#43 「ちいちゃんのかげおくり」9時間目までこうやってみました(9時間目追加)
この記事では、ちいちゃんのかげおくりの6~9時間目までの授業で気づいたことや考えたことなどを紹介します。
【1~5時間目の授業はこちらをどうぞ】
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【6時間目】
・前回5時間目の続きで、この物語の「時間の流れ」がどのようになっているかもう一度確認しました。
① ちいちゃんの家族でのお墓参り
(1日後)
② 次の日にお父さんが出征する
(1週間~1か月後?)
③ 風の強い夏のはじめのある夜に空襲、逃げる時にお母さんたちとはぐれる、その日は一人で寝る
④ 次の日はす向かいのおばさんと出会い、焼けてしまった自分の家を見る 防空壕で寝る(丸1日)
⑤ 家族がいないなか一人で一日を過ごす(丸1日)
⑥ 次の日、明るい光で目が覚めたちいちゃんは死んでしまう
(数十年後…)
⑦ 公園で遊ぶ平和な時代の子どもたちの様子
・前回行ったこの「時系列の整理」は、3年生の子どもたちにはまだ少し難しいと感じました。
・理由として特に③、④、⑤、⑥の場面は文章も長いので、読んでいてすごく時間が流れたように感じてしまうのですが、実際は3日たっていないくらいの時間で書かれています。
・今回もう一度文章を読みながら、この「場面と時の流れ」を確認しました。
・いつもクラスで物語を読む時「起承転結」を分けながら読みます。今回の授業で面白かったのは、ちいちゃんのかげおくりは「転」がどこになるかというところで私と子どもたちの意見がずれたところです。
・子どもたちの中で「転」は「物語が大きく変わるところ、クライマックスにつながる大きな出来事」という認識をしているのですが、その「捉え方」が私と子どもによって違いました。
ちなみに私の分け方とクラスの子ども2人の分け方は以下のようなものです。
教師(私)
起…① 承…② 転…③④⑤⑥ 結…⑦
A児
起…①② 承…③ 転…④⑤⑥ 結…⑦
B児
起…①②③④ 承…⑤ 転…⑥ 結…⑦
・「結」…⑦はみんな一緒ですが 「転」の部分の感じ方が読む人によって全然違いました。
・Aの子の③の「風の強い夏のある夜」から、確かにガラッと平和が崩れます。ここを「承」と捉えるのもありだなと思いました。
・またBの子は「この物語は、『起』が長くて『転』が短い」と話していました。
・Bの子は、⑥の「ちいちゃんが家族と天国で会えた瞬間こそがクライマックスなんだ」と話していて、それも説得力がありました。
・「どう分ければいいか」ではなく、「どう分けたか」「なぜそう分けたか」と「読み方や感じ方」をお互いに話し合ってくのが楽しいなと個人的に感じています。(場面の正しい分け方があったらすみません…)
・この日は振り返りで「みんなはどこが『転』だと思った?」と聞いて自分の考えを書かせて終わりにしました。
・この疑問も読み進めていくうちに「正解」が見えてくるかもしれないので、もう少し子どもたちと考えていこうかと思います。
【7時間目】
・この日は「はじめの場面」と「おわりの場面」の二つの「かげおくり」の比較をしました。
・同僚の先生が初任研で、この研究授業をやっていてとても面白そうだったので、私もやってみました。
・この授業のポイントは二つの「かげおくりのシーン」を「一枚のワークシート」にしておくことです。(上段に初めのかげおくりの文章、下段に終わりのかげおくりの文章を掲載しB4の用紙にまとめていました。)
・著作権上ここでワークシートを掲載していませんが、文章を教科書のページをめくりながら比べるのではなく、二つの場面を上下に並べて比較すると、面白いくらい同じ表現が繰り返して使われていることがわかります。
・今回この「意図的に同じ言葉」を使っている作者の意図に気付かせたいなと思いました。
・まず「同じ言葉」を使ってある所を聞きました。
「かげおくりのできそうな空」
「『みんなでやってみましょう』というお母さんの声」
「かげおくりを数えるかけ声」
「『とお』というちいちゃんのかけ声」
「青い空」
・この辺りの言葉は「はじめ」にも「おわり」にも、どちらにもでてきますが、「意味」が全く違います。
