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97年前のベントレーのルマンカーで現代の都心を走る過酷さ

 昨日のクラシックカーイベント「コッパディ東京」のエントリーリストには108台ものエントリーがありましたが、中でも異彩を放っていたのは、ベントレー 4.5リッター“Old Mother Gun”(1927年製)でした。1928年のルマン24時間レースの優勝車そのものです。

 涌井清春さんが運転し、元ベントレージャパンの横倉 典さんがコドライバーを務めました。なんと、涌井さんはこのクルマを都内で運転するのは初めてとのこと。戦前のルマン24時間を戦ったクルマが都内の混雑した環境を走るわけですから、想像するだけで過酷ですよね。

「クラッチの重さが大変だったね」

 赤信号が連続し、他のクルマとも調和しながら走らなければならないので、こまめに減速する必要があったと涌井さんは語っていました。

 他にも、現代のクルマと違って、ガソリンをキャブレターに送るポンプも随時、手でレバーを何度も押し込む操作を行わなければならないし、点火時期も走りながらエンジンの回転や負荷に合わせて調整しなければなりません。

 ラジエーターは自動的に作動しませんから、水温が上がったらファンを回さなければなりません。

 3つのペダルも現代車と違った配列で並んでいます。もちろん、ハンドルも重いので、切る時はタイミングを身計らなければなりません。つねに何かをチェックし、4本の手足を動かして何かを操作しなければならないのが、この時代のクルマを運転するのに必要になってきます。

 都内を走っている現代車はその辺りがすべて自動化されて、クルマが全部行ってくれます。ブレーキやハンドル操作などにもドライバーの力は不要なので、気楽なものです。それらの流れの中で“Old Mother Gun”を走らせるのは、ルマン24時間を戦うのとは、また違った大変さが待ち受けています。

 それでも、都心でこれだけたくさんの逸品のクラシックカーに近寄れるのは貴重な機会です。次回も楽しみにしています。

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金子浩久書店
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