介入再考:それでも日銀は動かない。
目下の焦点は現在の円安局面で、政府・日銀が為替介入するのかどうかだ。
先週の考察では、日銀も政府も為替介入せず、米国政府との協調介入のセンも薄いと述べた。
一方で、その後、G20財務相中央銀行会議、日米財務相会談が行われ、新たな局面に突入。介入実施を予想する動きもある。
その点を鑑み今回は、新たな条件の下に、日銀・政府の介入の現実性について整理しておきたい。
くすぶる“ドル円介入予想”
個人的な意見とは別に、「ドル円為替への介入はある」という予想も出されている。
具体的には、とある投資ゼミYouTubeチャンネルで、岡崎良介氏は、為替介入予想を披露 [1]。
信頼性を検討する必要がありそうだ(この予想を目にしたのが再考のきっかけ)。
日米財務相会談で介入後押し!?
また、今週にはG20財務相・中央銀行総裁会議と日米財務相会談が実施された。
あわせて、イエレン米財務相が為替介入についても前向きに応えたと報道され[3]、為替レート自体も一時的に円高に振れる場面もあった。
マーケットが介入について、「あるかもしれない」と反応したといえるだろう。
一方でドル円為替レートはその後戻し、22日終値で128.49円。日米財務相会談の報道前の128.605円とも、おおよそ誤差の範囲に落ち着いている。
一部報道 [5] にある通り、マーケットは「何も変わらない」(つまり、少なくとも当面は、環境を変えかねない日米の介入は無い)との結論にとりあえず落ち着いたことになる。
さらに、米経済のインフレ継続に変わりはなく、米政府、FRBの即時の政策変更も期待はできそうにない。
日銀は緩和を堅持
日銀の黒田総裁は、その後の講演で“強力な金融緩和を継続”すると表明した。
また、日銀は21日~26日にかけて指値オペを実施すると週央に表明して、緩和維持の実施 [5] し、口でも政策でも「日銀は緩和維持」を示した格好だ。
言い換えれば、一部にみられた黒田総裁の円安への言及を“円安けん制”と捉えた値動きは、またしてもマーケットの誤解釈だったのだ。
“政策変更、為替介入なし”がメインシナリオ
いよいよ本題。日銀の政策変更についてだ。
すでに述べた通り、今までのところ市場の一部に見られる政府・日銀の為替介入への期待は空振りに終わり続けている。
その流れは、現在の手元の材料からは、維持される見通しで、4月27、28日に予定されている日銀の金融政策決定会合での政策変更、為替介入の実施も望むべくもない。
以上の整理から、メインシナリオとしては、次回の金融政策決定会合では緩和維持、介入なしのままであるとの見方を引き続き掲げていきたい。
5月は“新しい地平”……かも
他方で、来月以降もずっと為替介入も日銀の政策変更もない保証も全くない。
特にドル円為替レートに大きく影響する日銀の政策については、物価の安定を目指す事がコンセンサスになっており、“物価次第”だ。
その上で、現状では日本のCPIは低いものの、5月発表分(4月CPI)から上昇すると見られ(携帯電話料金引き下げ効果の剥落)ており、日銀、政府、政界、メディア、社会がその5月CPIの上昇をどのように受け止めるかは未知数だ。
したがって、もしも5月発表のCPIに対して、激烈な反応が引き起こされ(一部政治勢力が選挙対策として物価対処を前面に押し出すなど、十分あり得る)ると、政府・日銀の政策にも影響しないとは言い切れない。
そうした影響で右往左往させられる可能性も踏まえれば、引き続き丁寧に推移を追いかけ、慎重に立ち回る必要があると言えるだろう。
付記すれば、もちろんアメリカの経済、政府金融当局の動きによっても左右されるが、この点はまた、機会を改めて論じたい。
Notes & References
[1] 岡崎良介, 【ロシア向け駆け込み需要の発生】ドル売り介入後の価格変動(岡崎良介さん) [マーケットディーパー], https://www.youtube.com/watch?v=LL3VXXcjYqI (23rd Apr 2022)
[2] NHK, 鈴木財務相 米イエレン財務長官と会談「円安 日米で意思疎通」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220422/k10013593541000.html (22nd Apr 2022)
[3] TBS, 【独自】協調介入も議論 急速な円安ドル高進む中の日米財務相会談 https://news.yahoo.co.jp/articles/eb72c131bdbcff1a21bf2d484d6e4c0c433e8ed2 (22nd Apr 2022)
[4] 時事通信, 黒田日銀総裁、強力な金融緩和継続 国内需要の回復に遅れ https://www.jiji.com/jc/article?k=2022042300075(22nd Apr 2022)
[5] NHK, 日銀「連続指値オペ」国債無制限に買い入れ 21日~26日 実施 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220420/k10013590631000.html (22nd Apr 2022)
[5] TBS, 市場関係者「何も変わらない」 日米財務相会談「緊密に連携」確認も, https://article.auone.jp/detail/1/3/6/307_6_r_20220422_1650596663161430 (22nd Apr 2022)
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