・これは聞き方の問題ですが「意味が違うよね」とこちらから示すのではなく、この「同じ言葉は同じ意味で使われているかな?」とまず聞いて、子どもが「違うと思う」といった後、「じゃあ何で違うような気がするのか説明できそうな人いる?」と聞きました。
・すると子どもから次のような意見が出ました。
(はじめの場面 ⇔ おわりの場面)
「かげおくりのできそうな空」
家族とかげおくりをした空 ⇔ 一人ぼっちで見つめた空
「『みんなでやってみましょう』というお母さんの声」
家族四人に聞こえていた声 ⇔ 天国から聞こえた声
「かげおくりを数えるかけ声」
遊びのかけごえ ⇔ ちいちゃんの命のカウントダウン
「『とお』というちいちゃんのかけ声」
かげを空におくる合図 ⇔ ちいちゃんの魂がおくられる瞬間
「青い空」
家族みんなで見た青空 ⇔ 戦争で誰もいなくなった空、天国の家族がいる青空
・個人的にドキッとした子どもの意見は
「命のカウントダウン」、「とお」=「ちいちゃんの死」という子どもの捉えが、正にその通りだなと感じました。
・次に「同じ言葉」ではないけど、「反対の意味で書かれている言葉」(対比になっている言葉)を探しました。
「くっきりと白いかげ」⇔「白いかげぼうし」
「かげぼうしがすうっとあがりました」⇔「体がすうっとすきとおって空にすいこまれていきました」
「お母さんが横から言いました」⇔「お母さんの高い声も重なって聞こえました」
・これらも比較すると「現世」(左)⇔「あの世」(右)の違いを意識して描かれている感じがしました。
・この日の振り返りとして「あまんきみこさんはなぜ、はじめの場面とおわりの場面で「似た言葉」を使ったのだろう」と自分の考えを書かせて終わりにしました。
・最近、「ふりかえり」では「今日分かったことを書きましょう」ではなく、このように振り返りの答えを少し「狭めて」子どもの今日の学びを確認しつつ、一人ひとり考えが「ばらけるような」バランスの尋ね方を意識しています。
・今回、「比較すること」でわかることが結構あるなと思いました。
・この授業で一番の発見は、子どもと話していて「かげおくり」=「思い出の遊び」の意味だけでなく、
「かげおくり」=「死のメタファー」という意味を、作者はきっと意図していたということにみんなで気づけたところです。
・ここをきっかけに次回「ちいちゃんのかげおくり」の題名についてもう少し掘り下げていこうと思います。
【8時間目】
・この日は題名の「ちいちゃん『の』かげおくり」の『の』にはどんな意味が込められているのか」を話し合いました。
・これは知り合いの先生から教えていただいた発問で、面白そうだなと思い今回すぐにやってみました。私のクラスではどんな授業になったか報告します。
・まず出たのが
「(ひとりぼっちの)ちいちゃんだけのかげおくり」
「ちいちゃんの思い出のかげおくり」
「ちいちゃんの出征前のお父さんからおそわったかげおくり」
「ちいちゃんとお兄ちゃんのかげおくり」
という答えが出ました
・ここで「なるほどいろんな意味があるんだね」「『ちいちゃんにとって かげおくりとは何か』を考えればいろいろ他にも答えが出てきそうだね」と話してもう少し答えが出ないか聞いてみました。
「ちいちゃんのさいごのかげおくり」
「ちいちゃんのひさしぶりのかげおくり」
「ちいちゃんの限界のかげおくり」
など今度はおわりの場面における「かげおくり」の解釈が出てきました。
・ここで出た意見を一度整理しました。
「なるほど、みんながいってくれたかげおくりにはこんな意味がありそうだね」
① 遊び ②思い出 ・・・・・
・私が ①遊び、②思い出… とまとめていると、子どもから③、④、⑤のような意見も出てきました。
① 遊び ②思い出 ③記念写真 ④ぼうれい ⑤命
・つまりこの「ちいちゃんのかげおくり」という題名は「ちいちゃんの遊び」「ちいちゃんの思い出」「ちいちゃんの記念写真」といった題名にもできるということです。
・ここで「なんであまんきみこさんは、題名を『ちいちゃんの遊び』や『ちいちゃんの記念写真』にしなかったんだろうね?」と尋ねました。
・子どもからは「意味が限定されてしまうから」「遊びや記念写真の話かと思ってしまうから」などの意見がぽつぽつ出てきました。
・もう少し意見が出そうだったので、この日の振り返りとして「(あまんきみこさん)はなぜ題名を「ちいちゃんのかげおくり」にしたのかな。その題名だと何がいいのかな?」という質問に対する自分の考えを書かせて終わりにしました。
