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新世代ジャガー 「TYPE 00」へのネガティブ反応は想定の範囲内なのだろう
2025年から始まる新世代のジャガーを表現した「TYPE 00」のデザインイメージが発表されました。
これまでのジャガーとの関連性の薄さや新奇さをそのまま打ち出してきたようなデザインイメージには、ネット上ではポジティブな反応よりも圧倒的にネガティブな反応ばかりが集まっているようです。
これはあくまでも僕の予想なのですが、当のジャガーではそうしたネガティブな反応は想定済みで、落胆したり問題視したりはしていないのではないでしょうか?
むしろ、“してやったり”ぐらいに思っているのかもしれません。それというのも、TYPE 00は突然の気紛れで発表されたようなものではないからです。実車がどれくらいデザインイメージを踏襲してくるかはまだわかりませんが、用意周到に準備されたプロジェクトであるからです。
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プロジェクトは「Reimagine」戦略と呼ばれ、2021年2月に発表されています。Reimagine戦略は、ジャガー・ランドローバーの新しいグローバル戦略です。
「サステナビリティに富んだモダン・ラグジュアリーの再構築、ユニークなカスタマー・エクスペリエンスの提供、ポジティブな社会的インパクトの創出を目指す」と発表されました。
具体的には、2039年までに排出ガスを実質ゼロにする、ジャガーを2025年からピュアEV(電気自動車)のラグジュアリーブランドとして再生する、2030年末までにジャガー・ランドローバーブランドの全モデルにピュアEVの選択肢を設定する等々。
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他にいくつも制定されましたが、強く訴えているのは2025年からジャガーはEV専業ブランドになるということです。
ジャガーはすでにi-PACEというEVを製造販売していましたが、F-TYPEのようなスポーツカー、XEやXF、XJのような4ドアサルーン、E-PACEやF-PACEのようなSUVなど他に多種多様なエンジン車も造っていました。それらの製造を終了し、新しいEVだけでジャガーのラインナップを構成し直すというのです。
この発表を知った時には、本当に驚かされました。なぜならば、その時のジャガー各車はみな魅力的で、急いで止めてしまう理由が思い当たらなかったからです。もちろん、EVへの移行は必須ですけれども、それは段階的に行われても構わないはずではないですか。
戦略が発表されたのが2021年2月ですから、2025年までまだ4年ありました。しかし、2024年終わりの今となっては、もう来年のことなのです。
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2025年からすべてのジャガーをEVにするというのは、あまりにも大胆です。その大胆さは、どこから発想できたのでしょうか?
ジャガー・ランドローバー・ジャパン株式会社代表取締役社長のマグナス・ハンソン氏に2024年3月にインタビューした時に答えを聞いています。
「我々のクルマを高く評価していただけるのは光栄なのですが、我々は会社の財務面を強化する必要に迫られたのです。サステナビリティやゼロエミッションを実現するためです」
では、どのような新しいEVを目指して開発を行なっているのでしょうか?
「3つの要件があります。一つ目が、モダンラグジュアリーであることです。ジャガーは長い伝統を有していますが、それをそのままなぞって発展させるのではなく、現代的なラグジュアリーとして解釈し直すことです。二つ目は、プラグインハイブリッドなどではなく、完全なEVを開発すること。そして、最後は、そのEVが急進的で他と違っていることです」(同社のジャガートランスフォーメーションディレクター、サミュエル・ゴールドスミス氏)
この時は、「最初に発表するのは4ドアGT」と明言していたから、2ドアのデザインイメージとは異なっています。
価格は決まっていると聞きました。1台10万ポンド(約1900万円)以上。一気に超高級車クラスに入ります。当面はボディの異なったEVの3モデルだけに絞るそうです。
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「台数をたくさん造ることよりも、独自性があることを最優先します」
ハンソン氏が付け加えました。
「現在、マーケットに出回っているメインストリームのEVとは完全に違ったものになります。ジャガーの原点に立ち返りながらも、モダンで他に例のないユニークなクルマです。感性に訴えかけるデザインと次世代を切り開くテクノロジーを備え、非常に美しく、新たなポートフォリオを提供するピュアEVのラグジュアリー・ブランドとして生まれ変わります。デザインのインスピレーションを自動車からではなく、現代の高級家具や建築などから導いているところも、これまでのクルマにはない特徴となっているでしょう」
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ふたりの説明を思い出すと、TYPE 00のデザインイメージを大いに首肯しながら眺めることができてきます。“ブランド価値を有効活用する”などとお決まりの方法論はあえて採らず、オリジナリティを高めながら上方へ再設定するというのです。
そのためには、10近くあったモデル数を思い切って3つまでに減らし、その代わり単価を倍以上に上げ、それに見合った超高級車に専念するというのです。大きな賭けであることは間違いありませんが、そのぐらいドライスティックに行わない限り未来はないと決断したのでしょう。
エンジン車時代の延長線上にではなく、新たに次元をひとつやふたつも上げたところから始められるモダンでラグジュアリーなEVがTYPE 00というわけです。ドア枚数を違えたものを提示しているのも、反応を伺っているのかも知れません。
実車が登場するのはまだ先のことになりそうですが、見ているこちら側の感性や度量が問われてくるような気もしてきます。
こちらは、かつてのジャガーの栄光を体現しているデイムラー(ジャガーの高級版)に長年乗り続けている女性の物語です。
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![金子浩久書店](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/2510009/profile_53dd196a5842b2781b235eb5c1199cb5.jpg?width=600&crop=1:1,smart)