新型MINI COOPERのEXPERIENCESが提案している新しい運転体験
4代目にフルモデルチェンジしたMINI COOPERの新機能はいくつかありますが、インテリアも全面的に改められました。
中でも、僕が注目したのは丸型のセンターモニターパネルです。歴代MINIは丸型のパネルを採用してきましたが、新型はより大型となりました。自動車用の丸型では最大サイズだそうです。
画質は高品質で、まるで最新のパソコンやスマートフォンのような明瞭さ。速度や航続距離などの走行に関する重要情報はこちらにも映されますが、ドライバーの真向かいにあるヘッドアップディスプレイにも投影されます。これまでのような、ドライバー正面のメーター類はなくなりました。
丸型パネルに映し出されるグラフィックデザインは何種類もあります。パネルの下にある“EXPERIENCES”というレバーを上下すると、画面が変わっていきます。画面だけでなく、走行特性も変えることができるのです。今までだったら、「走行モード切り替え」と呼ばれていましたものに相当します。
“CORE”がノーマル、“GO KART”がスポーツ、“GREEN”がエコに相当しています。他に、“VIVID”、“TIMELESS”、“PERSONAL”と切り替わっていきます。
PERSONALは好みの走行特性と気に入った画像をセンターパネルの背景に設定できるポジション。VIVIDは音楽ソースを選んだり、流れている楽曲のカバーアートに合わせたライトエフェクトが25色の中から自動的に選定され、ダッシュボード上に投影されるモードです。
TIMELESSは、BMWが製造する前にイギリスのモーリスやオースチン(最後はローバー)などで製造されていたクラシックミニの排気音が擬似的に発せられます。
どのモードもキレイで見やすい。設定を変えれば、各モードの開始時にジングル音を発することもできます。
これまでは、こうした装備は“ギミック”と蔑まれていましたが、この新型MINI COOPER SEのEXPERIENCESでは新しい意味が発生しているように思えました。
今までのように、ドライブモードやNORMAL、またはSPORT、あるいはECOなどといった自動車の専門用語や概念などをそのまま剥き出しでユーザーに提示していません。それらをいったん新型MINI COOPER SEが設定している世界観に置き換えて提示している意味は小さくありません。
CORE、GO KART、GREEN、VIVID、TIMELESS、PERSONAL。
あえて、従来からの“クルマっぽさ”“自動車らしさ”などのようなものを拭い去っています。単なる言葉の言い換えではない以上のものをBMWは提示しようとしているように見えました。
クルマという「機械」をそのまま提供するのではなくて、中身は変わらないのだけれどもあくまでも新型MINI COOPER SEという「商品」として提示できるように仕切り直しているのです
今まで、クルマに乗るということは運転することと完全に等しいことでした。しかし、これからは自動化や知能化などによって、ドライバーが100%担っていた運転の何割かをクルマが肩代わりしてくれます。その分、ドライバーは乗車中に別のことができるようになったのです。EXPERIENCESは、それを先取りしています。