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少数株主としての戦い(再戦、株主代表訴訟)⑬

1.前回のサマリ

みなさま、こんにちは。前回、「少数株主としての戦い(相手の裏切り)⑪」で、戦いの場を裁判所から離れたら、手のひら返して、一切解決しようとせず、しばらく裁判外でやり取りがありました。しかし、相手は一切歩み寄りをせず、また、時間だけが過ぎていきました。また、弁護士からもう株主代訴訟を行い、相手の責任を追及するしかないと提案を受け、早速検討することとしました。

2. 株主代表訴訟とその意義

専門的な説明が多くなされているので、簡単に株主代表訴訟の概要とそに意義について説明します。会社法847条に基づき、会社役員が違法行為や判断ミスにより会社が損害を受け、会社が役員の責任追及をしない場合に、株主が会社に代わって訴えることができるものとなります。

次に、株主が株主代表訴訟を提訴するメリットについてですが、株主の本気度を相手へ伝え、役員個人へ損害賠償請求することで、役員個人の財産を差し押さえするぞというプレッシャーを与えることで、交渉事を有利に進められる可能性が高まります。相手が徹底的に抵抗するなら、裁判で判決をいただくことで、その役員の財産を差し押さえすることができ、戦略の選択肢が増すのです。ただ、頭に入れておかなければならない点は、株主代表訴訟ではあくまでも会社の財産を回復させるだけで、株主へ直接損害(株価毀損額)が回復されるものではないということです。ですので、仮に損害賠償が裁判所に認められ、役員が会社に損害賠償をしても、役員が引き続き50%超の議決権をもっていれば、会社に居座り続ける可能性もあるので、結果として無意味になる可能性も否定できません。そのようなケースはその案件によりどうすべきか、何ができるかはその弁護士が判断すると思われますが、もし仮に自分なら、できるのかは何とも言えませんが(担当弁護士に相談ください)、役員が保有している株を自己株式として差し押さえします。そうすることで、他株主の議決権割合が増すことで、50%超の議決権割合になる可能性もあるのではないでしょうか。(あくまでも私見です)

株主代表訴訟を通じて、役員の責任追及を行うのですが、究極的にその意義・目的は、会社財産を回復することですが、その過程(差し押さえ)を通じて、役員の財産差し押さえによって議決権をはく奪し、経営権を回復すること、もしくは、相手の判断ミス、不法行為から株を有利な条件で買い取らせ、個人財産の回復を図ることだと思われます。ちなみに、私たちが株主代表訴訟を起こした目的は、まさに後者であり、和解で相手(もしくは自己株式として)に株を買い取らせることでした。やはり、裁判の判決を最後まで待ち、認められる損害賠償が小さくなるリスク、経営権奪取後の会社清算処理に労力・時間がかかるという理由でそう判断しました。

3.裁判費用(株主代表訴訟)

以前に裁判に係る費用について概要を述べました。それは、主に
①裁判所(国)へ支払う訴訟費用(収入印紙での支払い)
②弁護士に支払う報酬
に分けられます。①の訴訟費用は、損害額によって変わってきます。今回私が訴えた損害額は1億円近くで、通常この金額であれば、30万円近い金額の①費用を支払うのですが、なんと株主代表訴訟の訴訟費用は損害額がいくらであろうと、1.3万円で済むのです。つまり、株主からすると100億円の損害賠償を請求してもその費用は、1.3万円と金銭的ハードルは相当低いといえます。それゆえ、株主代表訴訟を濫用する株主もいることから、それに対しては別途担保提供などの措置が取られることがあるようです。

また、訴えた側の株主(原告)の②弁護士報酬について、原告が勝訴した場合、その弁護士報酬のうち、相当と認められる額をを会社に請求することができます。つまり、裁判所が認めた額(割合)弁護士報酬を株主が会社へ請求できるのです。(会社法852条)本来会社が訴えるべきことを、株主が変わって訴えて、勝っているので当然といえば当然だと思いますが。

このような紛争状態になった場合、会社は弁護士へ事件を任せてるケースがほとんどではないでしょうか。そのため、常時、一時的に会社の顧問弁護士、そして代理人となるわけですが、株主代表訴訟の場合、会社に変わり、役員個人へ訴訟をしているため、利益相反行為となるため、会社の顧問弁護士が役員個人の代理人にはなることができないのです。(弁護士職務基本規程28条2号)
事実、私たちの訴訟でも案の定、会社の弁護士が役員(代表取締役X氏)の代理人となってましたが、私が事前にリサーチしており、その点を私たちの弁護士へ伝え裁判所に申し立てたところ、その弁護士は辞任して、別の弁護士が立つことになりました。(結果として、補助参加として、会社の顧問弁護士が参加してきましたが)当然、弁護士費用は役員個人が負担すべきところで、会社からの支出することは認められないのです。つまり、私たちのケースだと、会社は補助代理人へ弁護士報酬を支払い、役員は役員の代理人へ弁護士報酬を支払うこととなり、金銭的なダメージが大きいのです。株主代表訴訟の訴訟価費用とは異なり、弁護士報酬は訴訟額によって変動することが多いため、1億円近い損害請求であればそれなりの金額になることは簡単に想像できるでしょう。これが、株主代表訴訟を行うことで相手にダメー時を与えることができる一つのメリットとも言えます。まともな判断ができれば泥沼化することのデメリットを考え、早期解決に動こうとするのです。

4.非公開会社・少数株主への救済(会社法429条)

株主代表訴訟は、会社財産を回復させるため、株主としては間接的にしか、損害が回復されません。その為、会社法429条により小規模非公開会社の株価毀損に対しての損害賠償を認めているので、株主代表訴訟と併せて訴訟を行うことがあるようです。私たちは、時間と金銭的な負担から見送りました。

5.株主代表訴訟の傾向
前述した通り、訴訟の多くは違法行為による損害判断ミスによる損害によるものですが、後者は「経営判断の原則」により、忠実に会社の為を思い判断した結果・・・と主張されれば、それを覆すことは難しく、経営の裁量が縮小するという意味で、なかなか、棄却されることが多いようです。(絶対ではないですが)一方、違法行為によるものであれば、証拠やそのストーリーが証明されれば、どんな言い訳をしても言い訳にならないので、損害が認められる可能性が高まるようです。事実、私たちは、相手の株主総会議事録の偽造、総会の捏造、利益相反行為を中心に主張を展開しました。最も、既に検査役選任の過程で得られた証拠を前提に主張を展開しただけなので、そこまで難しいものではございません。


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