ニキビの原因はアクネ菌だけじゃない?
こんにちは、医学生suiです。
今回は、ニキビの原因菌として有名なアクネ菌。こやつは本当に悪い菌なのか勉強してみたところ、どうやらそうでない面も大きそうです。
では、一体ニキビの原因は何なのか?アクネ菌とは何なのか?
アクネ菌の本当の働きを通してニキビの原因を見ていきたいと思います。
そもそも、アクネ菌はプロピオ二バクテリウム属であり、Propionibacterium. acnes (Cutibacterium acnes)と呼ばれています。(うん、正式名称とか興味なし(笑))
嫌気性グラム陽性桿菌であるので、空気の多いところでは増殖できません。(嫌気性とは「空気が嫌い」な菌のことですよ)
そして、脂質に富む皮膚や腸管、喉などの消化器や呼吸器にも常在している菌です。
普段は空気の少ない皮脂の下でひっそりしているのですが、皮脂が増えると、栄養が増え、毛穴が閉塞して空気が無くなるので、アクネ菌が増殖してしまうのです。
では、これが原因でニキビができるのでしょうか?
いいえ、これだけではニキビとまではなりません。これだけが原因であるなら、皮脂を取り除けば、空気が苦手なアクネ菌はすぐに減少して、ニキビもすぐ治るはずですよね。
確かにニキビのできるきっかけにはなりますが、ここからニキビができてくるためには二つの段階が必要になります。
①過度な炎症が起こる
アクネ菌の増殖によって起こる過度な炎症が赤いニキビを作ります。つまり、菌だけの問題ではなく、自分の免疫の問題でもあるのです。
菌だけが問題であるなら、抗生物質だけで治ることになります。今までの治療ではアクネ菌を殺菌するだけでしたので、あまり効果が無かったのです。
最近の治療は、「内科医が知っておくべき疾患102(2020年)」によると、
主に面皰にはディフェリンゲル(アダパレン)、炎症性皮疹に対してはベピオゲル(過酸化ベンゾイル)を使用する。また、外用抗菌薬として、アクアチムやダラシンTゲル、ゼビアックスローションなども有効である。
とあり、アクネ菌の増殖だけが問題ではないことを裏付けています。(ニキビ治療したことがある人なら、聞いたことのある薬ではないでしょうか?)
②黄色ブドウ球菌の増殖
実は、アクネ菌は通常は皮膚にとって良い働きをしています。具体的には、「シンプル微生物学」によると、
グリセロールを発酵して短鎖脂肪酸を産生し、皮膚のphを下げて黄色ブドウ球菌の増殖を阻害する
とあります。これより、アクネ菌は皮膚のphを一定に保ち、毒性の強い黄色ブドウ球菌の増殖を防いでいることが分かります。
この効果が、アクネ菌の増殖により、皮膚細菌叢のバランスが崩れることで、黄色ブドウ球菌が増殖してしまうこともニキビの要因の一つなのです。
ところで、何度か話に出てきた黄色ブドウ球菌についてですが、グラム陽性の黄色ブドウ球菌(トプ画のやつですよ)は、毒性が強く、膿を起こすことで有名な菌なんです。
例えば、腸に感染すると食中毒、皮膚だととびひや膿のあるニキビ、カテーテル感染症、肺だと膿胸などがあります。
そして、健常な人の皮膚の毛穴などに常在しています。それゆえに、石鹸などで顔を洗ったりすると、毛穴から黄色ブドウ球菌が「こんにちは」して、増殖してしまうため、「洗いすぎは良くないよ」とか「洗顔は一日一回」などと言われているのです。(もちろん、洗わないのは皮脂が溜まるのでNGですよ。バランスが難しいですね)
これは私が経験した話なのですが、
何もしていない手の皮膚からと、石鹸で洗った手の皮膚から綿棒で、細菌培養を行ってみた実験をしたことがあります。結果は、確かに石鹸で手を洗った方が沢山の黄色ブドウ球菌が検出されます。
「やはり、洗いすぎは良くないのね」と実感した瞬間でした。
とにかく、「黄色ブドウ球菌は毒性が強い」ことは知っておいた方がよいでしょう。(テストに出ますよ(笑))
最後にまとめとして、ニキビができるまでの過程をまとめましょう。
皮脂が増える→毛穴が詰まる→アクネ菌の増殖→炎症→赤いニキビ→細菌叢が崩れる→黄色ブドウ球菌増殖→膿のある大きなニキビに
以上で、アクネ菌とニキビの話は終了です。最後まで読んでいただきありがとうございました。
微生物学総論についての記事です。コチラもどうぞ ↓