2024年 最も考えさせられた中国のEV「NIO」のカセット式バッテリー自動交換システム
4月に北京に行った時に眼にしたNIO(ニオ)のカセット式バッテリー交換システムには驚かされました。帰国して、『BE-PAL.net』に寄稿した記事の一部を引用します。
「北京中心部のビジネス街の有料駐車場に設営されている「NIO」(ニオ)のバッテリー交換ステーションを当地の友人と見に行きました。NIOというのは今年で創立10周年を迎える中国の“老舗”EVメーカーで、ニューヨーク証券取引所に上場したり、フォーミュラEに参戦したりして、早くから海外マーケットを意識していました。
バッテリー交換ステーションそのものは、2019年の上海モーターショーのNIOのブースで取材済みでした。NIOのクルマがステーションに入って、クルマの床下に横からアームが伸びてきて、空のバッテリーを取り出します。次に、反対方向から伸びてきたアームに載せられた満充電にされたバッテリーがクルマに組み込まれて終了です。
ドライバーは最初にセンターパネルにタッチしてステーションと通信を開始すれば、あとは座っているだけでOK。道路からステーション内に誘導され、所定位置に固定されるまですべて自動で行われます。
この駐車場に僕らが到着してすぐに、利用者のNIO EC7というEVがやって来ました。前席にカップルが乗っています。見ていると、アッという間にすべてが3分以内に終了しましたから、大型車に満タンまでガソリンを注ぎ込むより速い。充電時間の長さがEVのアキレス腱だと言われていますが、これは次元が異なる解決策です。
5年前の上海モーターショーでは、交換ステーションを各地のNIOのショールームと上海と北京を結ぶ高速道路のサービスエリアに200か所設置したと発表されていました。それが、今回の北京モーターショーで訊ねてみると、2400か所にも増えているとのことでした。高速道路のサービスステーションだけでなく、こうしてビジネス街の駐車場にも展開されているわけですから、着実に増えているのがわかります。
各ステーションに交換可能な充電済みバッテリーが何個あるのかなどの情報はアプリ上でNIOユーザーに共有されているので、合理的ですね。現在の日本の充電ステーションで見られるような順番待ちの列も発生しようがありません。なにせ、“1台3分以内”なのですから!
NIOによると、このバッテリー交換システムの採用を他のメーカーが採用を検討しているそうです。日本では、以前にベタープレイス社が試みようとしました。
バッテリーを“充電”するのではなく、“交換”すると考えただけでEVに対しての懐疑はだいぶ弱まるのではないでしょうか?
また、バッテリーの劣化を理由としてEVの下取り価格が不当に下がってしまうという問題も自動的に回避されます。バッテリーはクルマの車両代には含まれず、利用サービス代金を別に支払う契約も選べるようです。
それならば、新車を納車した時が販売のゴールとなるのではなく、むしろスタートとなります。顧客とディーラーもしくはメーカーは、新車を販売した後もさまざまなサービスをビジネスとすることができるわけです。
実際に、NIOはそうしています。交換ステーションの利用サービスだけでなく、電源車を派遣する出張充電など、いくつかのサービスも契約することができます。自動車ビジネスの新しい可能性が試され、交換ステーションが2400か所に増えていることからも、着実に成果を出しているようです。本当に、NIOからは“眼が離せない”のです。」
バッテリーをカセット交換式でも充電できるようにしたことと、バッテリーレスでEVを販売し、オーナーは使用量に応じた電気代金を支払うようにしたこと。
これら2点によって、EVの可能性を大きく拡げることができるのではないでしょうか?
NIOに限らない他の自動車メーカーが日本でも同じシステムが施行したならば、EVに限らずPHEVなどの普及にも拍車を掛けることができるのではないでしょうか。メーカーや行政などの思惑ばかりではなく、なによりもユーザーの利便性と経済合理性を向上させることができるからです。
バッテリーのカセット式自動交換システムの利用が拡大していっている北京で、さまざまなことを考えさせられました。