ステーションワゴンの魅力と実力を再認識。試乗ノート#26 フォルクスワーゲン パサート eHybrid Elegance
・フルモデルチェンジしたパサート。50年の歴史を持ち、3400万台という同社ビートル(タイプ1)に次ぐ販売台数を記録している。
・セダンは消滅し、ステーションワゴンだけに。
・「eHybrid Elegance」(税込655万9000円)は、初めてのプラグインハイブリッド。1.5リッター4気筒とモーターがセット。
・EVモードでの走行は142km可能。
・他に2.0リッターTDI(ディーゼル)+4WD、1.5リッターMHEVもあり。
○ ハイブリッドモードで走り始めても、なかなかエンジンを始動しようとせず、モーターだけで走る。静か、滑らか。新東名高速に乗って、110km/hを超える辺りで、ようやくエンジンが掛かるが、アクセルペダルを戻すとエンジンは止まり、その瞬間にエネルギー回生が行われている。そこから再度ゆっくりと加速しようとすると、モーターだけで加速を続けるが、速度が上がるとエンジンも始動する。その切り替わりは素早く、ショックやノイズのようなものは全く伴うことがない。その洗練具合には舌を巻いてしまった。
○ 最初のうちは、「あっ、切り替わった。エンジンだ、今度はモーターに戻った」とメーターを見ながらはしゃいでいたが、すぐに気にしなくなった。モーターとエンジンそれぞれの働きは渾然一体化して瞬間ごとに切り変わっていくので、それがエンジンであろうとモーターであろうと関係なく、どちらでも良くなってくる。静かで滑らかで力強く加速をしていく。パワートレインは完全な縁の下の力持ちになっている。それでいいのだ。
○ SUVと違って、パサートはステーションワゴンなので低い位置に座り、重心やロールセンターなども低くなるために、コーナリングのたびに前後左右に揺すられることが少ない。地面に近く、強い安定感が得られる。
○ 歴代パサートの美点であったトランクの大きさ、荷物の出し入れのしやすさは踏襲されている。サスペンションなどの邪魔な出っ張りがない直方体なので、入れ方や置き方を考慮する必要がなく、なんでも積み込める自由度の大きさが使いやすさを実現している。これだけ大きいので荷物が動かないためのオプションは、ぜひ注文したい。
○ マッサージ機能が優秀。6パターンそれぞれで背中、肩、腰をしっかりとマッサージしてくれる。若かった頃には「クルマでマッサージなんて」と訝しんでいたが、今では長距離を走った時にはとても有り難みを感じる。贅沢品ではなく、身体のコンディションを整えるための、いま流行りの言葉で表すところの“ウェルビーイング”なもの。
○ 後席も余裕で脚が組めるほど広い。
X より緻密にダンパーを制御する「DCCpro」の効能はわかりにくかった。
X グレード設定と、各グレードごとに“選べる選べない”のオプション装備の違いなどが複雑すぎてわかりにくいこと。
X フォルクスワーゲンが地元ドイツとオーストリアでは6年以上前から展開している、顧客からのオンラインでのコンフィギュレーション注文を実施すればすべて解決する。ディーラーやインポーター、メーカーなどの負担も減り、顧客は「自分だけの1台」を誂える満足感を得られて、良いことしかないはずなのだが。
X “Elegance”というグレード名が恥ずかしい。「優雅か、どうか」は他人から言われること。自分から言う言葉ではない。
X 併せて、助手席前のダッシュボードと左右のドアパネル上の化粧パネルにプリントされた、機能的に何の意味もなければカッコ良くもない、単なる線が描かれただけの化粧パネル。美だけでなく醜も細部に宿るのだ。クルマを構成しているほとんどの部分の完成度は高く、高い次元でバランスも取れているのに、なぜここだけ見逃されてしまったのだろうか? 疑問符しか付かない。単なる飾りで、走行性能や実用性になんら影響がないが故に余計に気になってしまう。
○ステーションワゴンの魅力と実力を再認識させられた。2.0リッターTDI(ディーゼル)+4WD(税込622万4000円と645万8000円)も気になる。