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日経記事「三菱電機、品質不正148件に」から考える今後の三菱電機

こんにちは、お金が入るでかねいりです。

日経新聞を読んでいる中で、5月26日の記事に「三菱電機、品質不正148件に 中間報告新たに101件 国内拠点7割に拡大」というものがありました。

そこで、なぜこのような実態になっているのか、今後の課題は何なのかということについて、個人の観点ですが、考えてみました。

■三菱電機の不祥事

5月26日の日経新聞の記事の要約は以下の通りです。

三菱電機は25日、品質不正問題に関する調査委員会(委員長・木目田裕弁護士)がまとめた3回目の中間報告書を公表した。兵庫県などにある15製作所(工場)で新たに101件の不正・不適切行為が判明し、国内生産拠点の7割にあたる16工場の148件に広がる。調査対象のうち、調査が完了していない疑わしい案件は2割弱残っており、全容解明にはなお時間がかかりそうだ。

日本経済新聞より

記事にある調査委員会が発足したきっかけが、2021年6月の検査不正。そこから、これまで以下のような不祥事が発覚しています。

【2021年6月】
・長崎製作所(長崎県時津町)で鉄道車両向け機器の検査不正が発覚。架空の検査データを顧客に報告していた。不適切な検査は1980年代から30年以上続いていた疑いがある。
・冷熱システム製作所(和歌山市)で、14年6月~21年7月に製造したビル・店舗向けのエアコンや除湿機など578機種で検査不備があったことが発覚。

【2021年8月】
・受配電システム製作所(香川県丸亀市)が製造する配電盤(ガス絶縁開閉装置)で不正な検査と発表。約25年間にわたり、出荷前の検査で一部を省略したり、顧客の要求とは異なる方法で実施したりしていた。国内外の官公庁や鉄道会社など約490社・機関に納入したという。

【2021年10月】
・名古屋製作所が可児工場で製造する電磁開閉器(マグネットスイッチ)の一部機種が、米国の第三者機関の安全認証を受けていない樹脂材料を使っていたと判明。当時の品質保証課を中心に1994年ごろに始まっていたことがわかった。

【2022年4月】
・発電所や変電所で電圧を変換する「変圧器」で新たに不正な行為が判明したと発表した。電圧や温度の社内基準を満たさずに設計するなどしていた。対象は記録の残る1982年以降で約3400台に及ぶ。

日本経済新聞より

見て頂てわかる通り、不正はこの数年の話ではなく、何十年も続けたきたという実態です。当時の可児工場の工場長が、長期の出荷停止などを恐れて名古屋製作所に報告せず、品質不正の事実をいんぺいしたことも明らかになっています。

もはやこれは、企業体質が成したものと言わざるを得ない状態です。

■この企業体質をつくった背景は?

ズバリ、『殿様商売』という背景があったのではないかと考えています。

三菱電機の市場シェア
・鉄道車両用電機品:国内トップ
・鉄道車両用空調:国内トップ
・配電盤:国内トップ

不正のあった事業の多くはシェアが高い状態です。

『ビジョナリーカンパニー』を書いたジム・コリンズ氏は、「GoodはGreatの敵」という言葉を残しており、Goodの状態になると、そこで満足してしまい、偉大な企業になることの難しさがそこにあると記しています。

Goodな状態になると「こんなものでいいか」という気のゆるみが出やすくなります。そして、だんだんに自己都合で考えるようになり、顧客視点がなくなっていく傾向にあります。

三菱電機の自社都合を象徴していると考えるのが「役員報酬」です。
三菱電機では、7人の役員が1億円を超えています(2021年3月期)。2019年3月期までは1億円越えの役員は20人以上いました。対して業界トップのソニーグループは7人なのですが、売上が倍以上違いますので(※1)、三菱電機の1億円越えの役員の人数が多いことがわかります。
(※1)三菱電機:4.1兆円、ソニー:8.9兆円

売上を上げ、利益を上げ、それを次の投資(社員への還元も含め)に向けるというのが経営の定石です。そういった観点で、両社の投資に関わる数値を調べてみました。

研究開発費(2021年度)
・三菱電機:1,905億円
・ソニーG:6,100億円

設備投資計画値(2021年度)
・三菱電機:2,100億円
・ソニーG:4,050億円

売上が倍違うという背景はあるのですが、特に研究開発費において歴然たる違いがあります。言い方は厳しいですが、役員が良ければ良い、自分たちが良ければ良いというスタンスが透けて見えます。

■日立製作所との違い

業界2位の会社は、日立製作所です(三菱電機は4位)。

日立製作所は、この20年間、経営の選択と集中を行い、ITと社会インフラを中心としたビジネスモデルに転換。強みを伸ばすためのM&Aを行うとともに、市場において強みを活かせない事業(日立金属・日立建機・日立化成・日立物流)については売却を進めました(19社あった上場子会社を11社に)。そうした結果、海外売上高比率は、20年間で30%⇒60%に増加しました。

一方、三菱電機は、事業構成はほぼ変わっていません。また海外売上高比率は、30%⇒42%と変化は乏しい。ここからも国内のトップシェア=殿様商売からの脱却が図れていないと言えるのではないでしょうか。

■今後の三菱電機

三菱電機は、2021年度から始まった新中期経営計画において、ファクトリーオートメーション(FA)制御、電動化と先進運転支援システム(ADAS)、パワーデバイス、空調冷熱、ビルシステムを重点成長事業と位置付け、この5分野を中心に2兆8000億円を投資を計画。最終の25年度に売上高5兆円、営業利益率10%、海外売上高比率50%を目指すと発表しています。

一方で、2013年ごろから上記と同様に、売上5兆円、海外売上高比率50%を目指していますが、いまだ実現できずにいます。

ここまでくると、本気で経営計画の実現を目指しているのかという点にクエスチョンマークが付かざるを得ません。言い換えれば、経営陣の本気度と言ってもいいかもしれません。その点から今後の三菱電機において、経営リーダーの存在が大きいと考えます。

日立製作所には、川村隆氏という強力なリーダーがいました。
川村氏は、経営トップとしての強烈な危機感から、重電や家電ではなく、情報通信技術の高度化への対応が欠かせないと判断し、これまでのビジネスモデルの大幅な転換を図ってきました。そしてその方針は、その後に経営者が変わってもブレることはありませんでした(川村氏から中西宏明氏に引き継がれ、現社長は東原敏昭氏)。

そういった意味では、三菱電機は、まずは不祥事の絶えない組織風土を一新しなければならず、日立製作所の川村氏以上の強力なリーダーシップが求められると考えます。今後も三菱電機の動きを見届けていきたいと思います。

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