DORPレポート_墨染を知る
浜松市産業課とDORP実行委員会が主催する「浜松注染そめの可能性を探るプロジェクト《注染オープンファクトリー》」の工場見学会。
古民家を活用した飲食店のリノベーションを設計する機会があり、歴史性や地域性を建築空間にどうコラボレートさせるか模索していたため「こんな良いタイミングってあるんだな」と思い参加、そこで【墨染】に出会いました。
教えてくれたのは《二橋染工》さん。
墨染は墨汁を使います。書道文化が減退する昨今「染めは大量の墨汁を使用するので是非!」と墨汁メーカーに頼まれ、他の工場ではやられていないので試してみたそうです。時代の移り変わりと共にコラボレートしていく文化に心を掴まれました。
墨染自体は平安時代からあるそうです。京都にある染屋さんのHPに載っていました。(正しいかどうかは不確定。。。)
染め方について、二橋さんは、最初、注染で試したものの、道具のいたるところに墨汁がつき、染料ではないため汚れが落ちづらく、手間がかかりすぎるということで、窯に入れて染める方法がベターという結論が出たとのこと。また、窯で染めるとある程度のムラがでて、立体的な色の深みになります。洗濯すると多少の色落ちはあるそうです。
年間で数件は墨染の依頼が来るそうで、牧之原の《榛地織物》さんが特に多いとのことで、紹介してもらい、榛地さんにお伺いしました。
榛地さんは、約10年前に神社ののぼりを見て「墨で書かれた文字はなかなか色褪せないから、染めに使ってみないな」と思い、墨染をやったことある業者を探すも、なかなか見つからず、まわりまわって、二橋さんに辿り着いたそうです。(当時、二橋さんは既に経験者だったそうです)
墨染は、道具の清掃を考えるとある程度の量を発注する必要であるので、一度に複数種類の生地を染めてもらい、20年くらいの付き合いで30〜40種類くらいの実績を積み重ねているとのこと。
基本的には自社案件として墨染をして、イベントや事務所で見せて買ってもらうそうです。圧倒的に外国人の方がくいつきが良いとのこと。
染め上がりは、生地にもよりますが、黒ではなくグレーに染まります。生地自体にガラがある場合は、トーンが落ち、色の深みのムラも重なることで、複雑で独特な色合いになります。
古民家のリノベーションでは襖や屏風をつくろうと思っています。日本の名作住宅《前川國男自邸》の屋内ドアは框の中に掛川の葛布(くずふ)が使われています。ドアを開ける時に布の面積が大きいとドアが軽いだけでなく、布は空気を通すのでドアが軽くなるようです。また、建具は両面がオモテになるので、染めには丁度良いと思っています。
織物、染め、天竜木材の框、サンプルを作りながら進めていきます。