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刑事弁護人の趙先生に聞いてみた(要約版)

刑事弁護を中心に活動されている、Kollectアーツ法律事務所の趙先生に対するインタビューを要約しました。

ぜひ動画もご覧ください。

1.対談形式の要約

北「本日はお忙しいところありがとうございます。Kollectアーツ法律事務所の趙先生をお迎えして、さまざまなお話を伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。」

趙「よろしくお願いします。今日は楽しみにしています。」

北「まず、先生の自己紹介を簡単にお願いできますか?」

趙「はい。私は弁護士登録をしてから14年目、もうすぐ15年目に入るところです。Kollectアーツ法律事務所で刑事事件を中心に、医療過誤などの民事事件も取り扱っています。」

北「刑事事件というと、なかなかハードなイメージがあるんですが、やはりメインは刑事が多いのでしょうか?」

趙「そうですね。私自身、半分くらいは刑事事件に関わってきました。身柄拘束されている被疑者・被告人の事件もあれば、在宅での弁護活動もあり、常時で20~30件前後はコンスタントに受任しています。ただ、医療過誤やほかの民事事件も常に扱ってはいますよ。」

北「それだけの件数の刑事事件を抱えるのは相当大変だと思います。最初から刑事にフォーカスしたキャリアを狙っていたんですか?」

趙「そうですね。私がロースクール在学中に、高野先生や四宮先生といった刑事弁護の第一線で活躍されている方々の授業を受けました。その時に“刑事クリニック”という、実際の事件をロースクールの学生と弁護士が一緒に担当する授業に参加したのが大きかったんです。実際に依頼者と接して、弁護方針を考え、証拠を精査し、尋問の組み立てをして──そういう生の刑事弁護の面白さや理不尽さを肌で感じました。」

北「なるほど。そのときに『ムカつくことが多いけど、面白い』って思ったと?」

趙「はい。例えば保釈が全然認められなかったり、勾留を争ってもなかなか通らなかったり、そういう刑事手続のハードルの高さにイラッとする部分がある。でも“この仕組みを変えたい”とか“依頼人のために頑張りたい”と思うと、燃えるんですよね。」

北「先生のキャリアの出発点として、高野先生の事務所に4年半ほど在籍されたそうですね。どんな事務所だったのでしょう?」

趙「当時、高野先生が秋葉原に新しく事務所を立ち上げたばかりで、私は登録直後から参加しました。弁護士は最初、私と高野先生の2人だけ。さまざまな刑事事件をタッグで共同受任し、毎日のように一緒に動いていたので、実践的な刑事弁護のノウハウを叩き込まれましたね。」

北「高野先生と聞くと、かなり熱く、意見をズバズバ言うイメージがありますが、実際はどんな方ですか?」

趙「意外かもしれませんが、すごくゆるいところもある、愛されるキャラなんですよ。ただ、裁判での主張や証拠の読み込みなどはきっちりされる方で、“地味な作業を怠らないことが大事”というのをよく教わりました。」

北「“地味な作業”とは、具体的にどんなことでしょう?」

趙「たとえば、証拠記録を一通り丁寧に読むのは当たり前ですが、本当に漏れなく把握するとか、依頼人としっかりコミュニケーションを取り、言い分がおかしくないか検証したり、場合によっては本人に厳しく突っ込んで真実を探る。いずれも派手ではないですが、そこに手を抜くと結果的に有罪・無罪や量刑に大きく響きます。無罪判決を勝ち取る弁護士って、神がかったセンスだけではなくて、そういう当たり前を当たり前にやり続ける人ですね。」

北「そういう姿勢を学ばれたうえで、Kollectアーツ法律事務所を立ち上げたわけですよね?」

趙「はい。2023年にスタートしたばかりです。もっと新しい挑戦をしたい、自由に刑事弁護や医療過誤などの民事事件にも取り組みたいと思ったんです。」

北「Kollectアーツは、“Kollect”という冠が付いたグループの一員ですよね。複数の法律事務所や司法書士事務所、行政書士事務所などがあると伺いました。」

趙「“Kollect”は“Collective(集う)”と“Knowledge(知識)”を掛け合わせた造語で、いろんな専門分野の人たちが集まって、それぞれの強みを持ち寄るグループです。コレクトアーツは主に刑事弁護や社会的意義のある案件に取り組む、いわば“職人集団”。一方で企業法務メインの“コレクトパートナーズ”など、複数の事務所が連携している感じですね。ただ、それぞれ運営は独立していて、資本関係もバラバラです。方向性だけゆるやかに共有しているイメージです。」

北「Kollectアーツには現在、何人くらいいらっしゃるんですか?」

趙「弁護士は9名ですね。そのうち1人はオランダの国際刑事裁判所へ行っていて、国内では実質8名。あとは事務スタッフが数名います。でも、いわゆる“大手事務所”のようにトップダウンで組織が動くわけではなく、全員がフラットな関係です。私が代表というわけでもなく、合議制というか。私としては、“若い弁護士がここでさまざまな経験を積み、いずれ巣立っていく場所”にしたいなと考えているんです。」

北「まさに“コレクティブ”ですね。若手が力をつけるために、先生がバックアップするわけですね。ところで、先生は早稲田のロースクールで刑事クリニックの教員も務めていらっしゃるとのこと。学生にどういったことを伝えたいですか?」

趙「まずは“被疑者・被告人って自分と別世界の人間じゃない”ってことですね。むしろ、誰しも間違って捕まる可能性があるし、何かの拍子に犯罪者とされてしまうことだってあります。それに気づくと刑事弁護を“他人事”で見なくなる。もう一点は、弁護士は中立ではなく、依頼人の利益を守るために偏っていいんだということ。そこに初めて気づいた時、刑事弁護の面白さや意義がわかる人が多いですね。」

