BGMとともに愉しむ「音楽のように心に共鳴する10冊」(No. 946)
考える人 メールマガジン
2022年1月20日号(No. 946)
編集者・木村元さんがお薦めする「音楽のように心に共鳴する10冊」
さまざまな分野の方におすすめの10冊をご紹介いただくリレー書評企画「たいせつな本」。今回は編集者・木村元さんに「音楽のように心に共鳴する10冊」を教えて頂きました。
音楽書を手掛ける編集者ならではのセレクションに加え、その本にぴったりの「BGM」も選んでいただきました。音楽に耳を傾けながら、本を読んでみるのもいいですね。
なお、木村さんは文筆家としても活躍されており、新刊『音楽のような本がつくりたい――編集者は何に耳をすましているのか』が発売されました。来週1月27日(木)には、分倍河原「マルジナリア書店」でトークイベントが行われます(オンライン配信もあり)
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「考える人」と私(45) 金寿煥
先週、2006年秋号特集「家族が大事 イスラームのふつうの暮らし」を取り上げましたが、他にも「考える人」では海外取材をベースにした特集を何度か組んでいます。それをいくつかご紹介したいと思います。
まずは2004年夏号特集「フィンランドの森、デンマークの暮らし」です。前半は、写真家・今森光彦さんが当地を訪れ、写真と文章を寄稿する「フィンランドの里山」。後半は、医療・福祉先進国、原発ゼロ、男女平等社会を実現するデンマークを編集部が訪ね、その暮らしぶりをレポートしています。
今ではすっかり教育や福祉、環境保護などの分野で「ロールモデル」となり、憧れをまじえて語られるようになった北欧諸国の「生活」に密着しています。充実した福祉の背景には、25パーセントの消費税、平均して50パーセントに及ぶ所得税(取材当時)があり、それは日本に比べて圧倒的に高いのですが、取材を受けた人々は口をそろえて「税金はたしかに高いと思います。けれど、それ以上のものが市民に還元されています」と誇りをもって答えている姿が印象的です。いわく、「デンマークは世界から見ればちっぽけな目立たない隠れ家のような国ですが、この国にはすべてが用意されていると思います。この国に不足しているもの、ですか? ……うーん、思い当たりませんね」。
次はドイツです。2005年秋号の特集は「ドイツ人の賢い暮らし」で、テーマはエコロジー。「環境先進国」であるドイツが、どのようにしてエコロジーと向き合っているのか、それは日本でも実践可能なのかについて、作家の森まゆみさんと編集部がフライブルクやカールスルーエ、レーゲンスブルクを訪れてレポートしています。
2007年秋号の特集は「アメリカの考える人たち」。地域をカリフォルニア州に絞り、シリコンバレーやバークレーのレストラン「シェ・パニース」、サンフランシスコの書店や農場などをレポート。その強権的なふるまいから「帝国」などと敬遠されていた、ジョージ・W・ブッシュ政権時の米国のポジティブな側面に焦点をあてた特集です。
その他にも、「養老孟司とイギリスの田園都市を歩く」(2002年創刊号)、「堀江敏幸と歩くパリとその周辺」(2008年秋号)、「福岡伸一先生と歩くドリトル先生のイギリス」(2020年秋号)などで海外取材をしています。
本稿のために誌面をめくってみたのですが、思わずため息が漏れてしまいました。コロナ禍で海外渡航が難しいというのもありますが、「雑誌不況」が叫ばれる昨今で、海外取材に予算を割ける雑誌が今どれだけあるのか――そう思ってしまったためでもあります。
そう思うと、少々寂しくもなりますが、2002年の創刊から2010年にかけて「考える人」では定期的に海外取材を敢行し、誌面を作ってきた――そのことを確認しておきたいと思います。
ちなみに私自身もそう多くはありませんが、何度か海外取材の経験があります(「考える人」ではありませんでした)。そう言うと、社内外から「仕事で海外に行けるなんて羨ましい」なんて言われるのですが、とんでもない。移動や取材、食事の段取りなど考えるべきことが多く(そして帰国後の記事制作や経費精算……)、気が張り詰めるばかりで、楽しいことなんて一度もありませんでした。その意味でも、ここでご紹介した特集を果敢に作ってきたスタッフには尊崇の念を抱きます。
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