シンプルな投資はたった30秒の会話で語り尽くせます
秋の訪れが感じられたその日、わたしは28階のレストラン街に行くために、
1階でエレベーターを待っていました。
そのとき偶然、高校時代の同級生、五反田くんに会ったのです。
「えっ? なんで!」
「つうか、久しぶり。」
私たちは握手を交わしました。
彼も28階のレストラン街に行くと言います。
五反田くんはわたしの予想通り、親父さんの中古車販売店を継いでいました。わたしがファイナンシャルプランナーの仕事をしていると言うと、少し興味を持った様子で、
「でもさ、投資って、けっこう難しいんだろ?」と聞いてきます。
―ちょうどそのときエレベーターが来ました。―
わたしはエレベーターに乗り込みながら、「いいや、そんなことないよ」と答えます。
「今、ニーサ(NISA)とか言ってるだろ。あの口座をまずは開いてみるのアリだよ。」
やることは3つだけ。
株式と債券を半分ずつ組み入れた、コストが安いバランスファンドっていう「投資信託」を選ぶ。
それから、一度に買わずに、少しずつ買い続ける。要は「つみたて投資」っていうやつ。
それから月に「1万円」だけつみたての設定をする。
あとは、投資したことを忘れる。
「・・へえー、そうなんだ」
「ところでお前、もう結婚してるんだろ?」と聞くと、五反田くんは少しはにかみながら、娘さんの写真を見せてくれました。
「みのりっていうんだ」
「へえー、かわいいなぁ」
「あっという間に8歳だよ」
「今からみのりちゃんの結婚式が心配だな。お前ぜったい泣くよ!」
ふたりは申し合わせたように笑い出します。
―エレベーターが28階に着きました。―
わたしも彼も仕事上の会食だったため、別々の方向に歩き出します。
「じゃあ、そのうちな。」
「おう、またな。」
別れ際、わたしは彼に言いました。
「投資のことだけど、途中でつみたて止めずに、淡々と続けるだけだよ。」
五反田くんは右手をあげて、応えてくれました。
シンプルな投資は、実に30秒の会話の中で語り尽くせるのです。