのかもしれません。


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