反面教師たち

「社長がタイホされまして」でちらっと言及したように

あたしにはやくざな前夫との間に娘がいる。

十代でちょっと荒れて少年院送りになったけれど
半年で出てきて、その後は以前からつきあってたひとと結婚して
いまでは3人の子どものいいお母さん。
あたしよりよっぽど、いいお母さんだ。

それが一年ほど前、旦那さん関係のトラブルで引っ越しを余儀なくされ
それまであたしんちの近くに住んで週末ごとに孫を引き連れてきていたものだが
いまは飛行機の距離のあたしの実家を頼ってそこに落ち着いている。

3人の子どもがいるあたしの親にとっては娘が最初の孫で、
あたしの諸事情から娘が1歳のときから一年間、預かって育ててもらい
それ以降も小学校高学年まで、毎夏ひとりで飛行機に乗ってあたしの実家で過ごしていた。

あたしは親にずいぶん迷惑もかけたし、お世話になった。
それは自覚しているし申し訳なく、感謝もしているのだけれど
どうしても、子ども時代を不幸にしてその後の自分のありように暗い影を落とした
抑圧的で支配的、感情的な母親とつながりがあると
精神に破綻をきたすので6年前のある出来事をきっかけに、こちらから申し渡して連絡を絶っている。

今回の娘の身寄せも娘が勝手に行ったことと
「自分の娘がお世話になってるのに!」
と母がぎゃーぎゃー言ってるのがきこえてくるが
そこは心を鬼にして聞こえぬふりをしている。

娘一家は2か月ほど実家に住まわせてもらい、
その後ちかくに賃貸を借りてそちらに移ったようだ。
そして親が経営する会社で働かせてもらっている。

しかしそれがなかなかの零細企業家族経営あるあるで
おまけに母の感情的自己中心的なふるまいで
娘は彼女にとっての祖父母、こども、会社との間でいろいろと苦労しているようだ。

「よかれと思って」あれこれを考えて
暴走しては怒り狂っている母の様子を娘からの毎日の愚痴電話できくに
「すこしはマシになったとはいえ、変わってないなあ」。

いわく、

・自分の常識が正義
・視野が狭く、相手には自分とは異なる事情や考えがあることを想像できない。
・自分の「よかれ」を強制
・自分がしたいからしてるだけなのに思い(物質的経済的モノ加えて)を押し付けた挙句「感謝が足りない!」とキレだす。
・思い込みが暴走していきなりこちらが思いもしないところでキレだす。
・すぐ「あなたなんか、もういいです!知りません!!」と縁を切るようなことを言い(子どもの頃から親から見捨てられた思いをして何度傷ついてきたか)、しばらくしたらケロっと忘れたように接してくる。
・棚上げ力が半端ない。自分はもっとすごいことしてるのに、子育てや行動について批判してくる。

あたしと同じ世代の親を持つひとにはあるあるかもしれない。
しかし子どもの頃からこれをやられて、ずいぶん深く傷ついてきたなあとしみじみ思う。
大人になってから自分のこころを立て直すのにずいぶん時間がかかってしまったし、いまだに心に巣食う「母親」に批判されて無駄に落ち込む。
「他意なく」「悪意なく」言いたいことを感情のままに言う母親との関係をたもつとこちらの精神がもたないので自分を守るために、心を鬼にして連絡を絶ったわけだけれど、娘から様子をきくにほんとに変わらないなあ、と感心しきり。

父親から「葬式のときでは遅い、いまこの娘が世話になっているチャンスにお礼を言いにきなさい」的なことを言われたけどごめん、もう生きてる間に会うつもりないわ。

でもまあ、距離を置いているかぎりは
「おかげで反面教師になってもらってるなあ」
と思える。

つねに、母のようにならないようにと気をつけられる。
短絡的にならぬよう、視野を広くもとう。他人の事情や考えに思いをいたそう。
じぶんの思いや良かれを押し付けないようにしよう。
経済的物質的援助ばかりでなく、精神的援助も、状況に応じて。
etc. etc.

世の中に
「このひとのこういうところはいただけないから、こういう態度はやめよう、こういう考え方はやめよう」
と反面教師にさせてもらっている人は何人かいるが、あたしのダントツナンバーワンはおかあたまだ。

感謝。

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