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10年10万kmストーリー 第65回 ポルシェ911カレラ2(1991年型) 31年5万9000km
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天気の良い日に散歩しながら遠回りして戻ってくる道が、自宅の周りに何本かある。
2021年の春に、きれいな色をしたポルシェ911を見たのもその内の一本でのことだった。タイ料理屋でランチのカオマンガイを食べ、帰路と反対方向にある日本庭園の池の周りを歩いて新緑を眺め、休憩。ここは区立公園だから入場無料で、いつも空いているのがいい。その後に興が乗っているとさらに先に進んで私鉄の線路を渡って、フランクロイド・ライトが設計した有名な学校の建物の前を通って帰ってくる。
でも、その日は庭園だけで帰ったのが良かった。大通りに出る手前にある家のガレージのシャッターが開いていて、きれいな淡い水色のポルシェ911が停まっていたのだ。あまりに鮮やかだったので足を止めたら、911から降りたばかりらしいオーナーさんと眼が合った。
「きれいな色ですね」
「ありがとうございます。アイスブルーという色で、ポルシェでは1970年代から設定していたんですよ」
5分か10分ぐらいのクルマ談議。ナンバープレートが二桁数字だったので訊ねると、新車から31年間乗り続けているという。ポルシェはこの911で3台目で、以前は928や924にも乗っていた。
「これでしたね」
ガレージの壁に額装された絵には、真っ赤な928が描かれていた。
「928って、いま見てもカッコいいですね。出るのが早過ぎたんですかね。僕も大好きです」
立ち話を続けるのも図々しいので、その時は辞去した。珍しい色だから遠くからでも気付くので、また近くで出会うだろう。よく通る道だから、また立ち話だってできるはずだ。
でも、甘かった。夏が過ぎ、秋を通り越しても、そこのシャッターが開いている時に出くわしたことがなかったのだ。日本庭園で冬支度が始まる頃になっても、シャッターは閉まり続け、近所で擦れ違ったり、スタンドやスーパーなどで一緒になることもなかった。
再び話をすることができた頃には完全な冬になっていて、助手席に乗せてもらったのは年が明けて2022年になってからのことだった。
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