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#45 「ちいちゃんのかげおくり」全12時間 こうやってみました(最終回)

ちいちゃんのかげおくりの授業の終盤は、「今まで学習してきたこと」をもとに、子どもたちから出た疑問を考えていく授業にしました。

今回11時間目の授業でみんなで考えたのは、ふたつの「きらきら笑う」の違いです。

ちいちゃんが最後に一人でかげおくりをする時に、「きらきらと笑う」という表現があるのですが、最後の数十年後の時代でも、公園でちいちゃんくらいの子どもたちの「きらきらとした笑い声」といったような明らかに対比して書かれている部分があります。

ちいちゃんのかげおくりには同じ表現が、明らかに違う意味で対比して書かれているところがいくつもあります。

前回紹介した記事の7時間目でも2つの意味についてみんなで考える授業をやりました。↓

今回の「きらきら」も同じ意味ではないはずなので、そこを子どもたちと話し合いたいと思いました。

まずはじめに「『ちいちゃんのきらきら笑う』と『数十年後の子どもたちのきらきら笑う声』は同じ意味かな?」と聞きました。

クラスの子どもたちは「違う意味だと思う」と答えたのでそこからスタートしました。

まず公園で遊んでいる子どもたちは
・平和に遊んで笑っている
・明るい声、顔の汗、目、白い歯が太陽にあたってきらきら笑っている
という見てわかる「きらきら」であること

一方ちいちゃんの「きらきら」は
・死に向かう、魂の光
・家族と会えたことのうれしさ
を表現しているといった意見が出てきました。

また授業をしながら私が気になったことで、子どもたちに聞いてみたのは、
「きらきら笑う」という表現はおかしいのではないか?ということです。

「きらきら輝く」「きらきら光る」などはわかりますが、
人間の動作(走る、食べる、話すなど)にきらきらという表現は少し違和感があります。

あえてこの表現をした作者の意図をみんなで話し合いました。

「きらきら」=「まぶしいくらいに」という意味じゃないかなという意見は出ましたが、これについてはそこまで深まりはしませんでした。

この日の授業の残り時間も15分くらいだったので、「ちいちゃんのかげおくり」に今まで出てきた2つの意味が込められている表現(「青い空」「かげおくり」「すうっと」「数えるかけ声」)をおさらいをしました。

最後に振り返りとして「作者は物語の中で同じ言葉を何度も使って『何』と『何』を比べたかったのだろう?」に対する自分の考えをノートに書かせて授業を終わりにしました。

子どもたちからは
・今と昔
・戦争と平和
・喜びと悲しみ
などの答えが出てきました。

ほぼ、子どもたちの疑問もすっきり解決できてきたので、次回でちいちゃんのかげおくりを最後にしようと思いました。



【12時間目】

・この日は最後の授業でした。当初からこの物語は全12時間扱いで終わりにしようと考えていました。

・まず8時間くらいかけて、物語の人物、段落、表現方法などについて学習し、残り4時間で授業の中で出てきた子どもたちの疑問を解決できればなと思っていました。

・前時の10~11時間目で子どもたちの疑問も解決できたので、最後は「この物語は今まで習ってきた物語と何が違うか」を客観的に分析して、最後のまとめにしようと思いました。

・まず子どもたちに今まで習ってきた物語を挙げてもらいました。
「はなのみち」「大きなかぶ」「くじらぐも」「ずうっと、ずっと大好きだよ」「スイミー」「お手紙」「スーホの白い馬」「春風をたどって」…

「いままでこんなにたくさん物語を勉強してきたね」
「この話とくらべて『ちいちゃんのかげおくり』は何が違う?」と聞きました。

① まず子どもたちから出てきたのは「死んでしまう悲しい話」という答えでした。

・そこで「え?でも『ずうっと、ずっと大好きだよ』も『スーホの白い馬』も、死んでしまう悲しい話だけど何が違うの?」と聞きました。

・子どもたちから出てきたのは
「『ずうっと、ずっと大好きだよ』は『寿命で』犬が死んでしまうお話だけど、『ちいちゃちゃん』は『戦争で』小さい子が死んでしまう話、だから違う」
「スーホの白い馬もそうだけど、今までは動物が死んでしまう話はあったけど、人が死んでしまう話はなかった」と子どもたちなりに物語の特徴に気付けていたと思います。

②他には「どんなところが違っていた?」と聞くと

「同じ言葉を何回も使って意味を変えて書いている」という意味の対比が出てきました。

それに対して私から「今まで習ってきた物語では、同じ言葉の繰り返しは全くなかったのかな?」と聞いてみました。

すると、
「そういわれてみれば、大きなかぶはかぶをひっぱるをいう動作が何度も繰り返されていた」
「スイミーもはじめは黒い体の紹介で一ぴきだけ真っ黒といわれていたのに、最後は黒が目の役割になっているよ」
「お手紙も、はじめは手紙を待つのが嫌だったのに、最後は手紙を待つのが幸せになっているよ」
と今までの物語にも、「繰り返しの表現」(繰り返して最後に意味が変わること)が意外とあることに気付くことができました。

③「まだ他に今までの物語と違うところはある?」と聞くと
今度は「登場人物の設定のあいまいさ」が出てきました。
・ちいちゃんの本名がわからない
・性格や気持ちもあまり書かれていない
・スイミーやスーホのようにはじめに人物設定の紹介もない
・挿絵も表情があまりわからない
・あまりはっきり書くと、気持ちがちいちゃんに向かいすぎて読んでいてつらくなってしまうから、書かなかったんじゃないかという意見が出ました。

④最後に「『ちいちゃんのかげおくり』は今までの物語より難しかった?」と聞きました。
子どもたちは「難しかった」というので、「なぜ1、2年生の教科書には載らなかったのかな?」と聞いてみました。
・戦争というテーマが書かれているから
・残酷さ、悲しさ、家族の大切さが混ざっているから(泣いてしまう)
・(動物が話したりする)空想の話ではなく、本当っぽい話だから
・防空壕など難しい言葉がでてくる話だから
・漢字が多い、文章も多い、登場人物も多いから難しい
・起承転結がわかりにくいから難しい…

ここまで気付ければ、これから新しい物語を読む時にも「この物語はどんな工夫がされているのだろう」という視点で読んでもらえるのではないかなと思いました。

・「今まで読んできた桃太郎のような、正義の味方が悪を倒す話や、わかりやすいハッピーエンドの話だけでなく、いろんな気持ちが混ざるお話がこれから学年が上がるとたくさん出てくるかもしれないね」と話をして授業を終わりにしました。

・全12回の「ちいちゃんのかげおくり」の授業を終えて、3年前にやった時よりもいろいろな発見がありました。毎回、子どもたちと授業をやりながら計画を修正し、今日はこんなことをやってみようと考えながら進めていきました。

・そういう意味で、今回授業を「する」だけでなく、「子どもとつくっていいく」感覚もしっかり味わうことができた楽しい学習でした。

・二学期はまだ「すがたを変える大豆」や「モチモチの木」などがあります。
また子どもたちと授業をしながら新しい発見をしていければなと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。