#39...現状を把握せよ!企業のCO2排出量を見える化する(3/52)
イントロダクション:なぜ排出量の「見える化」が最初のステップなのか
企業がカーボンニュートラルを目指すためには、まず自社の現状を把握することが不可欠です。特に重要なのが、自社がどれだけのCO2を排出しているかを正確に「見える化」すること。このプロセスがなければ、どの領域で改善すべきかも、どれだけの成果が出ているかも測れません。多くの企業は、エネルギーコストや設備の効率化に関しては知識がある一方で、CO2排出量を正確に把握するためのデータ収集には手間がかかり、初期段階で躓くことが少なくありません。
排出量の見える化をすることで、改善の方向性が明確になり、脱炭素化の取り組みの一環として効果的なアクションを設計できるようになります。本記事では、具体的にどのようにして自社の排出量を把握し、見える化するのか、その方法について解説します。
ステップ1:排出源の特定
排出量を把握するための第一歩は、自社のどの部分からCO2が排出されているのか、排出源を特定することです。企業活動におけるCO2の排出源は主に以下のように分けられます:
1. 直接排出:工場の燃料使用やオフィスでの暖房など、自社でエネルギーを消費することで直接排出されるCO2です。これにはボイラー、暖房設備、発電機の使用も含まれます。
2. 間接排出(Scope 2):外部から供給される電力やガスを使用することによって間接的に排出されるCO2です。例えば、オフィスで使用する電力がこれに該当します。
3. サプライチェーン排出(Scope 3):自社外で発生するCO2排出です。製品の原材料調達、製造、輸送、さらには廃棄に至るまで、サプライチェーン全体で発生するCO2が含まれます。
排出源を特定する際は、まず自社で容易に計測できる「直接排出」と「間接排出」に焦点を当て、その後可能であれば「サプライチェーン排出」にも目を向けていきます。すべての排出源を把握するのは大変な作業ですが、重要なことは少しずつでも情報を収集し、改善のための土台を作ることです。
ステップ2:排出量の計算
排出源が特定できたら、次に排出量を具体的に数値化します。これには、エネルギー使用量に基づくCO2排出量の算出が一般的です。例えば、電力使用量やガス消費量をもとに、CO2排出係数を掛け合わせることで、排出量を計算します。各国や地域ごとに定められた排出係数があるので、それを参照して計算するのが良いでしょう。
計算方法には、次のような基本の公式が用いられます:
• 電力使用量(kWh) × CO2排出係数 = CO2排出量(kg)
こうしたデータは、エネルギー提供事業者の請求書や、社内の消費記録から得ることが可能です。また、もし製造業などで燃料を使用している場合は、ガスや石油の使用量も把握し、同様の方法で排出量を計算します。こうして出した数値をまとめることで、企業全体の年間のCO2排出量を把握できるようになります。
さらに、最近ではデジタルツールやソフトウェアが発達しており、データの自動収集やリアルタイムでの排出量の追跡が可能になっています。これらのツールを活用することで、日常的なエネルギー消費をモニタリングし、効率化のチャンスを見つけることができます。予算に応じて、こうしたツールの導入も検討する価値があります。
ステップ3:排出量の「見える化」
排出量が数値化できたら、次はそれを「見える化」することが大切です。データが単に数値として存在するだけでは、どこに改善の余地があるのかが明確になりません。そのため、データをグラフやダッシュボードにまとめ、誰もが一目でわかるように視覚化することが効果的です。
見える化には、週や月ごとのエネルギー消費量やCO2排出量の推移を視覚的に示すことが有効です。また、部門ごとに分けることで、どの部門がどれだけの排出をしているかがわかり、改善の優先順位を設定しやすくなります。このようにしてデータを視覚化することで、社内の関心が高まり、排出削減に向けた全体の意識も向上するでしょう。
最近では、クラウドベースのダッシュボードやアプリもあり、PCやスマホから手軽にアクセスできるツールも増えています。こうしたツールを利用することで、排出量の把握がさらに容易になり、管理がスムーズになります。
まとめと次回予告:基礎データを活かした改善アクション
排出量の見える化は、カーボンニュートラルの第一歩です。これにより、自社が抱える排出の課題が明確になり、どの領域に改善の余地があるのかが見えてきます。最初は数値化やデータの収集が難しいと感じるかもしれませんが、少しずつでも正確な情報を得ることで、脱炭素化の取り組みが具体的なものとなっていきます。
次回の記事では、見える化したデータを元に、どのようにして排出削減のアクションプランを策定するかについて解説します。データを活用して効果的な削減計画を立てることで、持続可能な企業活動に一歩近づくことができるでしょう。