・「かげおくりには喜びと悲しみいろんな感情がまざっているから」
・「題名を『ちいちゃんの思い出』にしてしまうと、かげおくり以外の色々な思い出と混ざってしまってぼやけてしまうから」
・「つらいお話だけど少しでも明るく読めるようにしたかったから」
など面白い振り返りが見られました。
・物語の解釈もだいぶ進んでできたので、次回あたりりから「作品のテーマ」「子どもから出てきた疑問」等をじっくり考えて、学習まとめにつなげていこうと思います。
【9時間目】
・この日は「作者のあまんきみこさんは『戦争のこわさ』以外にこのお話で何を伝えたかったのか?」と聞きました。
・これは「戦争のこわさ」は誰が読んでも感じるテーマなので、「それ以外のテーマは何か」により焦点をあてられるようにこう聞いてみました。
・まず、一学期に勉強した「春風をたどって」の物語のテーマについて考えた授業を思い出し、それから、この「ちいちゃんのかげおくり」ではどんなことがテーマになっているかを話し合いました。
・子どもから出た意見は
① 家族の大切さ
② 昔の遊びの紹介
③ 戦争は本当にあった事実ということ
④ お金で買えない命の大切さ
・この辺りで意見が止まったので、もう一度次のような補足の説明をしてみました。
「あまんさんが読者のみんなに『このお話で伝えたいのは( )です』と思っていること
これが「テーマ」ということみたいだね」
・「この( )に入る言葉は他に何がありそうかな?」
このように聞くと、他にも答えが出てきました。
⑤ 暗い夜に気をつけよう
⑥ 食べ物を大切にしよう
⑦ 戦争は簡単に命をなくしてしまう
⑧ 戦争が終わって今はとても平和です
⑨ 永遠に平和が続いてほしい
⑩ ちいちゃんや子どもたちの笑顔を未来につなげていく
⑪ 親戚や家族を大切にしよう
⑫ 小さい子を一人にしない
・とにかく、子どもが自由に意見を出すことを、ねらいとしていたので、⑧⑨のように似ている考えも、どんどん書いていくようにしました。ここまで子どもたちの考えが出たところで、
・「この①から⑫のなかで作者が特にテーマにしたかったことは何だろう?3つ選んでみよう」といいました
・「3つ選ぼう」と聞くことにしたのは、おそらく「戦争、平和に対すること」「家族に対すること」は必然的に上位に選ばれると思ったので、3つ目を聞くことで考えに「ずれ」が生まれるのではないかと思い、「3つ」まで考えることにしました。
・子どもが選んだテーマで
もっとも多かったのは④の「命の大切さ」でした。(ほぼ全員)
二つ目が⑦戦争は簡単に命をなくしてしまう(32人中15人)
三つ目が①家族の大切さ(これも32人中15人)
ということでほぼ予想通りに進みました。
・教師としては意外性がなく、やや物足りない感じもしましたが、逆に言えば物語をきちんとつかんで読めているということかもしれません。
(四番目に多かった「⑥食べ物を大切にしよう」(32人中7人)の意見をもっと掘り下げてもよかったかもしれません…)
・この授業の振り返りとして「このお話で作者は( )と( )を伝えたかったと思います。理由は・・・」
という形で自分の考えノートに書いてね。と話しました。
・「振り返りを書き終わった人から、教科書をもってきて、自分が疑問に思った所を先生に教えてね。」と話して単元の最後に子どもたちと解決したい問題を選んでメモしていきました。
・面白かったのは、多くの子どもたちが
「なぜちいちゃんはおばちゃんについていかなかったのだろう?ついていけばきっと死ななかったのに」
「知らないおじさんは『お母さんはあっちにいるよ』といっていたのは本当だったのか?」
ということが気になったようです。
・ここも、いろんな解釈ができるところなので、あと数回の授業では子どもたちとこういった「読み」そのものを楽もうと思います。
また授業をまとめたら、更新したいと思います。
運動会が近い先生も多いのではないでしょうか。
私の勤務校も今日は全校練習があります。
みなさまもどうぞ体調に気をつけて今日もよい一日を
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(追加)11、12時間目の授業はこちらです。↓