北「ここ15年ほど、刑事弁護に力を入れる若手弁護士が確実に増えている気がします。先生ご自身も、“もし新人に戻れたら”やりたいことってありますか?」

趙「はい。私が後悔しているのは“留学に行かなかったこと”です。刑事弁護は日本の手続中心ですが、海外の視点を学ぶと日本の問題点を外から見られます。2年目や3年目くらいのうちに借金してでもアメリカやヨーロッパへ留学しておけばよかったと思いますね。」

北「悩んでいる若手がいたら“行け”と?」

趙「“迷わず行け”と伝えたいですね。日本で2年間ぐらい頑張るのも大事ですが、海外へ行って得られる視点は替えがたい。その後で刑事弁護に戻るほうが、より深みを持てると思います。」

北「非常に説得力があります。最後に、刑事弁護を含む弁護士の仕事は理不尽なことが多いと聞きますが、心が折れそうになることはありませんか?」

趙「もちろん、“なんでこんなに通らないんだ”とか、“検察や裁判所に腹が立つ”ってことは日常茶飯事です。だけど、高野先生にも“絶望してる暇はない”と言われたことがあります(笑)。“やるべきことをやる”。それでダメでもまた立ち上がって声を上げ続ける。そんな中でも、日々面白さややりがいを感じる瞬間がちゃんとあるんです。」

北「本日は本当に充実したお話をありがとうございました。Kollectアーツ法律事務所としても、刑事だけでなく医療過誤を含め多方面でご活躍されているとのこと、今後のご活動も注目しています。」

趙「こちらこそお呼びいただきありがとうございました。何かのご縁があれば、いつでもお気軽に声をかけてください。」

北「本日はKollectアーツ法律事務所の趙先生にお越しいただきました。ありがとうございました!」

2.より時間がない人のために
自己紹介・経歴

  • 趙先生は弁護士登録して14年目(もうすぐ15年)。

  • 主に刑事事件を中心に扱いながら、医療過誤などの民事事件も継続して取り扱っている。

  • 刑事事件は年間20~30件ほど担当することが多い。

  • 刑事弁護を志すきっかけ

    • ロースクール時代に高野先生・四宮先生の授業を受け、「刑事クリニック」に参加した。

    • 実際の事件を学生と弁護士が共同で担当する授業で、初めて刑事弁護の面白さを体験。

    • 特に、保釈や勾留の壁にぶつかり、理不尽さを感じながらも「もっとやりたい」と思った。

  • 高野先生の事務所時代

    • 秋葉原で立ち上がった高野先生の事務所に、弁護士1年目の終わりから参画。

    • 当時、弁護士は高野先生と趙先生の2人のみ。さまざまな事件を2人で共同受任していた。

    • 「一見怖そうなイメージがあるが、実際はゆるくて愛されるキャラクター」という高野先生の人柄を語る。

    • 刑事弁護のノウハウとしては「証拠記録の徹底的な読み込み」や「依頼人との地道な対話」が重要と学ぶ。

  • 刑事弁護のポイント

    • 当たり前のこと(証拠確認・依頼人との面談・法的観点の洗い直し)を地道にこなすことが大切。

    • “神がかった技術”よりも、コツコツ積み上げる姿勢が無罪判決や有利な結果につながる。

  • 裁判員裁判への取り組み

    • 刑事弁護の基本姿勢は、裁判員裁判でも裁判官裁判でも同じ。

    • 裁判員裁判特有の連日開廷はむしろ集中しやすく、効率的と感じている。

  • Kollectアーツ法律事務所の概要

    • 「Kollect」は“Collective(集う)”と“Knowledge(知識)”を掛け合わせた造語。

    • Kollectアーツは刑事弁護や社会的に意義ある案件などに注力する“職人集団”を目指している。

    • 若手が経験を積み、育っていける場づくりを重視。組織としてはトップダウンではなく合議制に近い。

    • 企業法務メインの「Kollectパートナーズ」など、ほかのKollectグループの事務所も存在。

    • 弁護士9名(うち1名はオランダの国際刑事裁判所へ)。実質8名+事務スタッフで運営。

  • 刑事弁護の教育・啓発

    • 早稲田ロースクールの「刑事クリニック」で教員を務め、学生と実際の案件に携わる。

    • 被疑者・被告人は「別世界の人ではない」という意識を学生に伝え、興味を持たせる。

    • 弁護士は「超然中立」ではなく、依頼人のために偏る存在であることを強調。

  • 若手へのメッセージ・後悔とアドバイス

    • 自身の後悔として「留学」を挙げる。

    • 国内刑事手続の知識にとどまらず、海外の視点を得るためにも若いうちに留学を推奨。

    • 「今からでも行けば?」と聞かれるが、家庭や事務所を持ってしまうと身動きが取りづらい。

    • もし新人に戻れるなら迷わず留学する、と語る。

  • モチベーションとやりがい

    • 保釈や証拠採用が通らず理不尽さを感じることは多いが、「絶望している暇はない」と奮起。

    • 日々辛い部分はあっても、飽きずに面白さを感じ続けられるのが刑事弁護の魅力。

  • まとめ

    • 刑事事件から医療過誤まで幅広く扱いながら、地道な努力や外部の視点を取り込む姿勢を大切にしている。

    • Kollectアーツ法律事務所は若手弁護士の成長と、多様な専門家が連携する場づくりを目指している。

    • 今後も刑事弁護を中心に社会的意義ある問題に取り組みつつ、後進の育成にも注力していく。


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