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ゴルフを生み出したフォルクスワーゲン社の姿勢に共感している。10年10万kmストーリー 第98回 フォルクスワーゲン・ゴルフ(2005年)19年21万4000km


 フォルクスワーゲンのゴルフが生誕50周年を迎えている。50年前は小学生だったけれども、最初のゴルフが“新しいワーゲン”として日本の道を走り始めた姿は良く憶えている。
 フォルクスワーゲンといえばタイプ1ビートルの印象があまりにも強く、それしか知らなかったから、ドラスティックな変わりように驚かされた。
「ワーゲンは大丈夫なのかっ!? あんなライトバンみたいな新型にモデルチェンジしちゃって」
 父親も嘆いていた。彼の世代は、フォルクスワーゲンというクルマを“ヒトラーが速度無制限のアウトバーンを走り続けられる革新的な大衆車としてポルシェ博士に造らせた西ドイツの名車”として半ば神格化していたのだ。
 しかし、時代が進んで、クルマの使われ方が大きく変わりつつあることを把握できていなかった。
 必要に応じてシートを畳んでトランクルームを拡げ、大量の荷物も自分で運ぶという2ボックスハッチバックスタイルが必要とされるライフスタイルを知らなかったのだ。
 クルマで長期間のレジャー旅行に出掛けることも、食料品や日用品などは週末にクルマで買い出しに行くというライフスタイルも、当時の日本ではまだ広まっていなかった。
 専業主婦が毎日、徒歩や自転車で近所に買い物に行っていたし、家電や家具などはそれこそライトバンで商店から届けてもらうものだった。
 ライフスタイルが存在していなければ、それに合わせて企画設計されたクルマの価値など想像すらできないのだ。現在、日進月歩で進化し続けているクルマの電動化や自動化、常時ネット接続の意味も価値も、50年前と同じように時間の経過を待たないと浸透していかないのかもしれない。
 ゴルフを所有したことはないけれども、現在までの8世代すべてには乗ったことがあるし、海外を長距離走ったこともある。間違いなく、この50年間を代表するクルマの1台だと思う。
 2ボックスハッチバックスタイルと前輪駆動という基本構成を変えることなく、内容を真摯にアップデイトし続けた。各世代には、その時代ごとの最新の機能と性能が備わっていた。ほとんど変えなかったタイプ1ビートルのような頑迷さはなかった。機能と形態の両輪がゴルフを進化させていったのだ。

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