10年10万kmストーリー 第45回 ユーノス500(1992年型)19年5万7000km マツダのデザインコンシャスは変わらない
緊急事態宣言が発せられる直前の晴れた日に、718ボクスターのトップを下ろして新宿通りを都心に向かって走っていた。半蔵門一丁目の交差点を越え、麹町警察署の前を過ぎ、目の前の半蔵門のT字路の信号で停止した。
内堀通りをはさんだ左斜め向かい側の千鳥ヶ淵公園では、桜が満開の一歩手前だ。しかし、コロナ騒動によるものなのか、例年のような人手とは違う。
「カネコさんッ! やっぱり、いい色ですねッ!」
眼の前の信号が赤から青に変わって走り出そうとした時、突然、歩道を行く人たちの間から自分を呼ぶ声が聞こえてきた。
聞こえてきた方を見ると、メガネを掛けたスーツ姿の男性がこちらを見ている。
「いつも読んでいますよッ」
モーターショーやイベントなどで読者から声を掛けられることはあるけれども、クルマを運転中になんて初めてだ。
後続車もいるし、その車線は左折専用で、その先の内堀通りは駐停車禁止だ。
「誰だろう?」
もし停車できるならば、その人と話すことができるのだが、走り去らなければならない。
「メッセージ下さい!」
その人に聞こえるように大きな声を張り上げて、仕方なく内堀通りを北上した。
「仕事の知り合いじゃないですか? だって、関係者っぽい感じだったじゃないですか!?」
同乗者は“知り合い説”を採ったが、僕は見憶えがない。とは言っても、一瞬のことだったし、なんとも言えない。
たしかに、スーツかジャケットこそ着ていたけれども、明るいブルーのセルフレームメガネは固い職種の人は掛けそうもないものだった。
「だいたい、平日の昼間にこんなところを歩いていられるなんて、フツーのサラリーマンとは言えないでしょう!? ハハハハハハッ」
メッセージは、すぐに来た。あるSNSのダイレクトメッセージ機能を使って、丁寧な挨拶文が送られてきた。そのSNSのアカウントを持っていなかったため、わざわざ新規作成し、詳しいプロフィールまで画像付きでアップしてくれていた。
クルマも何台も持っている。今となってはとても懐かしいユーノス500には19年5万7000km乗っている。貴重な、964型のポルシェ911スピードスターも持っている。他にラテン系のクルマもある。
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