Nobuhiro Kaneko

学生の頃から、土壌動物の多様性と生態系機能の研究に従事。世の中には「耕さない農業」があ…

Nobuhiro Kaneko

学生の頃から、土壌動物の多様性と生態系機能の研究に従事。世の中には「耕さない農業」があり、そこから普通の農業ではいかにミミズたちが無駄に殺されてきたかを知る。「耕さない農業」なら土壌動物の機能が発揮され、土壌が健康になると考え、その普及を図ることに。 横浜国立大学名誉教授

マガジン

  • ライ麦畑に捕まって

    不耕起有機栽培を始めるには、ライ麦をカバークロップとして使うのが楽である。ライ麦にまつわるお話。

  • ミミズの農業改革って?

    「ミミズの農業改革」金子信博(みすず書房 2023年)にまつわる話題

最近の記事

Crimp, crimp, crimp!

  5月から6月にかけて、いくつかの場所でライ麦を押し倒した。  ライ麦をカバークロップとして使い、押し倒して利用する方法は有機で保全農法を実践するのに基本的な方法だ。  畑の場合、ライ麦は乳熟期(milky stage)といって、実を指で潰すとまだ柔らかく白い汁が出る時期が最適である。これより早く倒すと茎が立ち上がってくるし、遅くなるとライ麦が雑草の発芽を抑制するアレロパシー効果が弱まるし、作付けがどんどん遅くなる。  福島市で極早生品種のライ麦(カネコ種苗「クリーン」)を

    • ライ麦(を押したおす)季節の到来

       5月になった。昨年の10月に畑にバラマキし、冬を越して4月になってぐんぐん伸びてきたライ麦は穂を出し、開花を始めている。いつもながら、4月の半ばまでは、本当に大きくなるのかしら、と心配なのだが、4月後半に出穂してから草丈がぐんと伸びるのを見ると、とてもうれしくなる。  ライ麦を押し倒す(crimping)のは、乳熟期(milky stage)といって、実ができる途中で指で潰すとまだ柔らかく、白い汁がでるころがちょうどよい。あせってそれより早く押し倒すと、再び立ち上がってき

      • ライ麦畑に捕まる?

         「ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)」は1951年のサリンジャーの小説である。    農業ではカバークロップといって、収穫しないがわざわざ栽培する作物がある。その目的は、あまり肥料分が多いと調子が悪いことがわかっている作物を育てる場合、やりすぎた肥料をあらかじめカバークロップに使ってもらうというのがひとつ。病原性のセンチュウの密度を下げる。あるいは、土壌有機物を増やすといったことなどである。  耕さない農業について調べてみると、ライ麦をカ

        • 「ミミズの農業改革」書評

           2023年12月に出版した「ミミズの農業改革」は、私の本としては稀なことだが、たくさんの書評をいただいている。せっかくだから、まとめてみた。 信濃毎日新聞(2024年1月27日)   読売新聞(2024年1月28日) 日本経済新聞(2024年2月10日) 四国新聞、北國新聞など(配信) 日本農業新聞(2024年3月31日)  書いた本人が言うのも何だが、ジャンルがよくわからない本である。企画・編集の市田朝子さんには農学書ではなく一般書、そして大学生くらいにわかるよ

        Crimp, crimp, crimp!

        マガジン

        • ライ麦畑に捕まって
          15本
        • ミミズの農業改革って?
          2本

        記事

          「ミミズの農業改革」重版出来

           おかげさまで2023年12月にみすず書房から出版された「ミミズの農業改革」は2024年3月に第2刷を印刷していただいた。  2刷にあたってチェックしたが、漏れがあり。  166ページの表10−1の右下、「自然農」の「輪作・混作」は正しくは空欄で、「遺伝子組換」のところが「使用しない」となるのが正しい。ご指摘いただいた、Uさんに感謝。  また、168ページ4行目は   誤「表10−1の一番下」   正「表10−1の一番右」 である。  講演などで使っている原図はこのよう

          「ミミズの農業改革」重版出来

          最初の記事は退職のご挨拶

           いきなり、私事だが、2024年3月末をもって長い教員生活も定年を迎え福島大学を退職することとなった。  最初の職場、島根大学では農学部(後に生物資源科学部)に計12年間。当時は育林学研究室に三宅登教授、片桐成夫助教授がおられて、大学院の博士課程3年目の10月で中退して、11月から助手として採用していただいた。  横浜国立大学には1998年に異動し、最初は環境科学センター、そして改組にともない大学院環境情報研究院で土壌生態学研究室というのを作った。  2018年に福島大学に新

          最初の記事は退職のご挨拶